沢をはさんで東側に、山というほどでもないが、
ちょっとした起伏があり、朝日をさえぎっている。
お隣に5階建てのビルが建っているくらいの感じ。
急な斜面をがさごそ登ると、とがった尾根の向こうは
同じような急傾斜で谷に落ち込み、また次の尾根が見える。
夕方、雨戸を閉めるにはちょっと早いかという時刻。
その尾根のほうから「ぴいっ!」と鋭く笛を鳴らすような音。
ストーブのそばで眠りこけていた猫3匹が、
ぱっと跳びあがって三方に散ったところをみると、
人工音ではなく、動物の声らしい。
鳥か獣か、よく響くかなり大きな声だ。
ベランダに出て見上げたが、姿は見えず、動く気配もない。
「ぴいっ!」とまた鳴く。
「きょっ!」とも聞こえる。
ときどきその位置が移動する。
かなり素早く移動できる生物。
いや、複数いて鳴き交わしているのかもしれない。
外に出て双眼鏡をのぞいたMが大きく手招きしている。
「いるよ、いるよ!」
尾根のシイの木のそばに、切り絵のように。
首と、頭と、耳ふたつ。
鹿だ。
大きい。
角がないから、おとなの牝鹿だろう。
顔だけこちらに向けて、じっと動かず立っている。
何か探しているのか、警戒しているのか、考えているのか。
そのうちゆっくり歩き出し、やぶの中に見えなくなった。
野生の鹿、はじめてはっきり見た。
そのあと、何時間もたってから、あ!と気づく。
かずこさんちの畑の白菜と水菜とかぶをきれいに食べて、
春菊と足跡だけ残していった鹿が、あれかもしれない。
とっつかまえて春菊と鍋にするぞっ!
…と言ってたのにねえ。
見ただけ、でした。
ちょっとした起伏があり、朝日をさえぎっている。
お隣に5階建てのビルが建っているくらいの感じ。
急な斜面をがさごそ登ると、とがった尾根の向こうは
同じような急傾斜で谷に落ち込み、また次の尾根が見える。
夕方、雨戸を閉めるにはちょっと早いかという時刻。
その尾根のほうから「ぴいっ!」と鋭く笛を鳴らすような音。
ストーブのそばで眠りこけていた猫3匹が、
ぱっと跳びあがって三方に散ったところをみると、
人工音ではなく、動物の声らしい。
鳥か獣か、よく響くかなり大きな声だ。
ベランダに出て見上げたが、姿は見えず、動く気配もない。
「ぴいっ!」とまた鳴く。
「きょっ!」とも聞こえる。
ときどきその位置が移動する。
かなり素早く移動できる生物。
いや、複数いて鳴き交わしているのかもしれない。
外に出て双眼鏡をのぞいたMが大きく手招きしている。
「いるよ、いるよ!」
尾根のシイの木のそばに、切り絵のように。
首と、頭と、耳ふたつ。
鹿だ。
大きい。
角がないから、おとなの牝鹿だろう。
顔だけこちらに向けて、じっと動かず立っている。
何か探しているのか、警戒しているのか、考えているのか。
そのうちゆっくり歩き出し、やぶの中に見えなくなった。
野生の鹿、はじめてはっきり見た。
そのあと、何時間もたってから、あ!と気づく。
かずこさんちの畑の白菜と水菜とかぶをきれいに食べて、
春菊と足跡だけ残していった鹿が、あれかもしれない。
とっつかまえて春菊と鍋にするぞっ!
…と言ってたのにねえ。
見ただけ、でした。