閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

「こわいものなしの六人」

2022-06-16 21:29:53 | お知らせ(新刊)

あかね書房<グリムの本だな>シリーズ。
『ねこのおひめさま』につづいて、2冊目『こわいものなしの六人』ができました。
今回の絵は『ポロポロゆうびん』『スプーン王子のぼうけん』でも描いていただいた、こばようこさんです。
6月20日ごろの発売になると思います。

グリムの中から、わざとあまりメジャーでない(けど面白い)作品を選ぶ、このシリーズ。
『こわいものなしの六人』と聞くと、「そんなのあったっけ?」と思われるでしょうが、読んでみると「あー、どこかで読んだ気がするわ」という方も多いかもしれません。



簡単にいえば…銅貨3枚しかもらえずクビになった兵隊が、仲間をあつめて、けちな王様をへこませる話!
その仲間というのが、力持ちの大男、目のいい猟師、鼻息のすごい男、足の速い男、冷凍男、という顔ぶれ。
いろんな能力者をとりそろえたところが、映画でいえば「X-MEN」みたいでもあるし、「オーシャンズ11」みたいでもありますね。
と言っていたら、編集のKTさんは、漫画「11人いる!」と「サイボーグ009」を思い浮かべていたそうです。
グリムの中には、もうひとつ『六人の家来』という類話があり、そっちは主役が王子様で、混同しやすいのですが、わたしは "あるじと家来" という上下関係のないこちらのほうが断然好み。




フルメンバーそろった場面。
出てくるヒトが多いので、こばさん、大変だったと思います。しかも、ひとりは大男。この人が、ときには足だけ、ときには顔だけと、控えめでありつつ、ちゃんとメンバーとしての存在感を出しているところが好き。大男、可愛い。

兵隊(ほんとは「もと兵隊」ね)は、原作に「頭がよくて勇敢な男」と書かれているだけですが、この人は「策士」であり、リーダーシップという以上に、人がついてくるようなカリスマ性を持っている。それがつまり彼の「能力」なのですが、文章だけでそこまで読みとるのは、子どもにはちょっと難しいかもしれません。
こばさんが、思いきりかっこよく描いてくださったおかげで、雰囲気なんとなく伝わるんじゃないかと思います。

早足男は、足が勝手に走りたがって困るので、ふだんは片足をはずしている…というのが原作の設定。ここはちょっと変えさせてもらって、足をはずすかわりに鉄のおもりをつけることにしました。
ドイツの国営放送が制作したグリムシリーズのTVドラマがあるのですが、それをみると、早足は錨みたいなものを背負っていて、それがおもりになっているらしい。なるほど、その手もあるか~、と思ったので。
(ちなみに、このドラマでは、メンバーのうち2人が女性だったり、いろいろと現代ふうなアレンジがされており、音声はもちろんドイツ語なのでまったくわかりませんが、面白かったです)

 

裏表紙のお姫さまが、とってもキュート!
かけっこが得意なおてんば姫なので、髪もみつあみ。
どんな格好で走るのか、気になりません?

***

さて。今回のこれもまた ”タイトルで損をしている話” です。
手元の資料をみても、「六人男、世界を股にかける」「六人組世界歩き」「六人組、世界をのし歩く」などなど…。
どうもなんだか覚えにくい。「六人」はいいとして、「世界」がいまいちピンとこない。
原題は  "Sechse kommen durch die ganze Welt" で、最後の Welt が World つまり「世界」なんですが、六人で世界旅行をする、というような話では全然ないし。
そもそも「世界」の概念が、中世と現代では大きく違うので、ここは「世間」とか「世の中」の意味にとったほうが理解しやすいのではないかなあ。「世界をのし歩く」を、「うまいこと世渡りをする」「したたかに生きていく」と言い換えれば、納得いくじゃないですか。
(なぁんて、偉そうに言っておりますが、わたくしドイツ語は名詞10個ほどしか知らないので、まったくの見当違いかもしれず…笑)

個人的には「天下堂々」「天下無敵」みたいな言葉がぴったりくるところですが、この本は低学年向きなので、無敵なんて漢字は使えない。考えに考えて(本文を書くより時間かかった!)ようやくこのタイトルに落ち着いたのでした。
冬に出る予定の3巻めも、じつはタイトルで苦労したんだな…。
その話は、また次回に。

 

あら? 20日発売と書いてあるのに、あまぞんさんではもう売ってるんだ?
そして「ソフトカバー」となっているのは間違い。ハードカバーです。

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