弁理士の日々

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改正特許法等が成立?

2014-05-11 15:08:08 | 知的財産権
過去、特許法改正がこれほど話題にならなかったことがあったでしょうか。
本年度の特許法等の改正については、3月11日に特許庁のニュースリリースで、「「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました」とアナウンスされたきりで、その後の国会審議の進捗は聞こえてきませんでした。

おかしいと思って検索したら、4月2日に参議院、4月25日に衆議院本会議で可決しており、すでに成立しているではないですか。

参議院・議案審議情報
特許法等の一部を改正する法律案(186回)
提出日 平成26年3月13日
参議院本会議経過
議決日 平成26年4月2日
議決 可決
衆議院本会議経過
議決日 平成26年4月25日
議決 可決


3月の特許庁のニュースリリースでは、改正法案について以下のように説明されています。
『 法案について
1.法改正の趣旨
「日本再興戦略」及び「知的財産政策に関する基本方針」(いずれも平成25年6月閣議決定)を踏まえ、我が国は、今後10年間で、世界最高の「知的財産立国」を目指します。この実現に向け、知的財産の更なる創造・保護・活用に資する制度的・人的基盤を早急に整備するための措置を講じます。
2.法案の概要
(1)特許法の改正
①救済措置の拡充
国際的な法制度に倣い、出願人に災害等のやむを得ない事由が生じた場合に手続期間の延長を可能とする等の措置を講じます(実用新案法、意匠法、商標法及 び国際出願法にも同様の措置を講じます)。
②「特許異議の申立て制度」の創設
特許権の早期安定化を可能とすべく、「特許異議の申立て制度」を創設します。
(2)意匠法の改正
「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」(加入を検討中)に基づき、複数国に対して意匠を一括出願するための規定を整備し、出願人のコスト低減を図ります。
(3)商標法の改正
①保護対象の拡充
他国では既に広く保護対象となっている色彩や音といった商標を我が国における保護対象に追加します。
②地域団体商標の登録主体の拡充
商工会、商工会議所及びNPO法人を商標法の地域団体商標制度(※)の登録主体に追加し、地域ブランドの更なる普及・展開を図ります。
※地域団体商標制度とは、商標の登録要件を緩和し、「地域名+商品名」等からなる商標の登録をより容易なものとする制度。(現行法上、登録主体は事業協同組合等に限定。)
(4)弁理士法の改正
「知的財産に関する専門家」としての弁理士の使命を弁理士法上に明確に位置づけるとともに、出願以前のアイデア段階での相談業務ができる旨の明確化等を行います。
(5)その他
国際的な法制度に基づき特許の国際出願をする場合の他国の特許当局等に対する手数料について、我が国の特許庁に対する手数料と一括で納付するための規定の整備を行います(国際出願法の改正)。』

特許を扱う実務家にとっては、『「特許異議の申立て制度」の創設(復活)』が大きいでしょう。
詳細については、特許庁の新旧対照条文で明らかです。
ざっと異議申し立て制度の条文をチェックしたところでは、以前廃止になった異議申し立て制度がほとんどそのままの形で復活している印象を受けました。

なお、改正前において、無効審判請求は「何人も」請求可能でしたが、今回改正で、「利害関係人に限り」と明示で限定されることとなりました(特123条2項)。無効審判において、現在は同一特許について別人が起こした審判では一事不再理効が効きません。そのため、実質同一の会社が、自然人を請求人に立ててとっかえひっかえの審判を起こすことが可能であり問題だと考えていたのですが、今回改正で利害関係人に限定されることとなったので、その心配は消えました。
コメント
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