shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【BN祭り②】J. R. Monterose

2023-07-30 | Jazz

 J.R.モンテローズのテナーはクソカッコ良い。ノリ一発で有無を言わさぬ豪快なアドリブがたまらないソニー・ロリンズや圧倒的なドライヴ感が快感を呼ぶジョニー・グリフィン、温かみのあるスモーキーなトーンで味わい深いプレイを聴かせるハンク・モブレイと、ブルーノート・レーベルはテナー・サックスの名演の宝庫だが、そんな中にあって独特のスタッカートを活かした果敢な突っ込み奏法(?)で異彩を放っているのが J.R.モンテローズだ。
 J.R. はコアなファンの間で根強い人気があるのだがリーダー作は驚くほど少なく、1950年代ではブルーノートに吹き込んだ「J.R. Monterose」(1956)とJARO(←ジャロって何じゃろ?レベルの超マイナー・レーベル)からリリースした「The Message」(1959)の2枚しかない。サイドメンとして参加した作品にしても、彼を一躍有名にしたミンガスの「直立猿人」、それに相性の良いケニー・ドーハムの「ジャズ・プロフェッツ」や「カフェ・ボヘミア」など数えるほどしかないという、ジャズ・ミュージシャンとしては珍しいくらいの寡作家なのだ。
 私はブルーノート盤をRVGリマスターCDで聴いていっぺんに彼のテナーが好きになった。中でもA面2曲目の「The Third」は “曲良し・演奏良し・スイング良し” と3拍子揃った出色の一曲だ。その後アナログ・レコードを買い始めてからは何とかJ.R.のオリジナル盤を手に入れようと頑張ったのだが、片や超人気レーベルのブルーノート、片や超マイナーレーベルのジャロということで大苦戦。結局ジャロ盤の方はなんとか入手出来たが、ブルーノート盤の方は中々買えずじまいで悶々としていた。
The Third - J.R.Monterose


 1950年代半ばに出たブルーノートのレコードは、1stプレスのセンター・レーベル表記が “767 Lexington Ave NYC” で、その後 “47 West 63rd - New York 23”→“47 West 63rd - NYC”→“New York USA”→“A DIVISION OF LIBERTY RECORDS, INC”→“A DIVISION OF UNITED ARTISTS, INC”と変わっていくのがデフォルトだった。私は1stプレス盤が10万円を超えるような激レア人気盤は60年代前半に出た“63rd”や“New York”表記の2nd/3rdプレス盤(→20年前は2~3万円くらいで買えたが、さっき見たらめっちゃ高くなっててビックリ...)を買ってお茶を濁していたので、50年代にリリースされた後、60年代に再発されなかったこの「J.R. Monterose」に関しては、薄っぺらいUA盤で我慢するか、あるいはオリジナル盤に近い高音質のリマスター盤が出るのを辛抱強く待つかの2択を迫られたのだった。
 結局、堪え性の無い私は “RVG刻印はないけど一応モノラルやし、国内盤よりはマシな音してるやろ...” と自分に言い聞かせて UA盤を4,000円で購入。デッドワックス部には RVG の代わりに Eck という 謎の刻印があって、音の方は結構粗削りながらも予想していたよりは遥かに良い音だった。音の傾向としては初期のビートルズのフランス盤に近い感じ。私は “UAって今までバカにしてきたけど、めっちゃコスパええやん!” とそれなりに満足していた。
 しかしその後、Classic Recordsから再発されたリマスター重量盤がヤフオクで安く出ていたのを見て好奇心を抑えられなくなり購入。出てきた音はUA盤を凌ぐ情報量と迫力で、それが名匠バーニー・グランドマンのマスタリングによるものなのか、200g重量盤のせいなのか、Quiex SV-P という高級ビニール材質のおかげなのかはわからないが(←これらすべての相乗効果なのかも...)、この盤以降私はClassic Recordsの再発盤をガンガン買うようになった。
 それから更に何年か経って、今度はディスクユニオン主導の “プレミアム復刻シリーズ” というリイシュー盤が発売された。普段なら国内盤なんぞには目もくれない私だが、“1950年代当時のプレスマシーンを使用した米国プレスの輸入盤”で、“~From The Original Master Tapes~というサブタイトルが示す通り、あえてRVGサウンドに近づけようとはせず、素のマスターテープに記録された音をそのまま円盤に刻み込むことにより、録音現場のそのままの生々しい音の記録をリアルに再生可能になりました。” という煽り文句を見てまたまた好奇心を抑えられなくなり購入。しかしスピーカーから出てきた音は良く言えばフラット、悪く言えば何の面白味もない淡白な音で、ハッキリ言って私の好みとは正反対のサウンドだ。オーディオ・マニアならこっちに軍配を上げるかもしれないが、ラウドカットや轟音爆音が三度のメシよりも好きな私としては、積極的に音を創り込んでジャズらしいサウンドに仕上げたRVGの偉大さを再認識させられる結果となった。ユニオンの企画らしく、溝、アドレス、®無しといった要素がオリジナルに忠実に再現されている拘りっぷりにはさすがと感心させられたが、それでもジャケットが数ミリ程度小さくて中にレコードを入れるとブサイクに膨らんでしまう点は気に入らなかった。
 ということで、聴き比べた結果としては Classic Records盤 > UA盤 >>> プレミアム復刻盤 となり、聴かへんレコードを持っててもしゃあないのでプレミアム復刻盤は即売却... 今ではClassic Records盤をメインにして、たまに気分を変えたい時にUA盤を聴くことにしている。