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戒語 良寛

2022-08-16 06:22:36 | 文学
良寛は、他人にたいして積極的に説教をすることが無かったのですが、日常こころがけていたのは愛語でした。愛語と説教は同じように思われがちですが、
別のものです。良寛は説教を好まなかったのですが、他人から頼まれた場合には、ひきうけました。島崎の寄寓していた木村家の元右衛門の二女「おかの」に対する戒語が残っています。この娘は家庭にあっても、炊事や掃除や裁縫に一向手を出さない。それが今度結婚することになって、元右衛門は心配し、再三、良寛に願って書いてもらったものだと伝えられています。

一 あさゆふ おやにつかふまつるべき事
一 ぬひをり すべてをなごのしょさ つねにこころがくべき事
一 さいごしらひ おしるのしたてやう すべてくひもののこと しならふべき事
一 よみかき ゆだむすべからざること
一 はきさうじ すべき事
一 ものに さからふべからざる事
一 上をうやまひ 下をあわれみ しやうあるもの とりけだものにいたるまでなさけをかくべき事
一 げらげらわらひ やすづらはらし てもずり むだ口 たちぎき すきのぞき よそめ かたくやむべき事
右のくだり つねづねこころがけらるべし
 おかの どの

   意味は明瞭です。朝夕親に仕えよ、裁縫や織物の仕事はつねに忘れるな、食事
   の支度も、家の中の掃除も全部女の仕事であるぞ。この辺までは極く当たり前のことですが、つねに学問することを忘れるな。他人にたいして逆らってはならぬ。上を敬し下を憐れみ、生あるものは鳥・獣にまで情をかけよ、というのは極めて良寛的です。そして最後に、げらげら大口を開いて笑うな、ふくれっ面をするな、てもずり、即ち何の役にも立たぬことに手先を無駄に動かすことや、過度のおしゃべり、他人の言葉の盗み聞き、隙き間のぞき、他人にたいし顔を背けること等々、極めて通俗的な処世心得を説いています。良寛にもこのような一面があったのです。

     渡邊三省 「人間良寛」 風濤社
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