日頃、考えたこともないのですが、国号「日本」は独立国の名称として不適切だという論考があります。東京大学名誉教授の渡辺浩氏の主張です。
理由 第一
「この国号は、この国固有の言葉」ではない。外国語である。この国は自称に自国語を用いず、わざわざ隣国-中国-の言語でみずからを呼んでいるのである。この国号は中国文字(いわゆる「漢字」)で表記され、中国音(いわゆる)音で発音される。なお、「ニホン」は、この地の言葉の影響を受けてなまった発音であり、「ニッポン」の方が原音により近い。NHKのアナウンサ-などは、必ず「ニッポン」と発音しているようだが、それは中国の原地音に、より忠実に発音しようという立場であるわけである。
第二 仮に、この国の言葉による名称が無いならば、外国語を利用するのもやむを得ないかもしれない。しかし、例えば、「みずほのくに」「やまと」「おほやしまくに」「あきつしま」「あしはらのなかつくに」等、洋々な土着の名称があるのである。(「ひのもと」は「「日本」を訓読みした言葉であって、土着の言葉ではない」。しかも、「かな」という(中国文字が基であるとしても)独自の文字もある。
第三 「日本」とは日の出る方角、つまり東方にあることを自認した名称である。しかし、南北と異なり、東西は相対的である。世界のどの国も、西とも東とも中央とも言える。そして太陽はこの列島から見ても、はるか東から昇る。にもかかわらず、「東の国」と自己規定しているのは、なぜなのか。それは、無論、この列島から見てすぐ西方の大陸を世界の中心-中華-と認めたからであろう。我が国、あるいは我が王朝は、そちらから見て東の方角の周辺です、と認めたのである。それ故に、八世紀初め、「中華」の王朝(そちらは、決して「西の国」だとは自称しない)も、それを、従来の「倭」に代わる正式国号あるいは王朝名として、速やかに承認したのであろう。以上のように、形式からしても、意味内容からしても、中国を意識し、中国に依存し、見方によっては中国に媚びたような国号を、この国では現在に至るまで使用しているのである。
論者は、この主張に論理的に反論することは多分難しだろうと自信満々です。
また、今更、国号を変更することは現実的ではない、という意見が多い だろうという事も認識されています。
イギリスの正式名称は、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王 国」と長いことでもあり、不肖は、古事記や日本書紀にある「とよあしはらのみずほのくに」も立派な国号候補ではないかと思います。オリンピックで自国を応援する場合には長い名称は不都合ですが。
渡辺浩 「學士會会報No.947 2021-Ⅱ
理由 第一
「この国号は、この国固有の言葉」ではない。外国語である。この国は自称に自国語を用いず、わざわざ隣国-中国-の言語でみずからを呼んでいるのである。この国号は中国文字(いわゆる「漢字」)で表記され、中国音(いわゆる)音で発音される。なお、「ニホン」は、この地の言葉の影響を受けてなまった発音であり、「ニッポン」の方が原音により近い。NHKのアナウンサ-などは、必ず「ニッポン」と発音しているようだが、それは中国の原地音に、より忠実に発音しようという立場であるわけである。
第二 仮に、この国の言葉による名称が無いならば、外国語を利用するのもやむを得ないかもしれない。しかし、例えば、「みずほのくに」「やまと」「おほやしまくに」「あきつしま」「あしはらのなかつくに」等、洋々な土着の名称があるのである。(「ひのもと」は「「日本」を訓読みした言葉であって、土着の言葉ではない」。しかも、「かな」という(中国文字が基であるとしても)独自の文字もある。
第三 「日本」とは日の出る方角、つまり東方にあることを自認した名称である。しかし、南北と異なり、東西は相対的である。世界のどの国も、西とも東とも中央とも言える。そして太陽はこの列島から見ても、はるか東から昇る。にもかかわらず、「東の国」と自己規定しているのは、なぜなのか。それは、無論、この列島から見てすぐ西方の大陸を世界の中心-中華-と認めたからであろう。我が国、あるいは我が王朝は、そちらから見て東の方角の周辺です、と認めたのである。それ故に、八世紀初め、「中華」の王朝(そちらは、決して「西の国」だとは自称しない)も、それを、従来の「倭」に代わる正式国号あるいは王朝名として、速やかに承認したのであろう。以上のように、形式からしても、意味内容からしても、中国を意識し、中国に依存し、見方によっては中国に媚びたような国号を、この国では現在に至るまで使用しているのである。
論者は、この主張に論理的に反論することは多分難しだろうと自信満々です。
また、今更、国号を変更することは現実的ではない、という意見が多い だろうという事も認識されています。
イギリスの正式名称は、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王 国」と長いことでもあり、不肖は、古事記や日本書紀にある「とよあしはらのみずほのくに」も立派な国号候補ではないかと思います。オリンピックで自国を応援する場合には長い名称は不都合ですが。
渡辺浩 「學士會会報No.947 2021-Ⅱ