弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

日経「ニッポンの統治 危機にすくむ④」

2021-12-05 09:44:30 | 歴史・社会
前回、「ニッポンの統治 危機にすくむ①」について記事にしました。今回は「危機にすくむ④」を取り上げます。

日本の行政、デジタル化拒む本能 使い勝手より組織優先
ニッポンの統治 危機にすくむ④ 2021年11月25日 日経新聞
『9月に発足したデジタル庁の動きが鈍い。政府内のやりとりからは電子化の推進役とはほど遠い姿勢が浮かび上がる。
「とにかく早くやってほしい」。首相官邸が行政手続きの電子化を求めても「個人情報を扱うのでいいかげんなシステムはつくれない。時間がかかる」と釈明する。政府高官が何度となく見てきた光景だ。』
『デジタル庁の民間人材も突破口になっていない。企業出身の職員が電子化を提案すると、個人情報保護法や自治体実務の慣習を盾に「複雑な業務だから無理」と返される。「技術に詳しくても行政知識で負けるので論破しにくい」とこぼす。』
『壁をつくることで自らの責任が問われるのを避けようとする日本の行政機構。』
《新型コロナウイルスワクチンの接種記録システム(VRS)》
『政府がつくった接種券番号を読み取って自動入力する端末に誤読が相次いだ。』
『VRSは急ごしらえだった。政府は2ヶ月で作れるという提案に飛びついてスタートアップと随意契約を結んだ。・・・閣僚が指示した期限に間に合わせるのが先決だった。』

日経新聞記事は以上のように記しています。以下に私の意見を述べます。

《優良なシステムを作るには時間がかかる》
菅政権時代に政府が掲げた「デジタル化」の成果を得るためには、省庁・自治体の仕事の仕方を根底から変革することが必要です。それがない限り、目的は達せられないでしょう。
そもそも現時点で、政府の仕事の大部分は“デジタル化”されています。問題は、「省庁ごとの縦割りのデジタル化」に過ぎないことです。また、「従来の紙ベース業務形態をそのままに、ただコンピュータ化したに過ぎない」ことです。このような壁を打破して今回目標とする「良好なデジタル化」を成し遂げるためには、まず、「官僚にものが言える人材」と「最新システムに精通した人材」がタッグを組むことが不可欠です。民間人材が徒手空拳で官僚に挑んだって跳ね返されるに決まっています。
また、時間も必要です。菅総理はとにかくせっかちに「早く、早く」とせき立てましたが、それでは間に合わせのシステムしかできあがりません。
このような問題は、デジタル庁が発足する前から十分に予測されていたことです。これを本当に打破できるのか、そこが、岸田政権に問われています。

《VRSで接種券番号を読み取って自動入力する端末に誤読が相次いだ問題》
このブログの「厚労省の大罪(続き) 2021-05-16」で以下のように記載しました。
『ワクチン接種の現場では、被接種者が持参したクーポン券の18桁の数字をOCRで読み取り、本人確認しています。読み取りがうまくいかない問題が多発しているようです。
なぜ、バーコードやQRコードを用いていないのか。厚労省が「クーポン券へのバーコードやQRコードの記述は任意である」と宣言してしまったので、これらを記載していないクーポン券を発行した自治体が出てしまい、後戻りができないことになった、とのことです。』
誤読が相次いだ問題の原因は、システム作りを急がせたことが原因ではなく、バーコードやQRコードを使えなくしてしまった厚労省の失態に原因があります。

今回の日経新聞の特集記事は、デジタル庁の現状を紹介しているところは評価できます。一方で、問題点の掘り下げについては不十分です。今後に期待したいです。

戻る                          続く
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする