古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

「通貨」を知れば世界が読める(2)

2011-10-28 | 読書
1997年という年は、日本では不良債権問題がピークに達しつつあった年である。株価も大暴落した。こうした年で、ヘッジファンドと彼らに資金を託していた日本の投資家たちも、日本国内での損失を補填するため資金が必要となった。損失補填のためのジャパン・マネーの大逆流が始まった。アジヤからの資金の大撤退が始まった。投資撤退は、すなわち対象国通貨の売り、そうしてアジヤ通貨の大暴落に歯止めがかからなくなった。
IMFは通貨危機の当事国たちに対し一層の金融引き締めを求めた。これは、既にバブル崩壊の打撃に苦しんでいる国々にデフレの追い討ちをかけるようなものだった。
何故そうなったか。IMFは1944年のブレトンウッヅ協定によって生まれた。パックス・アメリカーナ」の通貨的側面の担い手として誕生したのである。現に、IMFの本来的な役割は国際収支難に陥った諸国への短期的な金融支援である。端的に言えば、ドル不足に陥った諸国へのつなぎ融資である。
そこには、あくまでも世界がドルを必要としドルが世界を回すという前提がある。アメリカ以外の国々に対して、ドル不足をきたさないよう厳しく対外収支を管理するよう要求し、それができなくなった時にはしぶしぶ乗り出してドル資金を融資する。これがIMFの基本的本務だったのだ。

アジヤ通貨危機はもちろん、日本にもダメージを与えた。なかなか浮上のきっかけをつかめない日本は低金利政策を採り続けた。日本が超低金利を続けていたため、他国も金利を抑えざるをえない。

世界各地で金利が低い状態となっていれば、投資によって資金を増やすのもまた、難しくなる。特に、常に高いリターンが求められる投資銀行にとっては、資金があっても投資先がないという困った状態に陥ってしまう。(サブプライムローンの)証券化という危険な錬金術に踏み出してしまった。
リーマン・ショックの原因もまた、日本にあったのだ。
こうしてみていくと、円という通貨がいかに世界を動かしてきたかがわかる。しかもそれについて無自覚なわけだから、円はなかなかハタ迷惑な通貨でもある。

(以下、1ドル50円を予想する理由をドルの側と円の側から。)
ドル側の事情。2010年版の「一般教書演説」でオバマ大統領は、「向う5年間でアメリカの輸出を倍増させる」と輸出倍増宣言を打ち出した。
リーマン・ショック以前までのアメリカの経済は、ITと金融が支えた。だが、それが崩壊してしまった以上、輸出立国を目指そうということである。輸出立国は通貨政策上は「ドル安」のほうがいいということになる。「輸出倍増宣言」はドル安容認宣言である。
TTPもまたアメリカのこうした戦略の一環。米国の輸出を増やそうという仕組みで、日本の輸出を増やそうという仕組みではない。この仕組みは日本が加入しないと、その狙いを達成できない。だから、日本の参加を米国は要求し、米国の要求に素直な民主党政権は、加盟を急いでいる。関税がゼロになっても、1ドル50円になったら、輸出増進の効果はない。・・私見です。)
円の側では、2011年4月現在、東日本大震災の影響により、東北、北関東を中心に企業の生産活動全体が停滞している。原発事故にともなう停電と節電により、工場の操業にブレーキがかかっている。しばらくはこの状況が続きそうだ。まさに経済的大ピンチである。
経済の先行きは分からない。財政事情は悪化が必須だ。そして金利は低いまま。超円安に転じても不思議はない。ところが、・・・(世界最大の債権国日本の通貨は)そうはなっていない。ここにも隠れた機軸通貨の秘めたる威力が現れている。


 以上、ポイントを抜書きしましたが・・・さて通貨から世界が読めるとお感じでしょうか?

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