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空き家は減るのか? 新たな法律施行

2015年06月01日 | 国と東京都の住宅政策
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2015_0528_02.html

全国で空き家が急増しています。中には草が生い茂ったり、屋根が傾いたりしている家を見受けられた方も多いかと思います。街の景観を乱すだけでなく、地震による倒壊で避難路をふさぐおそれがあるなど、防災面でも大きな問題となっています。
こうした状況を受けて、空き家の新たな対策を盛り込んだ特別措置法が今月、全面施行されました。空き家問題は解決するのか、経済部・寺田麻美記者、津放送局・高崎和弘記者、岐阜放送局・岡肇記者が報告します。

空き家対策の法律は

空き家は全国にいったいどのくらいあるのでしょうか。総務省によりますと、空き家の数は、おととし10月時点で全国でおよそ820万戸、7戸に1戸に上っています。
これまでも自治体が条例を制定し、行政代執行で撤去するなど、対策を進めてきましたが、市町村では権限が限られ対策がなかなか進んでいませんでした。そこで今回、国が本格的に対策に乗り出すことになったのです。
今月26日に空き家対策の特別措置法が全面施行され、市町村と東京23区にさまざまな権限が与えられました。例えば、市町村が空き家の所有者を迅速に把握できるようにするため、固定資産税の情報を利用することができるようになりました。所有者が分からない場合でも、問題が生じるおそれがある空き家に立ち入り、危険性などを調査できることになりました。
さらに「特定空き家」という新たな枠組みもできました。老朽化が進み倒壊などのおそれがある空き家は、市町村が「特定空き家」と判断し、所有者に対して撤去や修繕の勧告や命令ができます。命令に従わない場合や、所有者が不明の場合には、強制的に撤去できるようになっています。
「特定空き家」は、建物が傾いていたり、屋根や外壁が落ちたりするおそれがあるもの、ごみの放置によって、衛生上、有害となるおそれがあるものを指します。また、多数の窓ガラスが割れたままになっている場合や、庭の木の枝が道路にはみ出して歩行者の通行を妨げている場合なども対象となります。
さらに税制も改正されました。これまで、空き家であっても建物が建っていれば、土地にかかる固定資産税が軽減されていました。これも空き家を放置する原因の一つとなっていました。そこで「特定空き家」にみなされ、市町村が勧告を行った場合については、この軽減対象から外すことになりました。

進むのか? 空き家対策

今回の法律の全面施行によって、一定の効果が見込めるという見方もあります。ただ、課題も指摘されています。
市町村が撤去や修繕を命令できる「特定空き家」は、地域への影響や危険性が特に大きいとされるものに限られ、増加する空き家全体の対策としては限界があるというのです。また、個人の資産である建物を「特定空き家」とみなすには、市町村が個別のケースごとに判断する必要があります。時間がかかるうえ、強制的な撤去に踏み切ると財政負担が生じることも懸念されています。

"空き家バンク"自治体も対策

こうしたなかで、国の取り組みとは別に独自に空き家対策に乗り出している自治体もあります。
三重県南部の尾鷲市は、過疎化などで実におよそ4分の1が空き家とされています。市は、空き家の解消と人口減少対策を同時に進めようと、所有者に「空き家バンク」へ登録してもらい、去年9月から市のホームページで物件情報の提供を始めています。
空き家の有効活用のモデルとしているのが、海辺にたたずむ築65年の古民家です。県外から移住してきた弓削猛さんが借りて、民宿として経営しています。昭和初期の雰囲気を残し、まき割りやかまど炊きなど昔ながらの暮らしを体験できるのが売りで、週末を中心に宿泊客が訪れています。
弓削さんは「田舎暮らしもいいなと感じた宿泊客が『将来は、尾鷲で暮らしたい』と思ってくれたら面白くなるのではないでしょうか」と話していました。
一方で、課題もあります。「空き家バンク」の登録はこれまでに18件にとどまり、借り手や買い手が見つかり、成約した物件はわずか5件です。空き家の所有者側の事情を取材してみると、「見知らぬ人に家を貸すのは抵抗がある」とか「家の中を片付けるのが面倒だ」との声が聞かれました。また、借り手や買い手としても、地方で暮らすことは、働く場があるかなど別の問題もあります。とはいえ、空き家を有効に活用できれば「地域振興」や「人口減少対策」につながる可能性もあります。

"空き家管理代行サービス"民間も

空き家対策を新たなビジネスにつなげる動きも出ています。
岐阜県可児市にある不動産会社は、2年ほど前から空き家の管理を代行するサービスを始めています。岐阜市にある空き家の管理では月に5000円支払うと不動産会社の担当者が月、2回訪れ、軒下にひびが入っていないかや、漏電がないかなどをチェックします。また、郵便受けもチェックしてくれます。
サービスを受けている物件はまだ9件ですが、この会社の柴田実代表は「管理することで、治安の悪化や不法投棄などを防ぐことができ、周辺の方々にも喜んでもらえている」と手応えを感じています。こうしたサービスへの問い合わせは、事業を始めた当初の3倍ほどに増えているということです。

空き家の活用も必要

国土交通省は、空き家の増加を抑えるためには、空き家の活用を進めていく必要があると指摘しています。そのうえで、中古住宅市場やリフォーム市場を活性化させて、長く住むことができる住宅を増やすなど中長期的な取り組みも必要になるとしています。
今後、空き家を撤去するだけでなく、どう空き家を活用し、減らしていくのか、国、地域全体で考えていくことが求められていると言えます。また、空き家問題は、少子高齢化や人口減少それに東京一極集中など日本が抱えるさまざま課題を反映しているともいえます。こうした課題の解決に向けた取り組みも同時に進めていく必要もありそうです。


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