山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

西海道&西国の旅の記録から(その26)

2024-07-24 23:45:11 | くるま旅くらしの話

<安来は泥鰌掬いだけにあらず美の極致のある所>

安来と言えば泥鰌すくいということになるのですが、無芸大食の私には縁のない宴会での芸事でした。もし安来に生まれ育っていたら、身についていた芸だったのかもしれません。尤も今頃は泥鰌掬いをしても笊に泥鰌が入って来るような場所は、全国どこを探しても皆無でありましょう。ありのままの自然とは縁のない世の中になってしまいました。人類がこの地球を我がものにし、食いつぶし、破壊していることは明らかです。しかし最早誰にもその破壊行動を止めることができません。なるようになるだけと言った無力感にとらわれるだけです。

話が少し変な方に行ってしまいましたが、その泥鰌掬いで名のある安来を通る時には、必ず寄って見なければならない場所があります。そこは安来の町外れの山間部にあって、ごく平凡な農村地帯なのですが、人類の破壊行動の真反対にある、人類が生みだし残した美と言われるものの一つが結集している場所なのです。その名は足立美術館・庭園です。

足立全康(ぜんこう)という男の執念がつくり上げた現代稀に見る美の殿堂なのです。美術館と言えば、その多くは都市部にあって、交通至便な所が多いのですが、この美術館は、至って交通が不便な場所にあるのです。今は車社会の世の中なので、車を扱える人ならば不便ということはないのですが、仮にこの美術館や庭園が50年前に出来たとしても不便を乗り越えて多くの人たちが此処へやって来たに違いありません。それほどに、ここには人々が希求する美の結晶が用意されているのです。

足立美術館には、我が故郷の水戸出身の偉大な画家横山大観の絵が数多く常設展示されています。それだけでなく我が国の著名な画家、これからを背負う画家の数々の傑作が展示されています。今は魯山人の部屋もつくられており彼の多才な作品が展示されています。それに何と言っても息を飲むのは、アメリカのがーディニング専門誌で20年以上日本一と評価されている庭園の景観です。

今回は3度目の訪問でしたが、この美術館と庭園をつくった足立全康という人物がどのような人だったかをもっと知りたくて、その伝記を購入して読みました。彼が自分の来し方を口述したものを冊子にまとめた本なので、本人の感慨や思いがそのまま伝わって来る内容でした。これを読んで、この方は根っからの商人(あきんど)なのだと思いました。私が思う商人の本質というのは、人々が求めるものを探し求めそれを用意して買って貰って利を稼ぐことなのだと思っているのですが、この方はそのことを生涯をかけて徹底して実践した人なのだと思いました。そして最後に到達したのが己の美の追求の結果を広く世間に公開して知らしめるということでした。そこには商人(あきんど)としての思いよりも、より洗練された彼の美への追及心の結晶の様なものがあったのではないかと思いました。とにかくとんでもないエネルギーに満ち溢れた偉人だったのです。この男(ひと)のエネルギーのもたらしたものは、これから後も日本から世界に向かって解放されて、ますます成長して行くのではないかと思いました。

 

*一人(いちにん)の男の夢は限りなし美の殿堂をふるさとに建つ

 

 *美の極致(きょくち)求めて創(つく)り遺(のこ)したる足立の庭は今日本一

 

 *万人の美への憧れ満たしたる安来の男の偉業を讃(さん)す

 

 *故郷(ふるさと)に錦を飾れる男ありあっぱれ偉業は永久(とわ)に輝く

 

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西海道&西国の旅の記録から(その25)

2024-07-24 08:25:43 | くるま旅くらしの話

<べにくらげの話>

「べにくらげ」という不老長寿の生き物の話を聞いたのは、今から何年前の頃だったか。その頃は世の中に自作のホームページ作りが流行り出した頃ではなかったかと思います。「べにくらげ」というのは、地中海の深い所に棲んでいて、滅多にその姿を見ることは出来ない存在なのだそうな。そのようなことがそのホームページに書かれていました。

 そのようなべにくらげが、何と今は陸に上がって、鳥取県の境港に続く米子の弓が浜近くの陸地に住んでいるのです。ひょんなことでそのホームページの作者の方と旅の中で知り合って以来、私たちはそのべにくらげ夫妻のことを親しみをこめてべにさん・べにママさんと呼んでいます。もうお付き合いは、15年を超えているでしょうか。今回の旅では、前回はコロナの少し前に逢ったくらいですから、もう6年以上経った再会でした。

べにさんは、万能の力を持っています。自力で何でもつくってしまうのです。特にアウトドアの暮らしが好きで、住む家もアウトドアスタイルで、自宅の庭の隅に自らつくったピザ小屋で暮らしているのです。小屋の中には勿論ピザ窯をはじめ燻製窯、それに自作の薪ストーブが据えられていて、見上げると照明はガラスの円筒をカットして中に電球を設えた手づくりの物、その他幾つかの木工工作の作品が梁の上に置かれています。ドアも紐で開閉を操るようにつくられています。皆手づくりなのです。べにさんは本当にこの小屋を大事にされていて、春夏秋冬この小屋の中での暮らしを大事にされています。この魔法の小屋は、彼が孤独を愛するためのものではなく、その全く反対で、多くの人たちに来て貰い、その人と人との親交を深めるためのものでもあるのです。身近な人は勿論のこと、私共の様な旅で知り合った人たちもこの小屋を訪ねたくなってしまうのです。仕事の現役をリタイアしてからの暮らしというものは人によって様々ですが、理想を言うならば、リタイア後の人生を現役時代よりも尚広く深く豊かに生きてゆくことではないかと思うのですが、べにくらげご夫妻はまさにその理想を実現・実践されているのです。私たちはその生き方にもろ手を挙げて賛同し共感し、このエリアを通る時は素通りは出来ないのです。

 今回は本当に久しぶりの再会でした。懐かしい(もう、そのような気持ちなのです)ピザ小屋を訪れて、べにさんご夫妻の心尽くしのご馳走に舌鼓を打ちながら、今までのご無沙汰を埋めるべく、夜遅くまで歓談の時を過ごしたのでした。

 

 旅(たび)友(とも)の心温(ぬく)まるもてなしに酔いて嬉しき人生談義

 

 *二組の老いた夫婦が願うのは健康第一再々会

 

 *老いたれど心は老いず豊かなり我ら旅友永遠(とわ)に旅友

 

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