閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

ルビンシュタインはいかにしてピアーノを弾いたか

2010-03-31 08:45:48 | 日々
長ーいタイトルですみません。
「ピアーノ」って、この本にそう書いてあるので。

 「ジェド、ニューヨークにいる時にルビンシュタインの
 演奏を聴いたっていうのを耳にしたんだけど」
 「ああ、その通りさ」
 「それについて話してくれないかな」

というわけで、ジェド・ブラウニングが語るルービンの演奏っぷり。
といっても真面目な話ではなく、アーリーアメリカンのフォークロア、
語り伝えられた民話伝説の類なのですが、これがめっぽう面白い。

席に着いたピアニスト、最初はあんまり気乗りしない様子で
ポロンポロンとやっているだけ。しかし…

 「そのうちルービンの手があっちこっち次々に
 鍵盤を追いかけはじめたんだ。屋根裏でたくさんの鼠が
 そりゃあすばしっこく駆け回っているようだった。
 もっともそれはところどころ甘い調べでね、
 キャンディの入った籠の周りを砂糖好きの栗鼠が
 駆け回っている姿が浮かんできたよ」

これはほんの前奏で、本気になったピアニストは、
次第に佳境に入り、最後には物凄いことになっていく。
その「音」をすべてこのように「言葉」で表現しているわけで、
ここで丸ごとご紹介するわけにはいかないのが残念ですが、
古典落語に匹敵する話芸がアメリカにもあったとは知らなかった。
うまい「語り」で、ぜひ一度聞いてみたいものです。
(ところで曲目は何だったんでしょうね…)

『ジャージーの悪魔』(ベン・C・クロウ編/西崎憲ほか訳/ちくま文庫)

コメント
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