古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

新興衰退国?ニッポン

2012-09-26 | 読書
『新興衰退国ニッポン』(金子勝・児玉龍彦著、2010年6月刊、講談社)というセンセーシヨナルな書名の本を図書館でみつけました。
著者の一人、児玉さんは国会で熱弁をふるったので、ご存知だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=pVCP0wFD_ec&feature=fvst
 このお二人、以前「逆システム学」(岩波新書)を著しています。その折の感想文を探して見ました。6年半ほど前の拙文です。
http://d.hatena.ne.jp/snozue/20060203

この本は、「逆システム学」を、近年の日本の経済と社会に実際に適用して考察した結果を記した本だなと感じました。
 つまり、「現場で起きていることは、理屈が合わないように見えても理屈どおりに起きている。理屈が合わなく思えるのは自分の理屈が間違っている。だから現場を見ることで、自分の理論を検証できる。「見る」というより「看る」。患者に注射をしたら、その注射が効果があったか看る。効果がない場合、患者が間違っているのでなく、注射が間違っている。」という考えで、第1章の「医療」以下、「貧困」、「雇用」、「介護」、「公共事業」、「産業」、「金融」、「知のルール(コンピュータ)」、最終章の「技術開発」を論じています。
 興味ある方は、ご一読ください。
 ここでは、第9章「科学技術立国の黄昏」の一部を紹介します。
【ヒトの遺伝子がすべて読まれたことにより、薬の標的となるたくさんの蛋白質が明らかになった。こうした蛋白質の構造を決めるのは、放射光施設のスプリング8であり、それに作用する薬を設計するのはスパコンである。今日では、インフルエンザの薬のタミフルも、ガンの薬のグリペックも、コンピュータで設計されている。例えば、大きな蛋白質である抗体医薬品の設計には、今のコンピュータでは、1個について数ヶ月かかってしまう。それを数日でできるようにして数種類から数十種類を比べられる計算機が求められている。日本の制薬企業は3年間で2兆円の現金を、海外のベンチャー買収にかけた。その多くは、分子標的薬とよばれるコンピュータ支援をもとにした薬を作っている会社である。】
【日本の科学技術は、老人向けの薬を生み出し、世界に輸出することに成功してきた。・・・こうした新薬の特許が2010年をピークに次々と切れようとしている。
 ところが、日本の製薬企業が、新薬の開発に苦しんでいる。日本の制約企業は、カビや細菌から薬を作る伝統的な製法には長けてきた。しかし、21世紀になりヒトのゲノムが解読され、次の標的になる蛋白質がすべて分ってきたので、分子標的薬という新しいタイプの薬が中心になっている・・・その分子標的薬が作れないというのだ。】
【危機感を持った我が国の制約会社の経営陣は、2007年頃から、雪崩を売って外国の製薬企業ごと薬を買い付けるという強硬手段に出た。・・武田が、バルケードというガンの分子標的悪をもっているアメリカのミレニアム社を、9000億円で買収した。続いて20008年、エーザイはガンの抗体医薬品を作っているMGIファーマを4300億円で買収した。・・・・こうして3年間で、日本の製薬企業は、2兆円を超える現金をかけ外国企業を買い付けている。そのほとんでが、分子標的薬をもっている会社である。】
【薬の開発プロジェクトは、50個のうち1個が成功し、残りの49個は失敗することで知られる。しかし、自分で開発すれば
その50個のノウハウが残る。外国の薬を買ってしまえば、1個の薬が入手できるだけであり、ノウハウは得られない。しかもベンチャー企業の多くは、敵対的買収を受けると、それまでの経営者や主だった研究者は代謝してしまう例も多い。決して技術開発のノウハウまでは手に入らないのだ。】
 こうした話題が多く載る本でした。


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