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OCR化した7冊

『文化人類学の思考法』
  国家とグローバリゼーション--国家のない社会を想像すら
   国家というイメージ
   国家のない社会
   国家とその周辺
   国民国家というモデル
   グローバリゼーションと国家
『宗教史』
  誰かいるのか?
  それぞれのドア
  最後の預言者
  帰依
『遊牧の思想』
  国家に頼らない遊牧民の生き方--周縁化・併存化・独立国化
   はじめに
   国家なき遊牧社会
   周縁化--国家に包摂される遊牧民
   併存化--遊牧民と国家の通貨
   安全保障の危機にさらされた遊牧民
   独立国化--協働集落による安全保障
   おわりに
『迷いを断つためのストア哲学』
  死と自殺について
『クルマ社会の地域公共交通』
  交通と社会学--理論的示唆の導出--
  交通と社会学のフロンティア
   社会学からみた交通
   社会学は交通問題にどのようなアプローチを行ってきたか
   交通を対象とした社会学研究の分析視角と手法
  事例から得られうる社会学的な示唆
   モビリティの発展と時間概念の変容
   モビリティ確保と社会的包摂
   地域公共交通におけるローカル・ガバナンス
  交通研究及び周辺領域への学術的示唆の導出
   地域公共交通に関する研究
   モビリティ確保に関する交通権等を主題とした研究
   モビリティと交通に関する社会学的研究
『フランス史』
  革命--王政の崩壊
   憲法制定議会--一七八九年五月~九一年九月
    議会の誕生
    バスティーユ襲撃
    農民の革命
    八月四日の夜
    十月の事件
    政治クラブ
    一七九一年憲法
    経済改革
    国有財産とアシニャ紙幣
    宗教的分裂
    国王の逃亡
    立憲議会の終了
   立法議会--一七九一年十月~九二年九月
    好戦論の台頭
    六月二十日事件
    王権の崩壊(一七九二年八月十日)
    最初の恐怖
    ヴァルミの戦い
『二度読んだ本を三度読む』
  『ソクラテスの弁明』プラトン

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三度読む本 『ソクラテスの弁明』プラトン

『二度読んだ本を三度読む』より 『ソクラテスの弁明』プラトン(当時18歳)
 皮肉といえばこの人、ソクラテスである。
 実在の人物だ。
 紀元前三九九年。七十歳の頃、彼は古代ギリシア・アテナイで裁判にかけられ、死刑に処された。
 ソクラテスはなぜ死刑になったのか?
 『ソクラテスの弁明』を読んでも、じつはよくわからない。
 作中の告発者の言葉を額面どおり受け取れば、ソクラテスは「若者を惑わし、腐敗せしめ」「アテナイの神々を否定した」--と、あたかも新興宗教の教祖のごとき扱いだが、これらの罪状は、裁判がはじまって早々にソクラテスによって完膚なきまでに論破されている。
 裁判の場でソクラテスは珍妙な讐え話で告発者をからかい、愚弄し、混乱に陥れる。皮肉屋の面目躍如といったところだ。
 尤も、事件の依頼人相手ならぬ陪審員を務める五百名(一説には五百一名)のアテナイ市民にとっては例えば次のような言葉は少々皮肉がききすぎて、彼らを苛つかせた可能性は否めない。
  私が滅ぼされるとすれば、むしろ多衆の誹膀と猪疑とであり、それはすでに多くの善人を滅ぼしてきた。思うにまた滅ぼしていくであろう。私がその最後だろうというような心配は決して無用である。
 有罪無罪を決める最初の投票は、わずかな票差で「有罪」となった。
 量刑を決定する次の投票の前に、いま一度被告ソクラテスの「弁明」が行われる。
 求刑は「死刑」。対してソクラテスは最初、「迎賓館での食事」を申し出る。これはまあ、冗談、というか、お得意の皮肉である。彼は続いて「下獄」「追放」「罰金」と自らの処罰を順に検討し、結局(友人たちの勧告を聞き入れる形で)罰金刑を申し出る。
 二度目の投票では、しかし、一度目をはるかに上回る者たちが告発者側の主張に同意の票を投じ、「死刑」が確定する。ソクラテスは最後に、
  去るべき時が来た--私は死ぬために、諸君は生きながらえるために。もっとも我ら両者のうちいずれがいっそう良き運命に出会うか、神より外に誰も知る者はない。
 と啖呵を切って裁判所を後にする。
 以上が有名なソクラテス裁判の概要で、最初の問い(ソクラテスはなぜ死刑になったのか?)への答えは最後まではっきりしない。研究者によれば、
 〝ソクラテスは「吟味されない人生は生きるに値しない」という批判的問いかけへの忠誠を貫いたがために命を落とした〟〝彼は「汝自身を知れ」で有名なデルフォイの神託を受け、世界に対する説明責任を果たそうとした〟〝当時アテナイにはびこっていた価値相対主義に反旗を翻した〟などなど、小難しい理屈が色々とついてくるが、要は当時の権力者を批判し、権力者が自らと金持ちの友人連中のために行っている政治の欺陽性(何だか最近も聞いたような話だが)を暴き立てたがゆえに訴えられ、死刑を宣告された、といった辺りが真相らしい。
 告発者の三人は無名の市民であり、彼らの背後に強力な権力者・有力者が存在する事実は当時も当然のこととして囁かれていた。現在で言えば、政権批判をしたために匿名者にネットで攻撃され、晒され、社会的に抹殺、といった感じか。
 当時ソクラテスはアテナイきっての有名人だった。裁判の過程で明かされるのは、日がな一日広場の隅に陣取り、若者たち相手に議論するソクラテスの姿だ。
 来る者は拒まず。どんな相手、どんな問題でも議論のテーブルに上げ、言葉を用いて問題を吟味する。当時の教師の役割は(今もそうだが)「知識を教授すること」だったから、自身で問題を提起させ、議論を通じてその問題を一緒に吟味していくソクラテスのやり方は革命的といえるほど目新しいものであった。
 都市国家アテナイがかつての繁栄の光を失い、没落の一途をたどっていた時期だ。若者たちが将来に不安を抱え、新しい都市国家の在り方、自分たちの生き方を模索していたのは当然だろう。
 ソクラテスはアテナイの若者たちの間で絶大な名声と評判を得た。ソクラテスを師と仰ぐ者たちが出てきたのも、なんら不思議はない。若者たちは既存の権力に疑問を呈し、ソクラテス的考え方に基づいた新たな都市国家の有り様を模索するようになる。
 それこそが、既得権益にしがみつく権力者・金持ち連中の最も恐れるところであった。時の権力者がわざわざ代理人を雇ってまで七十歳の老人ソクラテスを訴えなければならなかったのは、裏を返せば、ソクラテスがよほど目障りな存在だったということだ。
 奴隷制に支えられ、男女差別も甚だしかった古代ギリシアの民主制の是非を問うのは本稿の目的ではない。
 権力者による〝でっちあげ裁判〟の傍聴席に、ソクラテスの弟子を自称する一人の若者がいた。プラトン(当時二十八歳)だ。ソクラテスヘの死刑判決はプラトンに強い衝撃を与え、ほどなく『ソクラテスの弁明』を書かせることになった。はるかエーゲ海に面したバルカン半島の一角で、二千四百年以上前に行われた一裁判の経緯を我々が詳しく知っているのはプラトン青年(当時)のお陰である。
 同時代のプラトンが、先に述べた裁判の裏事情を知らなかったはずはない。彼が受けた衝撃とは、
  --我が師ソクラテスがなぜ祖国アテナイから死刑を宣告されなければならなかったのか?
 というもので、作品の随所からプラトンの困惑と混乱が伝わってくる。
 プラトンが知るソクラテスは、自他共に認める愛国者であった。
  この国は例えば巨大にして気品ある軍馬で、巨大なるが故にこれを覚醒するには何か剌す者を必要とする(中略)私はアテナイにとって虻のような存在なのだ。
 アテナイ市民はこれを「余計なお世話」として、ソクラテスに死刑を言い渡し、惰眠を貪ることを選んだ。権力者への批判が祖国への批判にすり替えられ、「非国民」「売国奴」のレッテルを貼られて犯罪者扱いされるのは、いまも昔も珍しい話ではない。
 ソクラテスは殺され、その後アテナイは政治的混乱のうちに滅びることになる。
  --我が師ソクラテスの人生は無駄だったのか?
 プラトンは自らの疑問に答えるべく筆を執り、『ソクラテスの弁明』を(おそらく一気に)書き上げた。
 良く知られているように、ソクラテスは自分では一冊の本も、一言の言葉も書き残してはいない。〝ソクラテス自身〟と〝プラトンが描いたソクラテス像〟は、実は截然と区別できないということだ。
 中島敦は司馬遷の口を借りて「作ル」ことの業を問う。
  --これでいいのか?こんな熱に浮かされたような書きっぷりでいいものだろうか?(『李陵』)
 『ソクラテスの弁明』を書きながら、プラトンもまた同じ疑問を抱いたはずだ。
 これでいいのか?こんな熱に浮かされたような書きっぷりでいいものだろうか?
 司馬遷(中島敦)がそうであったように、プラトン青年はこう結論する。
 「我が師ソクラテスを描くためには、やはりこう書くしかない。人と違った人間を、違った人間として記述するためには、この書き方しかないのだ」
 『ソクラテスの弁明』作中において、ソクラテスは見事に甦る。己の生死をかけた裁判の場で珍妙な讐え話を用いて告発者をからかい、愚弄し、混乱に陥れる。アテナイ人諸君、と繰り返し呼びかける演説はじつに効果的であり、諧謔を交えた反語的証明方法は、かのシヤーロック・ホームズ氏の決め台詞を彷彿とさせる。
 これぞソクラテス、我らが師と仰いだ人物だ。
 『ソクラテスの弁明』がアテナイ市民の評判を呼んだことは想像に難くない。
 となれば、プラトンのもとにはこんな依頼が舞い込んだはずだ。
  --ソクラテス(の物語)をもっと書いてほしい。
 プラトンはその後、ソクラテスを主人公にした多くの作品を書くことになる。「ソクラテス・シリーズ」とでも呼ぶべき一群の著作によって、プラトンは(古代の)大作家の名前をほしいままにする。

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家族は麻薬

 体重を計ったら、咳の前から10kg減っていた。まともなものを食べないと。
 家族は麻薬。

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