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草木国土悉皆成仏 梅原猛

2016-09-21 05:40:03 | 文学
「草木国土悉皆成仏」は「草木国土悉(ことごと)ク皆成仏ス」と読み、「涅槃経」にある言葉だそうです。これに関連して、哲学者の梅原猛教授は雑誌に、「人類哲学の使命」と題する随想を寄稿されています。以下に示します。
私は、独自の哲学を創造するにはやはり日本の文化、宗教、歴史について西田幾多郎や田邊元より深く学ばねばならないと思い、日本研究を志したが、愚鈍の身ゆえ日本研究に五十年の歳月を要した。そして日本の思想の本質が、鎌倉時代の三つの新仏教、浄土、禅、法華仏教の前提となった「草木国土悉皆成仏」という思想にあることを見出したのが二十年ほど前である。
また私は人間とは何かを問い続けてきたが、プラトンやデカルトやニーチェとは異なる人間観を見出した。それは人間とは戦争すなわち大量の同類殺害をせざるを得ない動物である、という人間観である。
人間以外の動物は、種の末永い存続を図るため基本的に同類を殺さない。(中略)
人間はどうしてそのような大量の同類殺害を行ってきて、今もなお行おうとするのか。私はその原因の一つに言葉があると思う。人間は、国や地域によって言葉が異なるが、自己と異なる言葉を話す人間を同類とは認め難かったのであろう。
しかしもっと根深い原因がある。それは、人間は自然の破壊者であったことであろう。人間以外の動物は決して自然を破壊しない。(中略)
私は、このように自然を破壊し、多くの生物を殺した人間が、人間同士の殺し合いである戦争を行うのは必然的であったと考える。そして殺人兵器の技術が進歩し、ついに原爆、水爆の開発にいたった。そのような人間の運命を変えなければならないと私は思う。
数年前、私は「人類哲学序説」を上梓し、「草木国土悉皆成仏」」という理念が新しい人類の理想になるべきだと語った。しかしそれは序論にすぎない。本論では、この人類文明を飛躍的に発展させた西洋哲学に対する厳しい批判をしなければならない。それを書くにはまだ十年ほどの時間が必要であろう。十年経つと私は百歳を超えることになるが、少なくとも百歳までは生きて、新しい哲学を創らねばならないと思っている。

なお不肖は、戦争の要因として、不平等、格差、貧困、独善、宗教対立などがあると思えてなりません。


梅原猛 「随想 人類哲学の使命」學士會報 No.919 2018―Ⅳ


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