古稀の青春・喜寿傘寿の青春

「青春は人生のある時期でなく心の持ち方である。
信念とともに若く疑惑とともに老いる」を座右の銘に書き続けます。

銀行が株を売る時

2004-03-26 | 読書
 友人からメールが入り、『金融資産がねらわれている』(高橋乗宣著、ビジネス者)
が面白いよ、という。題名が、センセーシヨナルでどうかなと思ったが、著者は雑誌
などでユニークな論陣を張っているエコノミストなので、買って読んでみました。
 述べていることの殆どは同感できる内容でした。ただ、理屈抜きで結論だけを並べ
たようなところに不満がありますが、大衆向けの本ですからそうなってしまうので
しょう。
 書名の意味は「デフレを解消し、政府の財政を立て直すため、政府も大銀行も、14
00兆円といわれる国民の金融資産に目をつけている」という意味です。以下、興味
を引く論述を下記します。
【 】内は同書の引用、( )内は小生の感想ないし注書きです。

【個人の大半はいま、預金はほとんど普通預金で持っている。定期性預金はペイオフ
が解禁されているから不安である。・・・ペイオフの対象にならない普通預金に大勢
はシフトしている。

 政府による預金封鎖はいまのところ考えられないが、愛国税ぐらいはやりかねな
い。愛国税とは、要するに金融資産に直接課税する税金だ。
・・・ゼロ金利下であり、運用も難しいため、小金を持っている国民のほとんどが、
現金を普通預金に眠らせている。政治家もそうだが、このカネを何とか動かしたいと
思っている官僚は少なくない。・・・愛国税を創設して、国民の金融資産1400兆
円に網をかけようというのである。
 ・・・愛国税導入の効果はマイナス金利と同じであり、デフレ脱却にもつながる。
 しかし、これはたいへんな政治決断になる。・・・私は、愛国税より先に、「銀行
による株式や信託商品販売の”ワナ”」に注意をしなければならないと思う・・・】
 【・・・普通預金が動かない・・・大手銀行はほんらい、これ(預金)を動かさな
いことには利益が上がらない。銀行の一番の収益源は金融仲介業務であるから、金を
貸し出して、金利収入を得なければならない。企業間や個人の決済で上がる手数料な
どは、収益源としてはたかがしれている。・・・】
 【周知のとおり、大手銀行はこのデフレの不況下で、貸出先を見つけることができ
ない。かってのお得意先だった大企業は、社債を発行するなどして、証券市場で資金
調達を行っている。彼らに、調達コストの高い銀行で資金を借りたいというニーズは
少ない。銀行は収益源がなくなって、いまたいへんに困っているのである。
 すでに保険の銀行窓口販売など、いろいろな自由化がすすめられている。そして、
とうとう株式や信託商品の窓販にたどりついた。】
【・・・株式市場では、企業の年金解消売りが続いている。企業が従業員の責務とし
て運用してきた年金を解消するという行為も、どこか筋を間違えているニュアンスが
ある。・・・】
【銀行が株式や投資信託の販売を行うメリットはどこにあるのだろうか。・・・
 銀行は・・持ち合い株式を売っているにもかかわらず、顧客にはいかがですかと勧
めることになる。
 株式市場の自由化は、自分ひとりでは抱え込めないので、より多くの個人投資家
に”リスクの肩代わり”をさせる、という側面もあるのである。
 こうした窓口販売の強化によって、”安全確実”と思い込んでいた小金持ちの金融
資産が、よくわからないうちに”リスク資産”に置き換えられていくことにもなりか
ねない。】
(従来、銀行が株式販売を禁じられていたのは、それなりの理由がある。先般、足銀
は増資株を取引先に売りつけたが、これが銀行の破綻で¥0になった。こうしたこと
が今度は銀行の預金者との間におきないか?)(続)