ミステリ-の歴史に残る傑作、故・鮎川哲也(写真 下)の「黒いトランク」(1956年)を読み直しました。驚いた事に、朴念仁とされていた鬼貫警部に、由美子さんという美しい恋人がいました。
登場人物はある学園の同期生達。
近松千鶴夫(ちかまつ ちづお)
馬場蛮太郎 (ばば ばんたろう)
膳所善助 (ぜぜ ぜんすけ)
蟻川愛吉 (ありかわ あいきち)
鬼貫警部
上記の姓名には共通の特徴があります。姓の最初の音と、名の最初の音が同じです。こうしてみると未発表の鬼貫警部の名前は、「お」で始まる名前が想定される可能性が大です。凡人の推測で恐縮ですが、「資治通鑑」の司馬光と同じ「温公」であったかもしれません。
小説の中で、鬼貫警部は、夜、膳所善助を訪問した後、中央線の大久保駅のホ-ムにいます。明日の仕事の段取りを思案しつつ、浅川行の電車に乗ったとありました。鬼貫警部の自宅は国分寺ですから、中央線を下る必要があります。「浅川行」に違和感がありました。「中央線の下り方面に浅川駅は無い」と思ったのですが、調べてみましたら、現在の高尾駅のことを、昔は浅川駅と称したという事がわかりました。つまり、著作がなされた時代とそれを読む者の世代が違っているのでした。
また、重要な登場人物の蟻川は、学生時代から鬼貫警部に劣等感を懐いており、「学業の成績にしても常に君に一等を許さなければならなかった劣等感が次第に鬱積した」と述懐していました。これに対して、鬼貫警部は気負うことなく、警部として級友としての態度を変えることがないのです。そして、鬼貫警部が蟻川邸を辞去した場面です。「へたをすると新宿で待たなくちゃならん」「カゼをひかないように気をつけたまえ」「じゃお休み」「ああ失敬」鬼貫が門をでるまで、蟻川は玄関のドアをしめずに立っていた。門のところでふり返ってみると、逆光線をあびた蟻川の黒い影が、手をふってみせた。鬼貫もかるくうなずいてそれにこたえた。彼が生きている旧友の姿をみたのは、それが最後であった。
鮎川哲也の筆は最後まで温かく、やさしい。
登場人物はある学園の同期生達。
近松千鶴夫(ちかまつ ちづお)
馬場蛮太郎 (ばば ばんたろう)
膳所善助 (ぜぜ ぜんすけ)
蟻川愛吉 (ありかわ あいきち)
鬼貫警部
上記の姓名には共通の特徴があります。姓の最初の音と、名の最初の音が同じです。こうしてみると未発表の鬼貫警部の名前は、「お」で始まる名前が想定される可能性が大です。凡人の推測で恐縮ですが、「資治通鑑」の司馬光と同じ「温公」であったかもしれません。
小説の中で、鬼貫警部は、夜、膳所善助を訪問した後、中央線の大久保駅のホ-ムにいます。明日の仕事の段取りを思案しつつ、浅川行の電車に乗ったとありました。鬼貫警部の自宅は国分寺ですから、中央線を下る必要があります。「浅川行」に違和感がありました。「中央線の下り方面に浅川駅は無い」と思ったのですが、調べてみましたら、現在の高尾駅のことを、昔は浅川駅と称したという事がわかりました。つまり、著作がなされた時代とそれを読む者の世代が違っているのでした。
また、重要な登場人物の蟻川は、学生時代から鬼貫警部に劣等感を懐いており、「学業の成績にしても常に君に一等を許さなければならなかった劣等感が次第に鬱積した」と述懐していました。これに対して、鬼貫警部は気負うことなく、警部として級友としての態度を変えることがないのです。そして、鬼貫警部が蟻川邸を辞去した場面です。「へたをすると新宿で待たなくちゃならん」「カゼをひかないように気をつけたまえ」「じゃお休み」「ああ失敬」鬼貫が門をでるまで、蟻川は玄関のドアをしめずに立っていた。門のところでふり返ってみると、逆光線をあびた蟻川の黒い影が、手をふってみせた。鬼貫もかるくうなずいてそれにこたえた。彼が生きている旧友の姿をみたのは、それが最後であった。
鮎川哲也の筆は最後まで温かく、やさしい。
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