レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ヴォルムス

2006-07-10 13:15:18 | ドイツ
 Wormsーードイツ、ライン河畔にある、ルターとワインとニーベルンゲンの町。
私は98年の9月に2泊した。いちばんの見所である大聖堂(ドーム)は駅からも近い。その大聖堂の近くにユースホステルがあるというすばらしい立地(たいていユースは駅からバスで行くような場所) なのでここに泊まりたい気持ちもあったのだが、都合でやめて、やはりドーム近くの「クリームヒルデKriemhilde」という小さなホテルにした。場所が良くて値段も手ごろでスグレモノ。
 近くに博物館が二つあり、どのどちらかで運良く「ニーベルンゲン」の企画展をやっていた。
 ドイツ中世文学の代表作のひとつ『ニーベルンゲンの歌』では、このドームにどちらが先にはいるかで、王の妃ブリュンヒルトと、王妹でジークフリートの妻クリームヒルトが争い、そのときにクリームヒルトが口をすべらせてあることを暴露してしまったことから惨劇につながる。(私はこの場面で『源氏物語』の葵上と六条御息所の車争いを連想する。凄まじさで負けるけど) そのドームにもはいったはずだけどその印象はあまりない。いちばん注目したのは河畔にあるハーゲンの像。てくてくと歩いてライン河畔に出ると、「ハーゲンブロイ」というビールの醸造所(?)があり、その近くに銅像が立っている。ジークフリートの死後、その遺産である宝をハーゲンが取り上げ(敵討ちの軍資金にされることをふせぐため)ラインに投じるのだが、その様を表している。
 中世文学の授業の際、この物語には絶対の悪役がいない、強いて言えばハーゲンだが彼の立場からすればジークフリートはヴォルムスの宮廷の秩序を乱したヤツであり、それを討つことにはそれなりの正当性がある、という話だった。実際その後の展開でも、再婚したクリームヒルトの招きが復讐の企みであることを察しながらも敢えて赴く姿は悲壮感漂い、読者としても嫌う気になれない。
 ラインに立つその銅像も、厳しい顔つきは決して卑しくはない。町の中心部に「ジークフリートの噴水」があるが、どうも絵葉書を見ると、ハーゲン像のほうが登場率が高い。もしかしてハーゲンのほうが人気者なのだろうか。

 ドイツ(だけではないが)では道にいちいち名前がついている。多くは人名だ。ゲーテやベートーヴェンくらい有名人になると、関係なくてもたぶんどこの町でも使われているだろう。しかし、ほんとうにその町ゆかりの人物名が通りや広場についていることも無論あるので、そういうのは地図を見ても楽しい。ヴォルムスには、ジークフリート通り、ブルンヒルデ橋、クリームヒルデ通り、ルター環道、ハーゲン通り、ニーベルンゲン環道などある。ホテルにも、「ニーベルンゲン」に加えて「アスガルド」がある。北欧神話好きとしては泊まってみたくなる。
コメント
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