突然ですが、この移動天文台「アストロカー」のオーナーになりました。多分日本では唯一の個人オーナーです。たまたま縁あって他の施設で使われていたものを間接的に譲り受けましたが、正直なところ物が物なので運用方法などで悩んでいます。内部には望遠鏡が入っているのですが、ベースは8トン車両なので、運転するにしても中型以上の運転免許が必要です。たまたま私が持っている免許はこの車両を運転できる免許なので問題ありませんが、今日も軽油を入れにガススタンドへ行きましたが、普通車ではないので大変です。
このアストロカーは、日本でも数台しか残っていない五藤光学が23年前に製作した特殊車両ですが、10台ほど作ったようです。しかし現在運用されているのは3-4台だけのようです。その一台が小海町にあります。昔の天文ガイドなどの裏表紙に画像が載っているのでご覧になった方も多いでしょう。
トップに乗っているドームは、観音開きして空全体を見渡せるように工夫されています。他のアストロカーはドームが回転してスリットが開閉するだけで全開はしません。つまり全開するドームを持っているのはこのアストロカーだけだという事です。もちろんドームは電動で開きます。この画像では閉じていますが、ボタンを押すと片方づつ開きます。この開閉動作は見せてあげると皆さん驚きます。
他にも移動天文台として必要な機能がついています。前後左右で4箇所の油圧ジャッキがついています。これを操作する事で車体全体を持ち上げて振動を内部に伝えないようになっています。
搭載されている望遠鏡は「20cmクーデ式望遠鏡」で、Fl=1800mmのアポクロマートEDレンズを採用しています。見え味はまだ月や土星、木星しか見ていませんが、屈折らしい落ち着いたイメージです。先日のSolar Max用アダプターはこの望遠鏡にSM90を乗せて太陽観測ができるようにします。既にアダプターも仕上がってSM3の90mmエタロンフィルターもあるのですが、ブロッキングフィルターで悩んでいます。FL=1800mmなので、最低限BF30が必要になりますが、それが入手できなくて思案しております。新品なら入手できるのですが、必然的に直視型出ないと使えないので、現行のBF30では眼視では使えません。場合によってはBF15を直視型に改造して使おうと考えています。どこかにレデューサーを入れられれば解決しますが、このクーデ式ではそれができないので、BFだけで解決するしかありません。
このクーデ式望遠鏡の良さは、接眼部が常に変わらず同じ場所で観察できる事です。子供さんや車椅子利用お方が楽に観察できるように考えて作られています。先日も接眼部部品を作っていたのは全てこのクーデ式で使う為のものでした。接眼部は2インチ仕様になっているので、ペンタックスXW40mmなどの2インチアイピースが使えます。それまで使っていたGOTOのK-40やK-60はもう使う必要はありません。24.5mmのツァイスサイズは覗くレンズが5mmほどしかないので、土星などを見せる際にはレンズを探す事になって「あまり良く見えない!」と言われていたようです。私がXWアイピースで土星などを見た限りではとても良く見えましたので、光学系には全く問題ないと思います。しかし2インチアイピースなどが使えるようになって、とても使いやすくなりました。
接眼部は全部で3箇所使えるようになっていますが、先日のファーストライト観望会では直視型の接眼部しか使いませんでした。天頂ミラーを使う接眼部では覗く場所がどうしても高くなって結果的にこれまでの脚立を使った観望に近いものになるので、敢えて直視部分でしか使いませんでした。
このアストロカーがうちに来てから2ヶ月ほどになりますが、これから行う改良で太陽望遠鏡として使うものはじきに終わりますが、もう一つ大切な改良が残っております。この望遠鏡を使う上でネックとなっている事は、OSがWindows MEを搭載したノートパソコンでCATIIでコントロールしている事です。しかしあまりにシステムが古くて時折怪しい動きをしたり電力不足で電源が落ちたりするので、それを大幅に改善すべく、これから制御系を全て入れ替えてスマホでコントロールできるように改良します。将来的には電視観望もできるようにしたいですが、まずはシステムと電源系統を全て入れ替えないとそれもできません。来月に入ってからその改良をしてくれる技術者が来てモーター類のトルクを測定したり必要電力を調べて最適な制御装置を作ってくれます。
それでこれから本格稼働させようと思っていた矢先に東京の感染者が激増したので、8月はとりあえず試運転程度にしてシステムを入れ替えてから本格稼働させようと思っています。
何れにせよ、アストロカーは11月の星フェスでお披露目をしますので、開催ができれば来場された皆さんにご覧いただけます。また当店へお越しの場合には時間があれば見ていただけますが、夜は天候の事もあるので難しいでしょう。
まだ小海町での運用について交渉中なので決まっていませんが、今後は町内外での運用をしていこうと考えています。