2階の机に西日があたるので、
読みかけのペーパーバックを持って
階下のテープルへ移動する。
話はいよいよ大詰めをむかえ、
まだこれからドンデン返しがありそうで目が離せない。
しばらくして、知らない単語が出てきた。
階段をのぼって、辞書をひき、ああそうか、と思い、
また降りてきて続きを読む。
1938年に発表されたミステリーである。
作家が女性で、主人公も若い女性なので、
全体に平易な文章で、難しい言葉はあまり出てこない。
翻訳をするなら別だが、自分の楽しみで読むときは、
わたしはめったに辞書をひかない。
動詞は、前後関係で適当に推測する。
形容詞は、3つあれば1つくらいはなんとなくわかるもので、
あとはそこから類推して勝手に納得する。
なにしろミステリーであるから、いちいち中断すると興醒めだ。
こうして、1行に知らない単語がいくつ並んでいようと、
かまわずどんどん飛び越していく。
多少違ってたっていいや。
あとで試験に出るわけではないし。
辞書をひくのは、どうしても気になる単語だけで、
それはたいてい名詞だ。
文中に「○○を」と書かれていて、
その○○が何だかまったく見当がつかないと、
飛び越せず、先に進めない、ということがたまにある。
30分くらいして、ふたたび階段をのぼる。
辞書をひく。ああそうか。辞書を閉じる。
階段を降りたところで、ふと思った。
辞書を持ってきたほうがよかったかな?
子どものころから、本を読み始めると
「根が生えたように動かない」と言われてきた。
そうでなくても仕事柄、慢性的に運動不足なのだから、
30分に一度くらい階段を上がり降りしたほうが
健康にも良いに決まっている。
必要があって使うものは、辞書に限らず、
わざと離れた場所に置いておくのがいい。
高い棚の上とか、うんと低いところにも、
ほどよく配置しておけばついでにストレッチもできる。
電話だってコードレスの子機なんか手近に置かず、
ベルが鳴ったら駆けつけることにする。
ド・ウィンター家のお屋敷じゃないんだから、
どこにいても走ればたいてい間に合う。
ついでにゲーム的なスリルも味わえる。
と思ったのですが。
いや、思っただけ。
ちなみに、辞書でひいた単語は
winkleと、lighterでした。
(winkleが「バターつきパンに合う」と書いてあったので、
よけいにわからなかったのです。
そういえば、この種のものは「メアリー・ポピンズ」でも
午後のお茶に出てきたっけ…木苺ジャムケーキと一緒に)