古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

外人投資家のアベノミクス観

2013-02-20 | 経済と世相
19日午前、県図書館へ行き、新着の雑誌をチェックしていたら面白い記事が目にとまりました。VOICE3月号に載った「日本は金融緩和をただちに止めよ」です。
 ジム・ロジャースというという投資家(投機家?)が経済記者に日本経済を語っているのですが、この人、1942年米国生まれ、73年、ジョージ・ソロスとともに投資会社クオンタム・ファンドを設立、10年間で4000%を超える驚異的なリターンを実現。シンガポール在住とのことです。
【―――日本経済の現状について、どのような認識ですか・
 株と経済の話は別ですが、まず株の話・・・安倍氏が首相になることが明らかになった段階で、私は日本株を買い増しました。彼は紙幣をさらに印刷する、と明言したからです。
 もちろん、そのこと自体は世界経済にとっていいことではありません。しかし、・・・安倍氏が紙幣を印刷するといって実際にそうすれば、間違いなく株式市場に影響します。紙幣を刷って株に影響がなかったことは、これまで一度もないのです。
 紙幣の増発はある程度、日本経済を上向きにするのに貢献するでしょう。しかし、いまどの国も紙幣を刷りに刷っていることは懸念材料になります。
―――通貨安は経済にとってマイナスという向きもあります。アベノミクスについては、どのような印象でしょうか。
 通貨安がプラスになる人はいますが、日本人全体について、それは良いことではありません。当たり前ですが、物価が上がるからです。一般国民にとってメリットはないでしょう。もちろん輸入業者にとってもプラスにはなりません。
 当然のこと、輸出業者はその恩恵にあずかります。少なくともしばらくの間は。しかし、通貨価値が下がることは日本人すべての物価が上がることになりますから、結局のところ、いずれの企業にとってもビジネスコストが上昇することになります。
――日本に望ましい為替水準があるとすれば、それはどのくらいのものですか。
 誰にとって望ましいというのでしょうか。一般の日本人にとっては、1ドル=50円が望ましいでしょう。輸入業者にとっても円高がよい。逆に輸出業者にとっては当然、1ドル=100円、いや200円の方が良いというに違いありません。繰り返しますが、望ましい為替水準というのは「誰にとって」ということが重要です。(以下略)』
 さすがにソロスの仲間だけあって、明快な説明です。
 グローバル化経済にあっては、統計上の輸出入の額だけ見て、競争力があるとかないとか議論しても意味がないと先日述べましたが、為替も円が安いから日本に有利だとか不利だとかいう議論は意味がない。安くなっても高くなっても、それにより得をする人、損をする人がいるわけです。日本に益があるとしたら、日本人全体の人数の中で、得をする人が損をする人より多いという意味なのか。それとも得をする人の得をする金額の合計が、損をする人の損をする合計額より多いという意味なのか。
 アベノミクスで、もし円を増発すれば、円安に動き、輸出企業の株価が上がる。株を持っている人は儲かります。しかし、持っていない人には株高は無関係です。ガソリンや輸入食料が値上がりして損するだけです。
 だから、「自分は日本の株高で儲けさせてもらう」が、総合的に考えると、「日本は円安で損をするのだ」と、ジム・ロジャース氏は言うわけです。まことに明快です。
 そこでです。「なぜ安倍さんは、アベノミクスで円安に導こうとするのか」。
 経団連の有力企業は輸出企業です。そしてそれらの企業は自民党のスポンサーです。それら企業の幹部といつも付き合っていると、以下のような考え方に染まってしまいます。
「日本の大企業、特に輸出企業の収益が上がると、従業員の賃金が上がり、下
請け企業の収益も上がって、日本全体の収益が上がる。日本の輸出大企業に良いことは、日本国民にとって良いことだ」。
 しかし、大企業の収益は、必ずしも国民全体に広がっていかないのが、グローバル化経済の時代です。そこで、ジム・ロジャース氏は、日本国民のことを思うと、「金融緩和を止めるべき」とこの対談で述べています。