古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

日本経済のバランスシート

2005-02-11 | 読書
 日本経済全体を一つの会社とみなした場合、その損益計算書とバランス・シートは
どうなっているだろうか?こんな途方もない計算をした人がいる。新潟大学経済学部
助教授の桜内文城さんです。
 以下,桜内さんの著書『公会計革命』(講談社現代新書)からの抜書きです。
 筆者は,バランス・シートは生産勘定、処分・蓄積勘定、調整勘定の三分野で作成
すべきと述べます。抜書きですから、これをみてもどうしてそうなる?と分からない
かもしれませんが、興味を感じられたら同書を参照ください。
 平成14年のデータを基に、算出した結果です。
1. 生産勘定とは、平たく言えば、与えられた資本(生産設備)と指示された仕事
の仕事範囲で、どれだけ効率よくお金を稼いだか」ということを示す。
 生産勘定を見ると,国内のすべての売上げを意味する総需要は914兆7503億
円、これらを売上げを獲得するためにようした費用、すなわち中間投入が421兆3
541億円。従って、生産勘定の収支尻である付加価値、即ち国内総生産(GDP)
は、493兆806億円である。(誤差3156億円)
 平成14年、われわれ日本国民は不景気やリストラにもめげず、持ち前の勤勉さを
発揮してせっせと稼ぎ、493兆806億円ものお金を稼いだ―――というわけであ
る。
2.ではこうして苦労して稼いだお金は、どのように使われたのであろうか。処分・
蓄積勘定とは、これもまた平たく言えば,「お金を持っていた人がそのお金をどのよ
うに使ったのか」を示す勘定である。
 この勘定の借方(左側)では、最終消費支出372兆5959億円,投資は120
兆、固定資産減耗分98兆を差し引いて純固定資本形成は21兆8609億円。
 貸方(右)では「負債の変動」が目立つ。この年、政府は構造改革路線を標榜しつ
つも30兆円を越える新規国債の発行を行っている。それにも拘わらず、日本国全体
でみれば負債が38兆838億円減少している。・・・銀行の貸し剥がしか、不良債
権の放棄?
 この年、日本国民一丸となって奮闘努力、処分・蓄積勘定の貸方で、正味資産の変
動は29兆2221億円の増加(+1.1%)。この不景気の中でよく頑張った!
3.調整勘定。・・・資産・負債の再評価差額や不良債権処理の債権放棄など。
 バブルの崩壊に伴う資産デフレの影響で、惨憺たる状況を呈している。・・・正味
資産の変動は132兆9030億円という大幅な減少を記録した。
 平成14年中に日本国民が汗水たらして蓄積した処分・蓄積勘定上の増加額29兆
2221億もあっさり吹き飛び、最終的な正味資産(国富)は、103兆6809億
円もの減少を記録した。
 その結果,平成14年中の日本国全体の最終的ROE(自己資本利益率)は、『―
3.58%』これだけ国富を食い潰して景気が良かろうハズはない。
 現在、いくら日本人が一生懸命働いて生産勘定でお金を稼いでも、過去の資本蓄
積、即ち処分・蓄積勘定に関する判断が誤っていた。そのために、稼いだ以上の正味
資産が10年以上にわたって失われ続けている。われわれ日本人は、生産勘定に関わ
る活動領域において・・卓越した能力を発揮する。ところがその一方で、処分・蓄積
勘定の活動領域においては驚くほど無能になる。
・・・と筆者は言っているのですが,著者の主張の当否は別として,こうした日本全体
のバランス・シート上で数字の議論をする,また、そうした数字を把握することが出
来る(かなり努力は必要と思いますが)時代になったことに感心しています。