レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ハンスの林檎、林檎の樹

2006-07-28 15:12:14 | 
『ハンスの林檎』潮出版社 村上政彦

『バルトの楽園』の関連作品・・・と言ってしまうとナンだけど、第一次大戦のドイツ捕虜との交流を扱っているということは事実。場所も同じ徳島の板東収容所だし松江所長も出てくるし。
 こちらは、捕虜側にもっと戦闘性があるというか、戦闘には負けたけど文化の力で新たな戦いを!という意気込みがある。ドイツ側にサッカーの指導を求めたり、一方大工のマイスターに地元の校舎つくりを手伝ってもらうにあたっては日本側の棟梁が模型つくりの勝負に勝ったのでボスになったり。
 音楽をやっているドイツ青年が地元のお嬢さんと恋におちて、日本にとどまろうとまで決意するけど、猛威をふるったスペイン風邪で死亡。その親友は感慨をこめて記念に林檎の木を植えていく。「たとえ明日世界が滅びるとしても、私は今日一本の林檎の木を植える」というルターの言葉が出てきた。

 イギリス文学で『林檎の木』という小説がある。ゴールズワージ。都会の青年が田舎で素朴な娘と恋におちて結婚の約束をするが、結局捨ててしまい、彼女がその後(たぶん)自殺したことを25年後(?)に知る。筋だけだとミもフタもない。こういう話を映画化でもするならばよくよく演出などが優れていなければならないだろう。私の中学時代には「中一時代」の読書ガイドに載っていた。大学1年のときの英語の時間のテキストにも使われていた。母が女子大のときにも習ったそうで、そのときのテストに出たのと同じ箇所が私の受けた期末テストにも出題されたことには驚いた。元文学青年の好みは不変なのか?

 それとは無関係に同じ題のドイツ映画があった。社会主義時代の東独が舞台。たいして面白い作品ではなかったが。これのキャッチコピーのように上記セリフが使われていて、えーとこれは確かルターの言葉だったはず?と思ったけど作中で説明はなかった。ドイツ人にとっての常識なのだろうか。
コメント
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