盛唐の詩人 杜甫の律詩「曲江」を紹介します。
朝回日日典春衣
毎日江頭尽酔帰
酒債尋常行処有
人生七十古来稀
穿花蛱蝶深深見
点水蜻蜓款款飛
伝語風光共流転
暫時相賞莫相違
「読み方」
朝(ちょう)より回(かえ)って日日(にちにち)春衣を典(てん)す
毎日江頭(こうとう)に酔(ゑ)いを尽くして帰る
酒債(しゅさい)尋常行処(こうしょ)に有り
人生七十古来稀なり
花を穿(うが)つ蛱(きょう)蝶(ちょう)は深深として見え
水に点ずる蜻蜓(せいてい)は款款(かんかん)として飛ぶ
伝語(でんご)す風光共に流転して
暫時(ざんじ)相賞(あひしょう)して相(あひ)違(たが)うこと莫(な)からんと
「訳」
朝廷を退出すると、毎日、春の衣服を質に入れ、曲江のほとりで泥酔して
帰る。酒の借金はふつうのことで、行く先々にできている。人生七十歳まで生きることは昔からめったにないから、今のうちに楽しんでおきたいのだ。花の蜜を吸うあげはちょうが奧に見え、水面に尾をつけて卵を生む、とんぼがゆるやかに飛んでいる。私はこう言葉を伝えたい、春の風光よ、私と共に流れゆき、しばらくのあいだ、このよい季節を楽しみ合うようにしよう。
「鑑賞」
曲江は長安の東南にあった池の名、はじめ漢の武帝が増築し、のち唐の玄宗のとき改修されて、長安随一の行楽地としてにぎわった。ここを詩題にとったこの詩は杜甫四十七歳の作、左拾遺という職にいたときです。念願の仕官でしたが生真面目な性格から剛直に諫言したため粛宗からうとまれてしまい、次第に酒に憂さをはらすようになり「どうせ短い人生さ、せいぜい楽しくやろう」というデカダンな気分がみえる作品です。最後の二句は「時よ停まれ」という作者の胸のうちの叫びでしょう。罤四句の「人生七十古来稀」なり」は古稀の語の出典となりましたが、杜甫自身も五十九歳で没しています。
石川忠久「NHK漢詩紀行」日本放送出版協会
朝回日日典春衣
毎日江頭尽酔帰
酒債尋常行処有
人生七十古来稀
穿花蛱蝶深深見
点水蜻蜓款款飛
伝語風光共流転
暫時相賞莫相違
「読み方」
朝(ちょう)より回(かえ)って日日(にちにち)春衣を典(てん)す
毎日江頭(こうとう)に酔(ゑ)いを尽くして帰る
酒債(しゅさい)尋常行処(こうしょ)に有り
人生七十古来稀なり
花を穿(うが)つ蛱(きょう)蝶(ちょう)は深深として見え
水に点ずる蜻蜓(せいてい)は款款(かんかん)として飛ぶ
伝語(でんご)す風光共に流転して
暫時(ざんじ)相賞(あひしょう)して相(あひ)違(たが)うこと莫(な)からんと
「訳」
朝廷を退出すると、毎日、春の衣服を質に入れ、曲江のほとりで泥酔して
帰る。酒の借金はふつうのことで、行く先々にできている。人生七十歳まで生きることは昔からめったにないから、今のうちに楽しんでおきたいのだ。花の蜜を吸うあげはちょうが奧に見え、水面に尾をつけて卵を生む、とんぼがゆるやかに飛んでいる。私はこう言葉を伝えたい、春の風光よ、私と共に流れゆき、しばらくのあいだ、このよい季節を楽しみ合うようにしよう。
「鑑賞」
曲江は長安の東南にあった池の名、はじめ漢の武帝が増築し、のち唐の玄宗のとき改修されて、長安随一の行楽地としてにぎわった。ここを詩題にとったこの詩は杜甫四十七歳の作、左拾遺という職にいたときです。念願の仕官でしたが生真面目な性格から剛直に諫言したため粛宗からうとまれてしまい、次第に酒に憂さをはらすようになり「どうせ短い人生さ、せいぜい楽しくやろう」というデカダンな気分がみえる作品です。最後の二句は「時よ停まれ」という作者の胸のうちの叫びでしょう。罤四句の「人生七十古来稀」なり」は古稀の語の出典となりましたが、杜甫自身も五十九歳で没しています。
石川忠久「NHK漢詩紀行」日本放送出版協会