shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【BN祭り①】The Scene Changes / Bud Powell

2023-07-25 | Jazz
 今日は何と言ってもまずコレでしょう。特に最後のKOシーンはスカッとしまっせ\(^o^)/ 野球の大谷選手といい、この井上選手といい、ホンマに日本の誇りですわ!!!
井上尚弥 vs. スティーブン・フルトン WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ


 さて、ここからはいつものように音楽の話。ブルーノート祭りのトップバッターはバド・パウエルの「The Scene Changes」だ。ブルーノートというとどうしても2管3管ハードバップ / ファンキー・ジャズのイメージが強いが、このアルバムはそういったことを遥かに超越した次元でブルーノート・レーベルに、いやジャズ界にドーンと屹立しているのだ。
 バド・パウエルは私が最も好きなジャズ・ピアニストで、曲単体でいえば凄まじい疾走感に圧倒される初期の「Tempus Fugit」や哀愁舞い散る名曲名演に涙ちょちょぎれる後期の「Dear Old Stockholm」が真っ先に頭に浮かぶが、アルバム全体の完成度の高さで言えばこの「The Scene Changes」が断トツに素晴らしい。
 そもそもジャズメン・オリジナル曲というのはメロディーが薄っぺらくて心に残らないものが大半で、心を鷲づかみにするような美旋律を持ったキャッチーな曲は1割にも満たないというのが長年の経験に基づく私の考えだが、全9曲すべてをパウエルのオリジナルで固めたこのレコードは奇跡的に駄曲が1曲もない “打率10割” レベルの神アルバムで、一度聴いたら忘れられないようなキャッチーなメロディーに溢れているのだ。
 A①「Cleopatra's Dream」(クレオパトラの夢)は一時期サッポロビールのTVCMソングとして日本全国のお茶の間(←今ではもう死語ですな...)に流れていたくらいの大名曲なのだが、残りの8曲も負けず劣らずエキゾチックなメロディーが出るわ出るわのわんこそば状態で甲乙付け難い。これほどまでにクオリティーの高い楽曲がいくつも生まれた理由としては、人種差別のえげつないアメリカを離れて住みやすいパリへ移住する直前のレコーディングだったことが大きいのではないか。それが証拠にB面の曲名を見ても、海峡を渡って(Crossin' The Channel)ヨーロッパにやって来て(Comin' Up)そこに着く(Gettin' There)と景色が変わる(The Scene Changes)と、海外移住を目前に控えてまさに心ウキウキ状態のパウエルの気持ちが伝わってくるようだ。だからこんなに楽し気なメロディーが次から次へと浮かんできたのだろう。
Cleopatra's Dream
 
Gettin' There


 1stプレス盤(1959年)は47 West 63rd - NYC表記で両面溝あり、2ndプレス盤(1962年)ではINC - NEW YORK USA表記になって片溝のみ、3rd~4thプレス盤(1962~66年)では同じINC - NEW YORK USA表記ながら、それまであったデッドワックス部の Plastylite P(←いわゆるひとつの“耳”マーク)や 9M 刻印、そしてDeep Grooveも無くなってしまう。
 このレコードは超の付く人気盤で、状態の良い1stプレス盤は10万円近くするため、最初はピカピカの4thプレス盤を1万円で手に入れて満足していたのだが、やはりどうしても1stプレスの音を聴いてみたくなって、ジャケットがGで 盤質がVG+表記の盤を28,000円でゲット。実際に聴いてみるとほぼノイズレスのNM状態で大ラッキーしたが、何よりも驚いたのはそれまで聴いてきた4thプレス盤との音の違いだ。
 4thプレス盤の方は音像はやや小ぶりながらカチッとまとまっていて平均点が高く、聴き比べなければ十分満足いく音で、車に例えるなら非常に優秀な日本車という感じ。一方、1stプレス盤の方はとにかく音場が雄大で、演奏を包み込む空気感みたいなものまで生々しく伝わってくるのだ。おぉ、これが1stプレスの威力なのか... 車で言うと大排気量のアメ車という感じで、アクセルをガッと踏み込めばドバーッと余裕で加速していくあの圧倒的なスケール感に似ているように思う。
 最初に買った4thプレスの盤質が良かったこともあって正直 “これで十分やろ...” と思っていたが、一度1stプレス盤の音を聴いてしまうとどうしてもそっちばかり聴きたくなってしまう。今回ブログに書くにあたって久々に聴き比べてみたが、ビートルズで言うと「Please Please Me」の “金パロ” と “黄パロ” 以上の開きがある。この違いがプレス時期から来るものなのか、それとも “耳” マークの有無から来るものなのかはわからないが、とにかくこのレコードが好きなら無理してでも1st プレス盤を買う価値は十分にあると思う。いやぁ、パウエルさんホンマにゴキゲンやわ... (≧▽≦)
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