東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

判例紹介 地代の増額請求に対して5年の短期消滅時効を認めた事例

2011年11月08日 | 最高裁と判例集
 月払いの地代は民法169条にいう5年の短期消滅時効にかかりかつ、地代値上げ請求にかかる増加額についても所定の弁済期から消滅時効は進行を始めるとして、提訴5年前までの賃料分に関する適正地代確認の訴を棄却した事例 (東京地裁昭和60年10月15日判決、判例時報1210号61頁以下)

 (事案)
 地主Xは借地人Yに対し、土地を賃貸し、昭和43年6月当時賃料は月額2015円であった。
 Xは同43年、46年、48年、52年の各7月にそれぞれ賃料値上げ請求をし、更に55年8月と57年11月にも値上げ請求した。

 YはXによる右値上げ請求を争ったので、Xは同58年12月17日に、適正地代がXの値上げ請求金額であることの確認請求訴訟を提起した。

 Yは、抗弁として、本件賃料債権は月払いであるから、民法169条の5年の短期消滅時効にかかる。したがって、Xが提訴した同58年12月17日より5年前までに支払期日の到来している同53年11月までの賃料債権は、時効によって消滅した。故に消滅した分については適正地代額に確認を求める訴えは、利益がないから棄却すべきであると主張した。

 これに対し地主Xは、消滅時効は権利者が権利を行使しうるときから進行するところ、地代増額請求にかかる増加額について地主の権利行使が可能となるのは、増額を正当とする裁判が確定した時であるから、Yの消滅時効の主張は失当であるとして争った。

 (判旨)
 「本件賃料債権は、民法169条所定の債権に該当する。
 ところで、借地法12条2項は、賃料の増額につき当事者間に協議が調わないときは、増額の請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める賃料を支払えば足り、裁判が確定した場合に、すでに支払った額に不足があるときは、不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払うことを要する旨規定する。

 右規定の趣旨は、賃料の増額請求があったときは、客観的に適正な賃料額に当然に増額の効果を生じ、賃借人はその額の支払義務を負うに至るのであるが、(中略)増額についての裁判が確定するまでの間は、賃借人は、自己が相当と認める賃料を支払う限り、遅滞の責を負わないものとしたのである。(中略)
 したがって、賃料債権自体は発生し、かつ、本来の賃料支払期日に履行期が到来しているものというべきである。

 賃貸人は、その支払を求める給付の訴又はその確定を求める確認の訴を提起して、消滅時効を中断することができ、又、給付判決が確定すれば強制執行をすることも妨げられないんであって、権利を行使するについて特段の障害があるものと解することはできない。
 したがって、右のような増額請求にかかる増加額についても、所定の弁済期から消滅時効が進行を始めるものと解するべきである。

 具体的な給付請求権が時効消滅した場合には、他に特段の必要のない限り、もはや確認の利益は失われるものと解すべきである。」と、5年前までの請求を棄却した。

(1987.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高齢者や生活保護受給者多く「どうすれば…」 東京・大久保のアパート火災

2011年11月08日 | 最新情報
「すべて燃えた。これからどうすればいいのか…」。焼け跡のアパートのそばで、住民たちは毛布にくるまって途方に暮れていた。6日朝に火災があった東京・大久保の古いアパートには、独り暮らしの高齢者や、生活保護受給者らが多く暮らしていた。炎は、お年寄りたちの命と、都会に残された安住の地を無情にも焼き尽くした。

 警視庁などによると、アパートには、22世帯・23人が居住していたとみられるが、このうち17人が生活保護を受けており、日雇いの仕事で生計を立てる人や、体が不自由のため寝たきりで介護を受けている人もいた。

 住民同士の付き合いはほぼなかったという。アパートに30年以上住んでいた男性(72)は「みんな、余裕のない生活だった。他人より、自分のことで精いっぱいだった」と話す。

 住民の男性(54)は「1階で激しく燃えていた部屋の住人男性は高齢で足が不自由だった。無事だといいが…」と心配そうに話した。

 アパートは1階と2階ともに、木製廊下を挟む形で向かい合わせに部屋が並ぶ構造。住民らによると、部屋の多くは4畳半の一間に台所付き。風呂はなく、トイレは共用だった。家賃は月約5万円で、都心に近い同区内では格安だった。

 新宿区によると、区内で生活保護受給者に支給される住居費は約5万3千円。区関係者は「受け取れる生活保護費内で生活できるように、このアパートを選んだ人が多いのではないか」と話す。

(産経ニュース 11月6日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高齢で認知症の借地人を騙して無償土地返還の承諾書作成

2011年11月08日 | 明渡しと地上げ問題
福生市熊川で約44坪の土地を転貸借しているAさんは、転貸人のBとは親戚関係にあります。ところがBは、92歳の高齢で認知症をわずらい要介護の認定を受けているAさんを今年の9月25日に近くの不動産業者の事務所に連れて行き、「賃借土地無償返却及び建物解体承諾書」に署名・捺印させてしまいました。

内容は、「C不動産業者立会いの上協議をし、A所有の建物を無償にてBに返還し建物の解体を承諾しました」という、とんでもないものでした。

Aさんの娘さんが気が付き、直ちにBに抗議し、組合に相談しました。組合では直ちに内容証明郵便でBに対し、「建物解体承諾書は無効であり、民法の錯誤、詐欺脅迫及び消費者契約法第4条の不退去・監禁に当り、承諾書を取り消します。消費者契約法第10条の消費者である借地人の利益を一方的に害する条項で無効であります。通知人所有の建物を勝手に解体するなどの行為に出た場合は警察に通報するとともに法的手段に訴える決意です」と通告しました。

内容証明が効果があったのか、BはAさんに対し何も言ってこなくなりました。10月分の地代を送金したところ、受領を拒否してきたためAさんは西多摩法務局に地代を供託しました。Bは貸している建物の入居者も出て行き、Aさんを騙して無償で土地を取り上げ、地主と何らかの交渉をしようと画策していることが予想されます。BはAさん達に「話し合いに応じてほしい」と言っていますが、Aさんは転借している土地明渡しには応じるつもりはありません。
(東京多摩借地借家人組合 組合ニュース11月号より)

借地借家の賃貸トラブルのご相談は

東京多摩借地借家人組合

電話 042(526)1094
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする