山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

滝桜の眷族

2008-04-25 02:29:54 | くるま旅くらしの話

眷族(けんぞく)という言い方は、一般的にはあまり好感を持てないような人たちに向けて使われているようだが、滝桜の場合は、仏や菩薩に付き従う者たちよりも遙かに美しい存在の樹々たちを指している。正確に滝桜の子孫なのかどうかは判らないけど、同じ紅枝垂れ桜であれば、皆同じ子孫の関係者だと断じても良いような気がする。

この子孫のことを調べた人がいる。中田町(現郡山市)木目沢地区に住んでおられた木目沢伝重郎(昭和58年享年85歳で没する)という方である。この方は、滝桜の実を食べた鳥たちが、運び播いたタネが生え育ち、それが立派に生長して花を咲かせたに違いないと考え、滝桜から半径10km以内にある直径1m以上の根回りの紅枝垂れ桜の樹を歩いて調べ、ついに420本を確認されたという。凄い執念というか、滝桜に対する思い入れだと思う。このことは子孫の筆頭とされる地蔵桜の傍に、三谷晃一という方が地蔵桜縁起という碑に記しておられる。何時読んでも感動せずにはいられない。

滝桜から半径10kmといえば、三春町だけではなく、隣接する岩代町(二本松市)、船引町(田村市)、中田町(郡山市)などに跨(またが)ることになるが、その眷族が一番多いのは、どうやら木目沢エリアのある中田町のようである。それで、今回はその中田町を中心に何本かの滝桜の子孫と思しき桜の樹を訪ねたのだった。中田町だけでも20本以上の名木があるので、とても全部を観ることは不可能である。今日は7本観た内の5本を紹介したい。

先ずは何といっても滝桜の子孫の筆頭、すなわち長女の地蔵桜である。滝桜を観に来た時は必ずこの桜も観るようにしている。地蔵桜はその根元に小さなお地蔵様を祀った祠があり、そこから呼ばれた名のようである。滝桜ほどの貫禄はないけど、すらりとした樹高に広がる紅枝垂れの花は、より鮮やかで、400年と推定される樹齢を思わせない若々しさである。尤も、滝桜の樹齢から比べれば、半分以下の時間しか生きていないのだから、若々しいのは当然かも知れない。

   

地蔵桜。この画像は正面からではなく横側から撮ったもの。人の大きさを見て頂くと、桜の樹の大きさがお判り戴けると思う。

次は不動桜の大樹である。この桜は滝桜からは一番近い距離にあるようだ。樹齢350年と推定されるそうであるから、地蔵桜よりは少し若いらしいけど、見た目には判らない。この樹の方が老けているようにも感ずる。その根元近くに不動明王を祀るお堂があり、それゆえに不動桜と呼ばれたらしい。ちょっと小高い丘の上にあり、下から見上げるとなかなかの貫禄である。

     

不動桜。不動明王の祀られているこのお堂で、その昔三春藩の藩士による寺子屋が開かれていたとか。説明板に書かれていた。

地蔵桜から滝桜に向かう途中の道脇にあったお寺の境内にも、なかなかの枝振りの桜があった。ちょっと立ち寄って観たのだったが、お寺の名まえも判らず、何という桜なのかも知らなかったのだが、後で案内図を見たら、「水月観音堂の桜」とあった。どうやら観音様を祀るお寺らしい。この辺のお寺は住職さんの居られないものが幾つかあるようだ。しかしそのようなこととは無関係に、滝桜の子孫と思しき樹木は、美しい花を咲かせて境内を飾っていた。

   

水月観音堂の桜。やや小ぶりだが、花の広がりは見事で、美しい。

忠七桜というのを訪ねた。この樹は戊辰戦争の折に荷駄の運びに出向いた忠七という地元の方が、その戦争のあまりの惨状を目の当たりにし、心に深い悲しみの思いを抱いて家に戻り、会津の人たちの霊を慰めるべく、自宅の庭に植えてあった紅枝垂れ桜を雑木山に集落の人たちと一緒に移植し、そこを公園とし、代々の子孫に桜の樹の手入れをするように遺言されて、今日に続いているという。樹齢は200年ほどという。今回見た桜の中では最も若く、従って花の色も最も鮮やかなものだった。亡き忠七翁と一緒に会津の人々のご冥福を祈ると共にこの桜樹の末永き生長を祈念したい。

  

七桜。樹齢200年はこのエリアの花としては若い方か。花の色も鮮やかで、その若さを誇っているようだ。戊辰戦争で不慮の最後を遂げた人たちの霊も癒されているに違いない。

もう一本は、瑞雲寺といういかにも名刹を思わせる名のお寺の境内に、名木の風格を漂わせていたやや小振りの桜樹である。石段を登って参詣した瑞雲寺は、何と無住のトタン屋根のバラックのようなお寺だった。この桜がなかったら、このお寺は廃寺と間違えられてしまうのではないかと思った。やや疲れ気味の感じがしたが、元気を出して末永くお寺に縁(ゆかり)ある人たちの霊を慰めて欲しいなと思った。

  

瑞雲寺の桜。神社やお寺の境内に植えられている桜樹は多いが、この一本は、まさにこのお寺の守護樹であると思った。

※ これらの桜樹に共通しているのは、どの樹も優れたロケーションにあるということです。強風雨などの自然の脅威から守られるように、山腹や丘の斜面を巧みに利した位置に育っているのだなと、改めて気づきました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 三春は桜源郷 | トップ | 浄土庭園の春 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

くるま旅くらしの話」カテゴリの最新記事