東京多摩借地借家人組合

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令和元年台風第19号災害による被災住家の賃貸借契約に関し国の行政指導等を求める会長声明

2019年11月29日 | 最新情報
https://www.f-bengoshikai.com/topics/4831.html

 本年10月に発生した令和元年台風第19号災害(以下「本件災害」という。)は,福島県内の広範な地域に
住家等の浸水など甚大な被害をもたらした。当会は,本件災害被災者の生活再建を支援するため,会内に災害対
策本部を設置し,被災者向けの情報提供や無料電話相談等に取り組んできた。
 当会がこれまで取り組んできた無料電話相談等の活動において受け付けた被災者からの相談には,賃借してい
る住家やアパート等(以下「住家等」という。)が本件災害により浸水し,修繕が必要などの理由で,賃借人
が,賃貸人や不動産管理業者から住家等の明渡し(返還)を求められているという内容が少なからず含まれてい
る。このような相談は,県内において住家の浸水等の被害が多く発生した地域に共通して見られており,同様の
事態が広く生じているのではないかと危惧される。また,公営住宅の入居者が,同様に退去を求められていると
の情報も寄せられている。
 建物の賃貸借契約は,賃貸人が賃借人に建物を使用収益させ,その対価として賃借人が賃料を支払うことを本
質とする契約であり,災害により建物が損壊した場合には,賃貸人がその修繕義務を負うのが原則である。ま
た,災害により建物が損壊しても,修繕が可能な場合には,修繕すれば使用収益できるのであるから,契約はな
お存続する。このような賃貸借契約の性質上,災害により,目的物たる建物について修繕が必要になった場合で
も,修繕のための一時退去は別として,修繕の必要があることをもって賃貸借契約の解除や解約申入れの正当な
理由になりうるものではないことは明らかである。
 このように,修繕を理由にして,家主や不動産管理業者等が賃借人に住家等の明渡しを求めることは,賃貸借
契約法理に照らし極めて不当と言わざるを得ない。また,災害に便乗して被災した賃借人の生活基盤を奪うに等
しいものであって,決して容認されるものではない。
 そこで,当会は,国及び福島県に対し,不動産賃貸業者・不動産管理業者等に対する監督権限を適切に行使
し,かかる不当な取扱いがなされないよう指導を徹底するとともに,広報等を通じて,被災者に対する注意喚起
と正しい法律知識の教示・啓発に努めることを求めるものである。また,公営住宅の設置管理者である国もしく
は地方公共団体に対し,災害で損壊した公営住宅について,修繕が可能である場合に,公営住宅入居者に対して
公営住宅の明渡しをさせるような取扱いをしないよう求める。

2019年(令和元年)11月26日
福島県弁護士会
会長  鈴 木 康 元

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