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てらまち・ねっと



 鳥取県が情報公開条例の改正を検討している。
 それは、公開した文書・情報について、全国で皆無の「使用制限」を条例に盛り込むこと。

 つまり、全国学力テストの学校別結果の公開に際して、「特定の学校または学級を識別できる方法による公表または提供をしてはならない」と提供・公表を禁じる「使用制限」を条例に盛り込むという案。

 公権力が情報の自由な流通を制限することは、憲法の表現の自由を侵害する。

 知事の発言については、「知事「微妙な球だ』」、「『違憲』の指摘に言葉濁す」などと報道されている。

 ともかく、鳥取県教育委員会は パブリックコメント を 募っている。
 締め切りは11月20日。

 そこで、まず、報道記事、次に鳥取県のWebページ、そして、特定非営利活動法人「情報公開クリアリングハウス」の運動を紹介する。
 14日までで賛同を募っている (詳しくは後半にリンクあり)

 さらに、今回の問題について、「情報公開クリアリングハウス」の三木さんの解説が一番 詳しく かつ 鋭いと見るので、その説明を抜粋転載する。

 なお、私のブログで鳥取ほかの動きを伝えたのは次。
 10月4日⇒ ◆学力テスト/鳥取県南部町教委が公開。全国初/県教委は非公開で提訴された

 10月5日⇒ ◆学力テスト・公開の動きの情報

その後のことの追記 11月26日ブログ
   ⇒ ◆白熱/学力テストと情報公開条例改正の問題/鳥取/愛知県は

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●情報公開を問う:学力テスト成績非開示 データ使用制限、知事「微妙な球だ」/鳥取 ◇「違憲」の指摘に言葉濁す  毎日新聞 2008年11月7日
 全国学力テストの開示を巡って県教委が開示データの使用制限を検討していることについて、平井伸治知事は6日の定例会見で「適正使用の規定の延長なら現行条例から踏み出すものではないと思う」と述べ、改めて容認する姿勢を示した。一方、表現の自由を規定する憲法違反ではないかという指摘に対しては「(県教委は)非常に微妙な球を投げている」と言葉を濁した。

 平井知事は県教委が開示の方向で議論を進めていることについて「全国でも最先端のことをやっている」と強調。使用制限について「事前に発表する内容を消すわけではない」として憲法が禁止する「検閲」にはあたらないとした。また、県教委が罰則を設けない方針を固めていることを挙げ、「憲法の論議には至らないのでは」と述べた。だが、「違憲ではない」と明言することは避けた。

 また、県教委が「教育的配慮が必要と認められるとき」に使用制限を付けるとした点について、「あいまいかも。もう少し言葉が必要かと思う」と述べ、「教育的配慮が例えば市町村教委に対する配慮であればおかしいかも」とクギを刺した。【宇多川はるか】

●使用制限県議から「不要」 学テ開示 教委説明に異論  読売 11.7
 県教委は6日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を開示する条件として、県情報公開条例を改正し、開示情報の使用制限を盛り込む方針を県議会の各会派に説明した。県議からは「使用制限は不要」などの異論が出ているが、平井知事は同日の定例記者会見で「全国で最も先進的な(学校別結果の)開示を実施するための改正で、県教委の考えを尊重したい」と述べた。改正案を審議する11月議会での論戦が注目される。

 県教委は、開示が不特定多数への公表につながるのを防ぐために、開示にあたって「特定の学校、学級を識別できる方法で公表してはならない」などの条件を付ける改正の骨子を説明した。
 これに対し、県議からは「開示の方向性は評価できるが、学力テスト結果は使用制限をかけてまで伏せなければならないものではない」「教育的配慮をうたうなら非開示にすればよい」などの意見が出た。

 9月議会で開示を求める決議をとりまとめた福本竜平議員は、取材に対し、市民オンブズ鳥取が非開示処分の取り消しを求める訴訟を起こしたことに触れ「判決で非開示判断が違法とされれば、制限をかける正当性も問われることになるのでは」と話した。

 条例改正を巡っては、情報公開制度の拡充を求めるNPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京都)が「(使用制限は)憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがある」として改正に反対する意見書を県と県教委に提出した。
 一方、平井知事は記者会見で「改正案には罰則がなく、制限に強制力はない。憲法違反にはならないと思う」との考えを示した。

     ◇
 県教委は6日、条例改正について県民から意見を募る「パブリックコメント」を始めた。専用用紙は7日から県教委のホームページでダウンロードできるほか、県の県民室、各総合事務所や各市町村役場で配布する。問い合わせは県教委小中学校課(0857・26・7512)へ。

●鳥取県の公式Webページ
全国学力・学習状況調査結果の開示に係る鳥取県情報公開条例の改正に関するパブリックコメント


同ページにある「素案」


同ページにある「現行の条例」


●情報公開クリアリングハウスの意見書
「使用制限」を含む情報公開条例の改正に反対する意見書
                          2008 年11 月5 日
   「使用制限」を含む情報公開条例の改正に反対する意見書
鳥取県教育委員会委員長 山田修平 殿
                特定非営利活動法人 情報公開クリアリングハウス
 記事では「『児童の健全な育成のための教育的配慮が必要と認
めるとき』に使用制限を付ける」との記載があります。仮に条例改正案が「教育的配慮」という用語で「使用制限」をするとすれば、事態はより深刻といわざるを得ません。周知のとおり、表現の自由の違憲審査基準として「明白かつ現在の危険」があります。「教育的配慮」とは、これを用いる人間の教育観( 主観) によって内容が異なり、きわめてあいまいな概念です。その点でも、憲法違反のおそれが強いと思われます。それを「使用制限」の「基準」として使うことは、公開された情報の公表、提供等の使用に対して、請求者に必要以上の「萎縮効果」を及ぼすことになります。

 確かに、貴県による「使用制限」が罰則等の強制措置を伴わず、「適正使用」の規定に基づく「要請」にとどまるものであるならば、「検閲」には当たらず憲法21 条に違反するおそれは低減するとの見方もあります。しかし、そのように「使用制限」の実効性が担保されないならば、県民や議会までも巻き込み、膨大なコストをかけてまで、わざわざ条例を改正する必要はありません。現行条例の「適正使用」の規定で十分に対応できるはずです。

 それにもかかわらず、条例を改正するのは情報公開に対する「過剰反応」といわざるを得ません。・・


●特集のページ  全国学力テストの情報公開に関するガイドマップ
「 いま情報公開に関して社会的関心がもっとも高いテーマです。
 しかし、関心が強すぎるあまり、公開と非公開の双方に「過剰反応」が見られるのも事実です。
 この問題を冷静に読み解くために、このコーナー(リンク集)をつくりました。ぜひご活用ください。 」

「 ○意見書への賛同署名を集めています。 メール署名
             (11月14日までに集約してお名前・肩書きを掲載して再度提出します。ご協力ください!)」

●情報公開クリアリングハウス理事(三木由希子)のブログ
 三木さんは、入手した委員会の資料を掲載している。
 鳥取県教育委員会 委員協議会資料(平成20年10月30日)


●情報公開にまつわる日々の出来事-情報公開クリアリングハウス理事日誌
     三木由希子さんのブログ から 転載
 鳥取県 学力テストの公開をめぐり、公開情報の使用制限をする情報公開条例改正検討 鳥取県では、学力テストの市町村別・学校別のデータの情報公開請求に対し、県教委は不開示→請求者から不服申立て→審査会が公開を求める答申→しかし県教委は答申に従わず不開示維持→情報公開訴訟提起、となりかなり問題になっている。10月には県議会が開示を求める決議を行い、不開示を維持したい県教委と一部の市町村教委VS情報公開請求者、県議会という様相を呈してきた。

 この一連の流れから、県教委は情報公開圧力の高まりに抗することは困難と思ったのか、学校別、市町村別のデータを公開するための条件整備として、公開情報の使用制限をする情報公開条例の改正の検討に着手。
  ・・・(中略)・・・
 10月30日の県教委の「委員協議会資料」を入手したので、検討されている条例改正の内容を確認。改正が検討されているのは、①開示義務の規定での不開示事由の改正、②制限付き開示に関する規定、③罰則、④適用範囲、の4点。

 ①の開示義務の規定は、
鳥取県情報公開条例9条2項7号
小学校の児童又は中学校の生徒の全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果であって、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るもの
 
 という規定を 

小学校の児童又は中学校の生徒の全国的又は全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果であって、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るもの

 に改正するというもの。今回の学力テストの市町村別・学校別データの公開については、県基礎学力調査ではすでに同様のデータを公開していて、その公開のために平成15年6月に情報公開条例を改正し、不開示事由の追加を行っていた。この改正、まったくもって見落としていた。

 条例の解釈・運用指針をみると、9条2項7号(基礎学力調査結果に関する情報)の趣旨は、

 本号は、小学校の児童又は中学校の生徒の心情に対する配慮並びに教育行政の適正な遂行に対する支障の防止の観点から、全県的な学力の実態を把握するため実施される試験の学級ごとの集計結果で、児童又は生徒の数が10人以下の学級に係るものにつき非開示とすることを定めたものである。
 5号及び6号の解釈運用でも可能であるとの考え方もあるが、情報公開制度の明確化や実施機関の裁量を限定するために、平成15年6月の改正により新たに非開示条項として規定したものである。

 となっている。

 ②の使用制限付き開示の規定は新設する規定で、10条の2を設け、
・実施機関は、開示請求にかかる公文書に全国学力調査の調査結果に関する情報が含まれる場合であって、児童等の健全な育成のため意教育的配慮が必要と認めるときは、開示請求者に対し、当該情報の使用に関し、特定の学校又は学級を識別できる方法による公表、提供をしてはならない、などの制限を付した上で開示決定することができる。
・開示請求者は、上記制限に反して当該情報を使用してはならない。

 とするという。

 ③の罰則は、過料か罰則を設けないかが教育委員会では検討されていたが、報道によると罰則は設けないことにしたという。④の適用範囲は、2008年度までの学力テストは従来通り不開示、2009年度の学力テストから改正条例を適用して開示することにする

となっている。

 県基礎学力調査に関する情報公開条例改正から、「教育的配慮」による特定情報に対する不開示事由が条例上、明文化されていたところに、今回の学力テストの関連データの取り扱いをめぐり、不開示事由の改正を行うとともに、次は公開情報の使用制限により、情報公開と教育的配慮のバランスをとるというのが、県教委の条例改正の趣旨のよう。10月21日に行われた「全国学力・学習状況調査の取り扱いに係る市町村(学校組合)教育行政連絡協議会」の概要によると、使用制限規定を設けることについて、以下のようなやり取りがある。

○市町村教育長:情報公開条例は、その趣旨から開示請求者に対して趣旨に反するため得た情報について制限を加えることは無理だと解釈しているが、法的に可能なのか。

●事務局:そこを知事部局と検討している。恣意的に制限は出来ないので、配慮を求める、情報開示を受けた者だけに限定して、情報の意味合いを考慮し、子供たちへの心情への配慮を条件とする程度でどうか。請求できる人物像、目的、利害関係等での制限は不可能。必要最小限のぎりぎりのところでやる方向。

 事務局の説明は非常にある意味自覚的。ただ、それでも公開情報の使用制限を規定し、特定の学校又は学級を識別できる方法による公表、提供をすることを禁止することによって情報公開を行うことは、情報公開条例の原則に照らせばありえないと思う。

 それは、情報公開条例は請求権者に等しく公開請求をする権利を保障したものであり、手続的には請求者に対して情報を公開することになるものの、公開される情報はだれが請求しても同じように公開される情報だからだ。制度上は、請求権者にはだれでも同じ情報を公開するとしつつも、その情報を公開を受けた人間が公表してはいけないというのは、どう考えても論理破綻している。何より、情報公開条例は目的規定にもあるように、情報の公開を通じて県民参加による開かれた公正な県政の推進をするためには、公開された情報が請求者一人の手元にとどまることを想定しているのではなく、公開された情報が利用(分析、公表、提供等)されることが当然に予定されているものだ。

 もう一つは、今回は使用制限に反した場合の罰則規定の導入は見送られているが、使用制限には従いませんという意思表示をあらかじめした請求者に対しては、どうするのかという問題がある。請求目的は問われないし、それによって公開の範囲が変わることはあり得ないが、使用制限の遵守を拒んだ場合は、利用目的が不当ということに条例上はなるのだろうか。そうすると、開示決定等の処分はどのように行われることになるのか。また、使用制限そのものが行政処分に該当することになるのだろうか。行政の処分行為がどのように及ぶことになるのか、いささか不透明過ぎる。

 学力テスト限定の規定が検討されているが、それにしてもやろうとしていることは、ぎりぎりの範囲でなんとか、というようなものではないと思う。そもそも、学力テストのデータの公開は、情報公開制度の問題ではなく、政策の問題ではないかと考えている。確かに、情報公開制度による公開請求があれば、不開示事由に該当しない限りは情報は公開されることになるけど、問われるのは県教委なり県などが作成・取得した情報をもとに政策的に何をしているのかということではないか。学力テストの是非はともかく、なぜ学力テストに参加をしたのか、という意味を十分に考えるべきではないかと思う。ところが、情報公開条例を改正して公開、という話となると、はっきりいって、超迷惑だ。そもそも最近、特定の情報の公開や特定の請求者絡みで情報公開条例の改正という話が多すぎる(`_´)

 一応、11月上旬から中旬でパブリックコメント、11月14日の定例教育委員会で方針の正式決定、知事に改正依頼、11月定例県議会に改正条例案提出の予定だという。知事部局は県教委と調整しているようなので、このままだとおそらく改正条例案を提出するだろう。そういえば、この知事には総務部長時代と副知事時代に会っているような気が。それでもって、学力テストデータの開示を求める決議をした県議会はどうする?原則なき議論だけは、避けてほしい。


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