昨日のの続きです。本当は一挙に掲載してしまいたいのですが、ブログの投稿には字数の制限があり、それが出来ないのが残念です。湿原には綺麗どころばかりではなく、地味な花もありそれぞれが個性を主張しています。その主張を聴き取ることが野草観察の妙味なのだと思っています。
*釧路湿原原風景
昨日の写真と大して変わりませんが、釧路湿原には草だけではなく背丈の低い樹木が所々藪を形成していたり、千切れたように佇(たたず)んでいたりしています。まだ幼い木なのかなと思って良く見ると、これが結構年を経た木なのに驚かされます。丁度高山地帯の樹木がそうである様に、湿原の環境も冬は厳しく、泥炭の土質では樹木の生長は伸び伸びという訳にはゆかず、生き残るのはきわめて難しい環境にあるのだと思います。ダケカンバやハンノキ、ミズナラ、コオリヤナギ、ノリウツギなどがその主な樹木たちのようです。植物というのは、一見動かないように見えますが、その世代一代では動かないように見えても、世代交代を重ねる中では、随所に子孫を進展させ、生命の拡大を周到に図っているのがわかります。
*ドクゼリ(毒芹)
7月末の湿原で一番目立つ花の一つがこのドクゼリだと思います。毒と名の付くからには、食べれば身体に異常を来す代物だと思いますが、花の方は結構美しいものです。まるで天に広がる真っ白な花火のような美しさです。あちこちに点在していますので、うっかりすると当たり前の野草として見過ごしてしまいますが、良く見ると毒がどこにあるのかなと思うほど品のある花です。
*イヌゴマ(犬胡麻)
この花が本当にイヌゴマなのかちょっと自信がありません。クルマバナという良く似た花もあり、もしかしたら間違っているかも知れません。ま、イヌゴマということにしておきましょう。「イヌ」というのは、犬君たちには申し訳ないけど、植物の命名の場合は、「あまり役に立たない」というような意味で使われるようです。したがって、イヌゴマというのは、役に立たない胡麻というような意味で、つまり胡麻に似ているけど胡麻ではない植物といったことになるのだと思います。湿原の中にちょっと目立つピンクの花はそれなりの存在感があります。
*シオガマギク(塩竃菊)
この花は湿原の中というよりも、湿原の岸辺というか山際近くの道端に多く咲いていました。濃い赤紫色の花びらは、少しねじれた風に咲いていて、もしかしたら巴シオガマと呼ばれている種類のシオガマギクなのかもしれません。図鑑を見たら、この命名にはちょっとした駄洒落みたいなところがあるようで、塩竃というのは塩を作るための釜のことですが、それは浜で美しい存在と思われているのに引っ掛けて、この花は「葉まで(=浜で)美しい」という意味で、シオガマギクと名付けられたのだそうです。それほど葉が美しいとは思えませんが、ま、それで良いことにしておきたいと思います。
*アキカラマツ(秋唐松)
カラマツ草という花があります。白い花が落葉松の葉に似た形をしているところから名付けられたようですが、アキカラマツはそれと良く似た姿をしており秋に花を咲かせるので、そう呼ばれています。花はカラマツ草とはあまり似ていない感じがしますが、全体としての雰囲気は良く似ていると思います。アキカラマツは全国どこにでもあり、東京に住んでいた時には、玉川上水の側道を歩いて良く見かけたのですが、いつも花が咲く前に刈られてしまうので、花を見る機会はなかなかありませんでした。北海道では原生花園などに行けば、その花を幾らでも見ることが出来ます。地味な花なので、目立ちませんが、中には少しピンクや紫がかった小さな花びらを付けているものがあり、捨てたものではありません。
*オトギリソウ(弟切草)
オトギリソウの命名由来は鷹匠伝説として有名ですが、鷹の傷を治す秘伝の薬をこの花から作るについて、その秘密を守るために一緒にいた弟を切り殺したということから、その名がついたというのですから、何ともはや恐ろしい話です。この花にもいろいろ種類があり、育つ環境によって少しずつ花も姿も異なっているように思います。湿原の中のオトギリソウは、それがオトギリソウとは思えないほど大型で、もしかしたら違うのではないかと時々思ったりしています。
*トキソウ(朱鷺草)
トキソウは、園芸用として市販されているのは結構大振の姿をしていますが、湿原の中のものは、注意して探さないと見落としてしまうほど小さい花です。厳しい自然環境の中で、小さいけれど懸命に生きて美麗なる蘭の花を輝かせているのは、真に可憐であり、愛おしき花だと思います。なかなか索道の側には見当たらず、ようやく探し当てた株でした。
*ナガボノシロワレモコウ(長穂の白吾亦紅)
ワレモコウは赤紫色ですが、このワレモコウの花は白い色をしています。名前の通りその穂が長くて、普通のワレモコウが楕円形程度なのに比べると、かなり大型の感じがします。湿原によらず、北海道では至る所に自生しており、どちらかといえば、当たり前の野草として見過ごされている感じがします。じかし良く見ると、なかなか味わいのある花です。
*クサフジ(草藤)
クサフジは草なのに藤のような花をつけるというところから来ている名前だと思いますが、必ずしも藤には似ていない感じがします。藤の花は房状に垂れ下がって花を咲かせますが、クサフジは上に向って花びらを重ねているようです。ま、花の色は藤色ですから、全体のイメージとしては命名どおりといって良いのでしょう。これも全国どこにでも見かけられる野草ですが、湿原の外れの山脇の藪の中の花は、一際目立ち、その存在感を確立しています。
以上の他にもたくさんの野草をみることができますが、今のシーズンとしては目立つ主なものといえば、大体はこのようなところかと思います。いつも見るのを楽しみにしていたエゾトリカブトの花は、今年はいつもの場所には見当たりませんでした。それが残念でした。
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