『日本のリアル』(養老孟司著、2012年8月刊、PHP新書)なる本を東区図書館のおすすめの本の棚に見つけ借りてきました。著者が4人の実務家と対談することで、日本の実情(リアル)を知ろうという本でしたが、意外に収穫の多い本でした。
第4章“「林学がない国」の森林を救う“では、森と木の研究所代表の鋸谷茂(おがや・しげる)さんとの対談で「間伐」を語っています。
「間伐」については、長兄(故人)が一時材木工場で働いていたこともあって「割り箸」は間伐材を使うのだから、みんなもっと使うべきだ」と話していたのを聞き「そんなものかな」と思ったぐらいで、詳しいことは何にも知りませんでした。
Y「高知県は森林がとても多い県ですが、その8割はスギ・ヒノキの人工林になってしまっている。和歌山県や奈良県の山が人工林になっているのは理解できるんですよ。平安京や平城京に近い場所ですから、十津川村の辺りでは、平安時代にすでに植林が行われていたという記録もありますから」
O「そもそも都を平安京に移したのも、平城京周辺の樹を切りつくしたからです」
O「2011年から、間伐材を出さないと国の補助金がつかないという制度が始まったんです」
(しかし、間伐はただやればいいというものではない)と以下、かんばつについて語る。
O「現在日本の森林の4割は人工林になっており、約千万ヘクタール、スギやヒノキが終えられています。その多くでは、間伐が適切に行われておらず、木がヒョロヒョロと細く育ってしまっています。
間伐が遅れた森では、木と木の枝葉がぶつかりあってしまうため、それぞれの木の光合成両が少なくなるうえ、地中の養分の奪い合いが起き、木は太ることが出来ません。木の上部は枝葉で密閉され、林のなかは暗くなり、下草も生えません。その状態を「死の森」と表現することもあります。
雨が降るたびに森の表土が流出する。表土は、長い年月をかけて森林の植物や昆虫や動物や微生物が作り上げたもので木が成長するための養分として欠かせないものですが、下草や落ち葉のない場所では、雨が直接地面を叩くため、表土がどんどん流されていきます。
養老先生が「健全な森林、健全な木はどのようなものですか」と質問されたとき、林学会には健全な森林や木に対する定説がなく、林学者の一人が「日本には林学がなかったと言わざるをえない」とおっしゃっていました。
O「生物学の根底には、西洋の思想が反映されています。その思想とは、個が先にあり、世界は個の集合である、という考え方です。けれども、本当の生態系はそうなっていない。先に生態系があってそれから部分としての生き物が存在している。
健全な森とは、健全につながりあった生態系と言うことです。
生命についての厳密な定義は難しいが、むしろ生態系こそ生命だと考えるべきでしょう。」
「たとえば、生物の細胞の中にあるミトコンドリヤは、外から細胞の中に入ってきて住み着いた別の生物です。葉緑体も外から細胞の中に入ってきた。人間も混成の生き物です。精子に鞭毛が生えている。あれはもともと別の生き物で、発疹チブスの病原体が一番近い。鞭毛の根元にはミトコンドリヤがついています。つまり精子は三位一体なんです」
O「人工林の間伐は、まさにその健全な生態系を保つために行うのです。
枯れた木とか、枯れる寸前の木だけ倒して間伐したと言い、それに対して補助金が出たりする。労力とお金の無駄です。
そうではなく、下草が生えてくるような間伐を行えば、木の合間合間から中層木や下層木となる広葉樹が生え、この広葉樹の落ち葉が腐植土になって上層木の養分になりまた上層木の伐採した後空間を補充します。
さらに植物が豊かになれば、昆虫も増えます。キツネやタヌキなども見られるようになる。天然の針葉樹林はまさにこうなっている。こうした生態系を確保してこそ健全な森で、私の目指す科学的な間伐法です。
木の高さを太さで割った比率を形状比というのですが、この形状比が70以下の木は雪害の被害が少ない。
人工林では、間伐を怠ると、四方の木がふれあい、木々の成長が阻まれます。森の木をすべて集めて胸の高さで断面積を合計した値を胸高断面積合計と言いますが、スギやヒノキの場合は、1ヘクタールあたり100平方mに近づくと木の成長は止まり不健全な森になっています。」
このように、間伐を語りながら、日本の林業に留まらず、哲学を語っています。
第4章“「林学がない国」の森林を救う“では、森と木の研究所代表の鋸谷茂(おがや・しげる)さんとの対談で「間伐」を語っています。
「間伐」については、長兄(故人)が一時材木工場で働いていたこともあって「割り箸」は間伐材を使うのだから、みんなもっと使うべきだ」と話していたのを聞き「そんなものかな」と思ったぐらいで、詳しいことは何にも知りませんでした。
Y「高知県は森林がとても多い県ですが、その8割はスギ・ヒノキの人工林になってしまっている。和歌山県や奈良県の山が人工林になっているのは理解できるんですよ。平安京や平城京に近い場所ですから、十津川村の辺りでは、平安時代にすでに植林が行われていたという記録もありますから」
O「そもそも都を平安京に移したのも、平城京周辺の樹を切りつくしたからです」
O「2011年から、間伐材を出さないと国の補助金がつかないという制度が始まったんです」
(しかし、間伐はただやればいいというものではない)と以下、かんばつについて語る。
O「現在日本の森林の4割は人工林になっており、約千万ヘクタール、スギやヒノキが終えられています。その多くでは、間伐が適切に行われておらず、木がヒョロヒョロと細く育ってしまっています。
間伐が遅れた森では、木と木の枝葉がぶつかりあってしまうため、それぞれの木の光合成両が少なくなるうえ、地中の養分の奪い合いが起き、木は太ることが出来ません。木の上部は枝葉で密閉され、林のなかは暗くなり、下草も生えません。その状態を「死の森」と表現することもあります。
雨が降るたびに森の表土が流出する。表土は、長い年月をかけて森林の植物や昆虫や動物や微生物が作り上げたもので木が成長するための養分として欠かせないものですが、下草や落ち葉のない場所では、雨が直接地面を叩くため、表土がどんどん流されていきます。
養老先生が「健全な森林、健全な木はどのようなものですか」と質問されたとき、林学会には健全な森林や木に対する定説がなく、林学者の一人が「日本には林学がなかったと言わざるをえない」とおっしゃっていました。
O「生物学の根底には、西洋の思想が反映されています。その思想とは、個が先にあり、世界は個の集合である、という考え方です。けれども、本当の生態系はそうなっていない。先に生態系があってそれから部分としての生き物が存在している。
健全な森とは、健全につながりあった生態系と言うことです。
生命についての厳密な定義は難しいが、むしろ生態系こそ生命だと考えるべきでしょう。」
「たとえば、生物の細胞の中にあるミトコンドリヤは、外から細胞の中に入ってきて住み着いた別の生物です。葉緑体も外から細胞の中に入ってきた。人間も混成の生き物です。精子に鞭毛が生えている。あれはもともと別の生き物で、発疹チブスの病原体が一番近い。鞭毛の根元にはミトコンドリヤがついています。つまり精子は三位一体なんです」
O「人工林の間伐は、まさにその健全な生態系を保つために行うのです。
枯れた木とか、枯れる寸前の木だけ倒して間伐したと言い、それに対して補助金が出たりする。労力とお金の無駄です。
そうではなく、下草が生えてくるような間伐を行えば、木の合間合間から中層木や下層木となる広葉樹が生え、この広葉樹の落ち葉が腐植土になって上層木の養分になりまた上層木の伐採した後空間を補充します。
さらに植物が豊かになれば、昆虫も増えます。キツネやタヌキなども見られるようになる。天然の針葉樹林はまさにこうなっている。こうした生態系を確保してこそ健全な森で、私の目指す科学的な間伐法です。
木の高さを太さで割った比率を形状比というのですが、この形状比が70以下の木は雪害の被害が少ない。
人工林では、間伐を怠ると、四方の木がふれあい、木々の成長が阻まれます。森の木をすべて集めて胸の高さで断面積を合計した値を胸高断面積合計と言いますが、スギやヒノキの場合は、1ヘクタールあたり100平方mに近づくと木の成長は止まり不健全な森になっています。」
このように、間伐を語りながら、日本の林業に留まらず、哲学を語っています。