おやじねこのテレスコ日記

ー八ヶ岳の登山口に住んでいる、テレスコ工作工房の店長のおやじねこが日々の出来事などをタイムリーに伝えています

移動天文台のオーナーになりました!

2021-07-31 14:36:52 | ブログ


突然ですが、この移動天文台「アストロカー」のオーナーになりました。多分日本では唯一の個人オーナーです。たまたま縁あって他の施設で使われていたものを間接的に譲り受けましたが、正直なところ物が物なので運用方法などで悩んでいます。内部には望遠鏡が入っているのですが、ベースは8トン車両なので、運転するにしても中型以上の運転免許が必要です。たまたま私が持っている免許はこの車両を運転できる免許なので問題ありませんが、今日も軽油を入れにガススタンドへ行きましたが、普通車ではないので大変です。

このアストロカーは、日本でも数台しか残っていない五藤光学が23年前に製作した特殊車両ですが、10台ほど作ったようです。しかし現在運用されているのは3-4台だけのようです。その一台が小海町にあります。昔の天文ガイドなどの裏表紙に画像が載っているのでご覧になった方も多いでしょう。



トップに乗っているドームは、観音開きして空全体を見渡せるように工夫されています。他のアストロカーはドームが回転してスリットが開閉するだけで全開はしません。つまり全開するドームを持っているのはこのアストロカーだけだという事です。もちろんドームは電動で開きます。この画像では閉じていますが、ボタンを押すと片方づつ開きます。この開閉動作は見せてあげると皆さん驚きます。



他にも移動天文台として必要な機能がついています。前後左右で4箇所の油圧ジャッキがついています。これを操作する事で車体全体を持ち上げて振動を内部に伝えないようになっています。



搭載されている望遠鏡は「20cmクーデ式望遠鏡」で、Fl=1800mmのアポクロマートEDレンズを採用しています。見え味はまだ月や土星、木星しか見ていませんが、屈折らしい落ち着いたイメージです。先日のSolar Max用アダプターはこの望遠鏡にSM90を乗せて太陽観測ができるようにします。既にアダプターも仕上がってSM3の90mmエタロンフィルターもあるのですが、ブロッキングフィルターで悩んでいます。FL=1800mmなので、最低限BF30が必要になりますが、それが入手できなくて思案しております。新品なら入手できるのですが、必然的に直視型出ないと使えないので、現行のBF30では眼視では使えません。場合によってはBF15を直視型に改造して使おうと考えています。どこかにレデューサーを入れられれば解決しますが、このクーデ式ではそれができないので、BFだけで解決するしかありません。



このクーデ式望遠鏡の良さは、接眼部が常に変わらず同じ場所で観察できる事です。子供さんや車椅子利用お方が楽に観察できるように考えて作られています。先日も接眼部部品を作っていたのは全てこのクーデ式で使う為のものでした。接眼部は2インチ仕様になっているので、ペンタックスXW40mmなどの2インチアイピースが使えます。それまで使っていたGOTOのK-40やK-60はもう使う必要はありません。24.5mmのツァイスサイズは覗くレンズが5mmほどしかないので、土星などを見せる際にはレンズを探す事になって「あまり良く見えない!」と言われていたようです。私がXWアイピースで土星などを見た限りではとても良く見えましたので、光学系には全く問題ないと思います。しかし2インチアイピースなどが使えるようになって、とても使いやすくなりました。



接眼部は全部で3箇所使えるようになっていますが、先日のファーストライト観望会では直視型の接眼部しか使いませんでした。天頂ミラーを使う接眼部では覗く場所がどうしても高くなって結果的にこれまでの脚立を使った観望に近いものになるので、敢えて直視部分でしか使いませんでした。

このアストロカーがうちに来てから2ヶ月ほどになりますが、これから行う改良で太陽望遠鏡として使うものはじきに終わりますが、もう一つ大切な改良が残っております。この望遠鏡を使う上でネックとなっている事は、OSがWindows MEを搭載したノートパソコンでCATIIでコントロールしている事です。しかしあまりにシステムが古くて時折怪しい動きをしたり電力不足で電源が落ちたりするので、それを大幅に改善すべく、これから制御系を全て入れ替えてスマホでコントロールできるように改良します。将来的には電視観望もできるようにしたいですが、まずはシステムと電源系統を全て入れ替えないとそれもできません。来月に入ってからその改良をしてくれる技術者が来てモーター類のトルクを測定したり必要電力を調べて最適な制御装置を作ってくれます。

それでこれから本格稼働させようと思っていた矢先に東京の感染者が激増したので、8月はとりあえず試運転程度にしてシステムを入れ替えてから本格稼働させようと思っています。

何れにせよ、アストロカーは11月の星フェスでお披露目をしますので、開催ができれば来場された皆さんにご覧いただけます。また当店へお越しの場合には時間があれば見ていただけますが、夜は天候の事もあるので難しいでしょう。

まだ小海町での運用について交渉中なので決まっていませんが、今後は町内外での運用をしていこうと考えています。

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (村上英次)
2021-08-01 14:10:55
おやじねこ様、
これは素晴らしい! と言うかびっくりです。
23年前との事ですので、操作機器など今と規格が合わないものもあり、色々と大変な事もあるのでしょうね。
いつかお尋ねして観望させて頂きたいものです。

私も五藤光学さんの赤道儀やポタ赤を愛用していますが、それらは40年以上前のものです。
それらは使い方が単純なので大した苦労はありませんが。
返信する
アストロカー (おやじねこ)
2021-08-06 10:22:13
村上さん、
ありがとうございます!
確かにビックリですよね。普通は個人で持てる車ではありませんから。今も需要があれば作ってもいいと思いますが、機材が多様化して車で気軽に移動できるようになったので、五藤光学へもそういった要望は無くなったのだと思います。このアストロカーの当時の価格を出せる市町村は無いでしょう。
返信する
札幌のオリオン号 (まいくろ)
2021-08-06 12:39:57
札幌の移動天文車オリオン号(初代)での経験があり、懐かしくなったのでコメントします。
でも遠い過去になってしまい、記憶の混濁があるかもしれませんが、参考になる事があっ
たら幸いです。(ブラッシュアップされるので、古い電気系統のネタは割愛します。)

・運転席から見て南向きに停車させる時には、オリエンテーリングのコンパスに磁気偏角
の印をつけたものを使い、運転手と誘導係の2人で行っていました。
・アウトリガーの敷板は、画像に写っている黄色のものの他に、黒色のものがありました。
舗装はされていても傾斜している場所等では必要でした。
・眼視観察なので、セッティング時は目的星の座標に合わせたら、高度と水平方向の調整
でファインダーのだいたい中心に目的星を捉えて、極軸合わせ終了。
(もしズレてしまっても、観察対象の説明をする天文指導員(大学生のボランティア)が有
線リモコンを使って修正するので、細かいことは気にしない。また、天文車の望遠鏡で星
を覗く時間を少しでも早く、長くするため、セッティング時間を可能な限り短くしたいと
いう理由もあります。)
・人の昇降によって振動を拾ってしまい、観察に影響が生じるため、天文車のステップを
踏まなくてすむよう、上段側に「金属フレームの外付けステップ」、下段側に「木製ステ
ップ」が2つずつありました。(元々のステップの形が長方形でなく台形なので、前者は
同形のものが2つではなく、左右対称形の1対でした。)
・片付けの時、これらのステップや観測室が泥だらけになっていることが多いので、泥落
としのホウキがありました。
・車椅子の利用者については、経験が無いので述べられません。そもそも車椅子が乗るの
かも分かりません。(後継のオリオン2世号では、天文車には乗らないで観察する「バリ
アフリー接眼部」になりました)
・接眼部分は直視部分がなく、すべてプリズム経由で3つの接眼レンズが付いたターレッ
トになっていたこともあり、3つのうちのどのレンズを覗くのかという説明は必須ですが、
大人~高学年…レンズを見下ろす、低学年…水平、幼児…台に乗ってレンズを覗く、とい
うように、観察者の目の高さに合わせてその都度レンズの向きを説明者が変えていました。

天文車を使った観望会が盛会になること、また、天文車自体が長く活用されることを願っ
ています。
返信する
re:札幌のオリオン (おやじねこ)
2021-08-06 18:37:02
まいくろさん、
貴重なコメントありがとうございます!
コメント頂いてアストロカーの運用者の方だとはビックリです。
運用に際して二人でされていたとの事、羨ましいです。私は一人で運転して一人でガイドもしているので、結構忙しくて大変です。このアストロカーも元は二人で運用していたそうです。
最初の駐車の段階では方位磁石を運転席に置いて大体南側に向けて止めていますが、北極星が出ていれば何度か降りて向きを確認して設置しています。
五藤光学に聞きましたが、極軸合わせは撮影などは全く考えていないので、視野に北極星が入る程度でいいそうです。
9月になればスマホでSkySafariでコントロールできるようになるので、かなり使いやすくなると楽しみにしています。
このアストロカーもそうですが、元の運用をされていた方々が望遠鏡のメカニズムには詳しくなかったそうで、細かい事は気にせずに使っていたそうです。
ステップは、ちょっと高さがあるので、外付けでステップがあれば振動を伝えないようにできるので便利かもしれません。しかしとても参考になります。
車椅子の利用は、オリオン号にあったかどうか分かりませんが、うちのは電動昇降式のリフトがついています。でもまだ使った事がありません。ただ最初に説明を受けた際に動きが今ひとつスムーズでは無かったので、今後使うにしても注意が必要です。
確かにホウキやタオル類の清掃道具は入れておく必要がありますね。
アウトリガーは、とても便利ですので必ず使いますが、操作盤から見て左右の平行は水準器で分かりやすいですが、前後が今ひとつ分かりにくいので、もう少し大きな見やすい水準器を取り付ける必要があります。
アウトリガーの敷板は、あの黄色いのしかありませんでした。ただ場所によっては足りないので、もう少し嵩上げできるものを作ろうと考えています。
接眼部は、オリオン号では直視型で使えるK-60とK-40が無かったのですね。この直視型も2インチアイピースが使えるように製作したので、PENTAXのXW40mmが使えるようになって、星の観察には威力を発揮してくれています。天頂ミラーを介しても2インチが使えるのですが、直視の方が子供さんや椅子使用での観察には丁度いい高さなので重宝しています。
前利用者の学芸員の方は、お客さんから「土星などが全然良く見えない!」と不評だったと話していましたが、多分使っていたアイピースが24.5mmの小さなアイピースを使っていたので、見えにくい事もあってそう言われていたのだと考えています。31.7mmのXWで見た限りでは20cmアポらしいイメージだと思いました。
何れにせよ、今後グレードアップして他には無いアストロカーに作り上げて運用していこうと考えています。
今後ともアドバイスいただけると嬉しいです。できれば札幌のオリオン号の運用者とも繋がりを持ちたいと思っております。
返信する
オリオン号での「移天」 (まいくろ)
2021-08-06 21:19:53
札幌市青少年科学館が行っている現在の「移動天文台」については、科学館のホームペー
ジのずっと下をクリックしてください。

初代オリオン号の頃で説明すると、「移動天文台」では、団体の規模に合った数台の口径
8cm赤道儀と天文車で観望します。スタッフは、科学館職員、運転手(外部委託)、天文講
師(社会人)、天文指導員(大学生のボランティア、8cmの台数+1名)なので、最低でも5
人参加します。
季節にもよりますが、薄明中に観望会場に到着して8cmを組み立て、顔が分かるうちに小
グループに分かれ、金星や月を見始めるパターンが多いです。
団体の参加人数が多くても天文車の望遠鏡を1度は覗いてもらうため、一番星が見える前
にはセッティングを完了させることを意識していました。
夜は雲が白く見えるほどの光害たっぷりの環境ですので、本来の口径20cmの威力を発揮で
きていませんでしたが、惑星や二重星はそれなりに見えていたので、よく見えないという
不評はあまり聞いたことがありません。(「よく分かりません」と言われそうなM13等
は見せていない、ということもありますが。)

望遠鏡の性能を十分に発揮できる環境にある天文車が羨ましいです。個人所有だと何かと
大変でしょうが、昔話をする応援ならばできます。
返信する
re:オリオン号 (おやじねこ)
2021-08-08 12:49:39
度々の情報提供ありがとうございます。
やはりあれだけの車両なので5人も必要だったのですね。仙台などの施設もそのようです。一番心配なのは、中に入る際のステップの高さです。上がる時はいいですが、降りる時が暗いので見ていて怖いですね。5人もスタッフがいればそういう部分も見られるので安心です。
今の移動天文車は、三鷹で作られたクーデ式のように見えます。口径も40cmくらいに見えますが、札幌の市内ではその威力も発揮できないでしょう。それももったいないです。
M13に限らずに星雲星団は光害地では皆同じに見えるので、当地ではASIAIRを使った電視観望ができるようにしていきたいと考えています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。