弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

審査官との対話

2006-11-19 20:58:14 | 弁理士
拒絶理由通知に対して意見書と補正書で対応する際、「審査官の意図を十分に理解して応答しているだろうか」「この応答で審査官の心証を特許査定に導くことができるだろうか」と心配になることがあります。
審査官に面接を申し込んで直接対話すれば、相互の意識のずれがあれば修正することができ、正しい方向に進むことができます。いずれにしろ、審査官と面接を行った案件は、特許になりやすいという印象は確実にあります。

しかし、常に審査官に面接を申し込むというわけにも行きません。私は審査官の意図をきちんと理解して応答しているかどうか疑問が残る場合、審査官に電話し、「補正案、及び補正内容を説明する意見書案を作成したので、一度見ていただけないか」とお願いすることが多いです。審査官に応じていただければ、補正書と意見書をファックスで送って見ていただきます。

審査官によって、「事前には見ません」という方、「36条対応なら見ますが29条対応については見ません」という方、「いいですよ」と見てくださる方、様々です。こればかりは電話で問いかけない限り分かりませんから、まずは問いかけてみることです。

先日も、36条違反について、当方としては技術常識と思える事項について拒絶理由が出ていて、当方の応答で審査官に納得してもらえるか不安があり、審査官に電話して「36条違反について応答案を作ったのだが見ていただけないでしょうか」とお願いしたところ、快く応じていただけました。
ファックスをお送りしてから半日も経ずして審査官から電話がありました。「概ねこれでいいと思うが、2点ほど疑問点がある」ということで、その疑問点をお話しいただきました。そのうちの1点については特許請求の範囲の補正の文言を変えることでより明確にすることができ、他の1点については電話で応対するうちに審査官に納得していただけました。

このような応答を経た案件については、意見書・補正書を提出した後に特急で特許査定をもらえることが多いです。

また別件で、進歩性違反とされたものの引用文献に記載の発明を審査官が誤って受け取っていると思われる案件がありました。そうはいっても、審査官は引用文献についてわれわれと異なった解釈をしている可能性もあります。
このような場合もためらわずに審査官に電話してみます。今回の件については、審査官から「確かに本願発明と関連する発明は引用文献に記載されていなかった。意見書でその旨主張してもらえばいい」という回答をいただきました。これで安心して意見書を提出できます。

この半年程度で特許査定を受けた案件を振り返ってみると、意見書・補正書提出前に何らかの形で審査官と対話を行った案件が多いことに気付きました。対話によって応答がより適切になったのか、対話によって審査官の印象に深く残り、それが良い方向に働いたのか、いずれにしろ審査官とはできるだけ対話の機会を増やした方が好ましい結果を得ることができます。
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