閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

川の岸まで

2007-06-10 09:29:35 | 日々

こだまじいちゃんのお葬式をした晩に、
真鈴の姿が見えなくなりました。

その晩、オオミズアオが来たのです。
名前のとおり緑がかった水色の女王様のような大きい蛾。
窓ガラスのむこうではたはたとゆるく羽ばたいていました。
それをじいっと真鈴は見ていた。
まんまるなおめめで。

「まりん、それはとってきちゃだめだよ」
言っているうちに、そわそわと外に出て行って…
そのまま帰ってこない。

猫は自由に出入りできる家なので、
丸一日くらい帰らないことはときどきあります。
その間どこで何をしているのかはまったく不明。
たいていはけろりとして帰ってくるのです。
こういう「謎のおでかけ」は季節やオスメスを問わず
3~4歳くらいまでの元気な猫に多いようで、
すももや茶々もこれまで何度かやっています。

都会と違って事故や事件の危険は少ないとはいえ、
二日目の午後ともなるとさすがに心配になってくる。
ほいっと連れていかれるような子猫でもないけれど…
黒猫って迷信的に嫌われることもあるし…
真鈴はまた格別に好奇心が強いからなあ…

オオミズアオを見てからちょうど48時間後。
ちりちりと聞き慣れた鈴の音が
まっすぐ家に入ってきました。
「にゃー」とひと声鳴いて、廊下のゴハン皿に駆け寄り、
食べながら盛大にのどを鳴らして、すりよって甘えて、
また急いで食べて、水をたくさん飲んで、甘えて。
あとはわたしの布団の上で朝までぐっすり。

どこ行ってたの、真鈴。
大好きだったこだまじいちゃんを見送りに行ってたのかな。
きっと、そうだね。


そんなに遠いところではありませんでした。
ふたりでのんびり歩いていきました。
川の岸で、船が着くのを待ちながら、
じいちゃんがお話をしてくれました。
真鈴はまんまるおめめをぱっちりあけて、
「ねー、それで? それから?」って何度もききました。
星の流れる静かな静かな夜のこと。

コメント
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