古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

続・ドルリスク

2005-02-23 | 読書
 【いわゆる「失われた10年」,その原因は銀行の機能不全であった。】
 この種の主張は筆者以外にも、多くのエコノミストが述べているが、この本の著者
は「銀行の機能不全とは何か」から始めている点が類書と異なる。
 即ち,リスクをとる企業が存在しなければ、経済の成長はありえない。そのリスク
をとる企業に資金を供給するのが銀行に求められる機能だという。
 バブル以前までは、こうしたリスクマネーを銀行は供給してきた。土地を担保にす
れば、事業リスクを気にせずに、リスクマネーの供給が可能であったからだ。ところ
が、バブル以後,土地は値下がりすることもある時代になり、事業リスクの判定をし
ないと貸し出しができなくなった。土地を担保に取ることだけ考えて貸出ししてきた
ので、事業リスク判定のノウハウを、日本の銀行は身につけていなかった。従って、
バブル破裂以後、銀行はリスクマネーを供給しなくなった。
 昨年後半から本年3月まで、実に40兆円に近い金額のドル買い介入を政府・日銀
は行った。
 実は、この金が米国債購入に回り,米国の国債を売った企業やファンドが、資産バ
ランスを考えて米国以外の国の投資に回った。その一部は日本の株式の購入にも回っ
た。
 リスクを取る者は、リスクがあっても耐えられるよう資産の分散をする。米国資産
だけでなく,欧州も日本にも資産配分を考えるのである。
 つまり、日本のドル買い資金が回りまわって、日本株の外人買い資金になって、日
本の景気を刺激した(勿論、中国にも同様な資金循環が起こった)。直接日本の金融
機関がリスクマネーを供給すれば、景気は刺激できるのだが、日本の金融機関は一切
リスクを取ろうとしない!ハゲタカファンド(あまり良い言葉でないが)の手を煩わ
せることになる。著者は言う。【わが国にとっては自国の金融システムが機能しない
なかで、海外の金融機関の力を借りた】
【金融緩和を受けて貸し出しが増加し、資産価格上昇などの効果が見られれば、そも
そも介入は今回のように大規模にならなかったはずである。金融システムの機能不全
により国内の貸出しや地価・株価に与える影響が弱まり、円安効果も限られることか
ら、量的緩和の強化と介入の継続が必要になり・・】
 
経済・金融をグローバル化した結果、世界中の資金の循環を考えないと,景気の動
きは分からないと愚考する所以です。