レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

7月20日とバンベルク

2006-07-20 06:23:58 | ドイツ
 ヒトラーに対する暗殺計画は、発覚しただけでも42件あったという。(そんなんで助かっているのだからやはりすごい運だよ) 最大のものが、1944年7月20日に実行された、陸軍の高級将校たちを主導とした事件。「ヴァルキューレ」作戦、あとで「7月20日事件」と呼ばれるものだ。(『オペレーション・ワルキューレ』という映画があるらしい)
 これの中心人物のクラウス・シェンク・フォン・シュタウフェンベルク大佐37歳は、「バンベルクの騎士」という仇名があった。彼の故郷のバンベルクの大聖堂には、騎士の理想像と讃えられる、そういう名で呼ばれる凛々しい彫像があり、眉目秀麗な大佐と重ねての名だ。(マニアの間では、この役はロバート・レッドフォードに似合いそうだと言われているときいた。)
 ドイツには、「フォン・シュタウフェンベルク伯爵」という名前の特急があった。確かボンにもこの名の通りがある。抵抗運動の歴史を語るうえで批判もある彼らだが、やはり賞賛の対象になっているのだろう。(そういえば、この暗殺計画のメンバーであるライプチヒ市長の名前も当地で使われている) バンベルクの旧市庁舎ーー川の橋の上にあるこの建物はよくポスターなどに出てくるーーは観光案内所になっている。ここのドア近くに、彼の記念プレートがある。

 バンベルクといえばほかにはホフマンハウスもある。ドイツロマン派のE.T.A.ホフマン、「怪奇小説の祖」。住んでいた家が公開されており、近くに銅像がある。楽譜らしい本とネコを抱えている。代表作の一つ『牡猫ムルの人生観』を意識してのことか。
 ホテル・メッサーシュミットとか、石畳の通りとか「小ヴェニス地区」とか、これらも名物。

 ドイツ文学史上、シュテファン・ゲオルゲという難解で割にお耽美な詩人がいる。選ばれた男同士のエロスがどうとか言って、見目よく賢い坊ちゃんたちを集めていたという、折口信夫か三島由紀夫を連想させるおっさん。フォン・シュタウフェンベルクもこのサークルに属していた。


コメント
もう60年以上経つのか… (D) 2006-07-20 22:55:41
…と言っても私がその頃から存命だったわけではありませんがね;
「ワルキューレ」、フォン付きのクラウス「大佐」に「伯爵」というキーワードが連続すると何かのマンガを思い出してしまいますが、それはさておき。
丁度今日のこの日、そういう事件があったと思うと感慨深い物があります。
数え切れない暗殺計画…高級将校達の力を持ってしても為し得なかった事実に、当時如何にヒトラーが力を持っていたか、用心深かったかという事よりも、世の中がそれだけ狂っていたんだと思い知らされます。
演説の巧みなおっさんに流されて世相が段々とおかしな方向に流れ…
それが今に至っても負の遺産になっている事実が流されない事の大切さと大変さを今の時代を生きる私達に突き付けている様です。
しかしクラウス大佐ですか…先のコメントに出てきた「エロイカより愛を込めて」のクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ万年少佐とは、随分な違いですなウェーハハハ。
その美形らしい(コメントのラストによると)クラウス大佐と同郷に私の好きな作家の一人であるホフマンがいたとは嬉しい偶然です。
ちなみに今は亡きイエモンに1944年から1994年にタイムスリップした軍人がテーマのアルバムがあったりして。
何だか1944の文字を見ると先にこのアルバムの方を思い出す不埒物の戯言でありました。失礼。


いまは亡きというと (レーヌス) 2006-07-21 20:46:17

なんだか故人のようですが、活動してない団体さんですから事実ですね。44年から94年にとんでしまったらそれもまた大変そう。逆のような物語も描かれていますね。『ジパング』少ししか読んでませんけど。
 ETAホフマンはカントと同じケーニヒスベルクの出身です、バンベルクには5年しかいなかったけど、その間に教え子(音楽やってました)の少女に熱烈な恋をしたことがけっこう重要視されます。

 「男爵」と「大佐」が対決する小説『エニグマ奇襲指令』もありましたな。これもまたいずれ触れましょう。


大佐の名前に誘われました~。 (F) 2006-07-25
23:02:18
お邪魔します。
7/20事件にはかなり思い入れがあって、その昔、卒論もそれ絡みで、ボン基本法と抵抗権で書きました。
シュタウフェンベルク大佐の母方にナポレオン戦争時代の名将グナイゼナウがいることも有名ですね。
大佐のような傷痍軍人は特殊かと思っていたら、当時のドイツは総力戦。腕や足の一本ないくらいでは退役させてくれなかったそうです。
大佐のおかげでシュテファン・ゲオルゲにもハマりました...。折口信夫ほど犯罪者的ではなかったようですが、かなりお耽美な詩人でしたね。
『エニグマ奇襲指令』、今では面白かったな~という感想のみの忘却の彼方す。
また、お邪魔させて下さい。


ゲオルゲというと (レーヌス) 2006-07-26 12:27:10

夭折した恋人(美少年)をほとんど神格化したことも有名で、このところハドリアヌスも連想しますが、星座にまでしたということでハドの勝ち。私に愛されたことで君の名は歴史に残る、と弟子を口説いたというのは折口信夫でしたか。
 映画『空中大脱走』、小説『ヴァルハラ最終指令』では、傷痍軍人が捕虜収容所の所長を務めていました、そういう例はよくあったのだろうかとふと思います。
 またどうぞ~。


『ヴァルハラ最終指令』、大好きです~。 (F)
2006-08-01 21:54:36

『ヴァルハラ最終指令』、大好きですね~。
「パンツァーリート」は国防軍ヴァージョン、SSヴァージョン共に歌えます。
大佐は憧れですが、莫迦でおまぬけなWalter・Schellenbergに親近感を覚えす。
もう来るなって仰らないで~。


(レーヌス) 2006-08-02 15:41:26
 シェレンベルクといえば、ヒギンズ作品でも活躍してますね。実はファンが少なからずいる人のようです。
コメント
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