shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

映画「Get Back」最高でした!④

2021-12-05 | The Beatles
 ルーフトップ・コンサートの当日(Day 21: 1/30)はスタッフが屋上でせわしなくカメラのセッティングをしているシーンから始まるが、それを見てこちらも “いよいよ始まるのか...” と気持ちが盛り上がってくる。屋上以外にも向かいのビルや通り、そして受付にも隠しカメラ(←この前の隠しマイクといい、リンゼイホッグ監督はホンマに隠し撮り好っきゃなぁ...)を設置してこのレジェンダリーなライヴの一部始終を記録に残そうというのだ。これから歴史的なライヴが始まるとも知らず、通りを行く人たち...
 やがてポールを先頭にメンバー達が屋上に姿を見せる。この光景はこれまで数えきれないくらい見てきたが、アングルも画質も違うのでめちゃくちゃ新鮮に映るし、ノーカットということでこれまでブートレッグの音声でしか知らなかったパートの映像が実際に見れると思うとワクワクドキドキが止まらない(≧▽≦)
 演奏は「Get Back」からスタート。別アングルを効率的に観れる横並び画面がすごく良いし(←生まれて初めて横長のアスペクト比を良いと思った...)カメラを切り替えるスピードも自然で実に見やすい。アタマおかしいんちゃうかと思うくらいハイスピードでカメラを切り替えるアホバカ編集がウザい昨今のライヴ・ビデオとはエライ違いで、さすがはジャクソン監督と感心してしまった。
 この「Get Back」にはリンゼイホッグ版「Let It Be」でお馴染みの通行人インタビューもバッチリ入っているが、私的に一番面白かったのは “意味が分からないわ!” と激オコだったオバハンのブチギレ理由が実は “寝てたのに起こされた” からという笑撃の事実。このライヴって確かお昼の1時頃に行われたと思うのだが、一体何時まで寝てるねん!と思わず突っ込みを入れたくなってしまう。
 ジャクソン版「Get Back」のクライマックスはもちろんルーフトップ・コンサートの模様がそれまで見たこともなかったアングルから、しかもとびきりの高画質で観れることだと先ほど書いたが、もうひとつの(いや、それ以上の、と言えるかも...)見どころは何と言っても騒音の苦情を受けてやってきた例の警官たちとアップル・スタッフとの生々しいやり取りが聞けること。最初にやってきた2人の警官(グローブをブンブン振り回してる色白で背の高い方がレイ・タグ巡査で、黙って見てる方がレイ・シェイラ―巡査)とドアマンのジミーとの会話がバッチリ聞けるのがめちゃくちゃ面白い。藤本さんの本によるとリンゼイホッグ監督の指示で女性スタッフはスカートの上に隠しマイクを付けたそうだが、さすがは盗聴のスペシャリスト(笑)である。おかげで51年経ってホンマにおもろいモンが見れますわ(^.^)
 ダグ巡査が “音を下げないなら逮捕します。” とかなり強硬にライヴを止めるように迫っている場面(←受付で待たされていて「One After 909」が始まった時の表情の変化が絶妙... この人、キャラ立っててエエな...)なんかめっちゃリアリティーがあって大いに楽しめたが、盗聴はともかく、二人の警官の表情をカメラで実によく捉えてるなぁと感心せざるをえない。これって隠しカメラだけでは撮れそうにない映像なのだけど、一体どうやって撮影したのだろう?
 ロード・マネージャーのマル・エヴァンスが降りてきて “脅しではなく、中止しないと本当に逮捕者が出ますよ” と迫るダグ巡査の追及をのらりくらりとかわしながら時間稼ぎをし、“とりあえずPAを切って様子を見ましょう” ということになるのだが(←ダグ巡査の “参ったな...” がめっちゃリアルに響く)、その後 “防音じゃないんですか?” “屋上ですよ。” “えっ?” “映画と言いましたよ!” とダグ巡査をやり込め、“映画なら音はダビングできるでしょ” と初めて口を開いたシェイラ―巡査に対しても “撮るのはライヴなんです。生で演奏しないと。” とピシャリと言い放つ受付のデビー嬢(←最初のうちは “私は事情を知りません” とか言ってたのに... 笑)も実に腹が据わった女傑やなぁと感心してしまった。
 マルの “PAの大半は切りました。地下へのコードも切ります。” という大嘘に笑わせてもらった後、いつまでたっても音楽がやまないのに痺れを切らせたダグ巡査がマルに “屋上へ連れて行ってもらえるかな” と言ってラス前「Don't Let Me Down」で屋上に警官2人が姿を現す。さぁ、盛り上がってまいりました...(^.^) 屋上でマルが2人の巡査に必死の防戦を試みている間に階下では例のヒゲの巡査部長が登場、デビー嬢に軽くあしらわれながらも何とか屋上にたどり着く(←知らん間に3人目も屋上に上がっとる...)。とにかくこのパート3の準主役(?)は間違いなくこの警官たちだと言えるだろう。
 ラスト曲「Get Back」でついに警官の圧力に屈したマルがジョンとジョージのアンプの電源を切る有名な場面で、ポールの方を見て “切られたけど、どーする?” みたいなしぐさをするジョン、ためらうことなく瞬時にスイッチを入れなおすジョージ、淡々とリズムをキープするリンゴ、そして警官の方に向かって左手で指さしながら“Get back!(帰れ!)” と歌うポールと、メンバー四者四様のリアクションが見れて実に面白い。
 それと、演奏終了後にみんなでプレイバックを聴くシーンがあるのだが、あれほどライヴは嫌だ屋上なんかに行きたくないと渋っていたのが嘘のように晴れ晴れとした表情で楽しそうにリズムを取りながら聴いている4人を見てとてもハッピーな気持ちになれた。
 ルーフトップ・コンサート翌日の Day22: 1/31は屋上では演らなかったアコースティック系の曲のレコーディングで、エンドロールが流れる横でオマケ映像的に扱われており、“つわものどもが夢のあと” 的な余韻を醸し出している。
 この「Get Back」は神に選ばれし4人の天才たちが作り上げた極上の音楽を伴う人間ドラマであり、筋書きもゴールもないところからスタートして様々な紆余曲折を経ながらも最後はこれ以上考えられないドラマチックなフィナーレで締めくくった究極のリアリズム映画と言える。57時間にも及ぶ未公開映像と150時間以上もある未発表音源を整理して1本の映画を作り上げるという大仕事を引き受けて素晴らしい作品に仕上げてくれたピーター・ジャクソン監督にはいくら感謝してもしきれない。
 この映画が劇場公開ではなく配信、しかもよりにもよってディズニー絡みと聞いた時はめちゃくちゃ不満でがっかりしたが、不安があったディズニープラスへの登録もわりと簡単にできたし、実際にこうやって映画全編を毎日見返せるというのは大きなメリットだった。ただ、早送り巻き戻しやチャプターによる頭出しが出来ないのはやっぱり不便なので、1日も早くブルーレイで出してもらいたいと思う。スーパーウルトラデラックス・エディションは出来ればリンゼイホッグ版「Let It Be」もボーナス・ディスクとして付けてくれたら嬉しいな...(^.^)