古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

何万光年ってどう測る?

2006-05-07 | 放送大学
 マラソンの旅の後は「宇宙科学」のお勉強です。6日,7日は放送大学愛知学習センターでのスクーリングでした。講師のS先生は、国立天文台から、この4月、名大教授に転勤されてきた方です。ドクターを広島大で取得されたそうで、広大時代は、今はなくなったが、海辺の美しい町の研究所で3年を過ごされたそうです。
 たまには,何万光年という浮世離れした話を聞くのも良いものです。初日の講義、こんな話がありました。
 「小柴先生は、定年退職の1月前、大マゼラン星雲の超新星の爆発によるニュートリノを観測して、ノーベル賞を受賞した。大マゼラン星雲は南半球でしか見られない。つまり、カミオカンデに届いたニュートリノは地球を貫いてカミオカンデに到達したもの。しかも、大マゼラン星雲は地球から16万光年離れています。16万年前、小柴先生の退職前に到達すべくニュートリノは、地球に向けて出発したのです。もし、少し遅れて退職後に地球に着いたら、別の人がノーベル賞だったかもしれない。先生は、悪運が強かった?」
 まぁ、悪運かどうかは別として、人生の成功には「運」が必須と言うことでしょう。
勿論、「運」だけで、成功するわけではありません。
 
 ところで、16万光年とかいう星までの距離は、どうやって測量するのか?
 すぐ考えるのは、いわゆる三角測量です。ある星の年間視差(地球の公転により生ずる、ある星の方向(角度)の測定値の差の年間最大値)と地球から太陽までの距離の積で求めれば良い。
 しかし、最新の天文台でも、この角度の測定限度は、1秒角(1度の3600分の1)です。1秒角と太陽・地球間の距離の積を1pc(1パーセク)と天文学では言うそうですが、これは3.26光年です。つまり、3.26光年以上の距離の測定は三角測量では無理。宇宙の大きさを考えると、三角測量で測定できるのは地球の近くだけです。勿論、測定を繰り返すことで、もう少し視差角度の精度を上げることは出来ますが大勢に変わりはない。
 20世紀のはじめ、距離測定に二つの革命が起りました。
 一つは、リーヴィットという女性天文学者が、小マゼラン星雲の中にある多数の変光星(周期的に光度が変化する星)を研究しました。そこで、変光星の光度と変光周期とが関係することを見つけたのです。これは大発見でした。つまり、
「本当の明るさは変光周期で決定できる(明るい星はゆっくり変光する)。周期が同じなのに見かけの明るさが違うのは距離の違いである。」
 北極星も、実体は二連星で主星は、周期数日の変光星だそうです。

 もう一つは、ヴェスト・スライファーなる学者の「赤方偏移(遠ざかる星の光の波長が赤方に偏移する)の発見です。これは音のドプラー効果と同じ現象が光にも生ずる現象です。これを、ハップルの法則「天体の後退速度(地球から遠ざかる速度)は、地球からの距離に比例する」と、組み合わせると星までの距離が分かる。
 後退速度の測定と、変光星の周期測定が、20世紀の天文学の観測革命でした。

「小難しい話は面白くない」という方へ。ではこう言う話も講義にあったのですが・・・
 水星と金星、夜空の中天に昇らないのは何故か?
 「夜空の中天にあることは、地球から見て、太陽の反対側にあることを意味する。水星、金星は地球より太陽に近い。つまり、常に太陽側で反対側に来ることはない。」

 二日目は、S先生の研究課題「宇宙のマイクロ波背景放射からビッグバン後40万年の宇宙の大きさと宇宙空間の性質を明らかにする」。いわゆる宇宙の暗黒物質のお話でしたが、割愛します。