shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

「McCartney Ⅲ」

2020-12-28 | Paul McCartney
 2020年も残すところあと4日、このブログは音楽日記のつもりで書いているので1年の最後にはいつもその年を振り返るようにしている。今年は新型コロナウイルスのせいで日常生活の面では決して良い年とは言えなかったが、そんな悪い状況の中でも “一生もの” と言っていいレコードにたくさん巡り合えたし、新たにウルグアイ盤という高音質な各国盤コレクションを充実させることもできたしで、音楽面では決して悪くない1年だった。それもこれもすべてB-SELSとSさんのおかげなので、この機会に改めてお礼を言いたいと思う... 1年間どうもありがとうございました.. そして来年もよろしくお願いしますm(__)m
 そしてここからが本題なのだが、年の瀬も押し詰まった12月19日にポールから我々ファンに素敵な贈り物が届いた。ポールがロックダウン中に(「封鎖」を意味するLockdown に引っ掛けてロックが出来ない “Rockdown” という造語を使っている...)たった一人で作り上げた新作「McCartney Ⅲ」である。ポールが一人で曲を書き、すべての楽器を演奏した「McCartney」(1970)、「McCartney Ⅱ」(1980)の流れを汲む宅録シリーズの第3弾だ。
 最近の新作はCD、デジタル配信、アナログレコードと様々な形態で発売されるのがお約束だが、私は迷うことなくアナログレコードを選んだ。好きな音楽は出来るだけ良い音で聴きたいし、車の中で聴く分にはCDレコーダーを使ってCD-Rに焼けばいいだけのこと。ましてやデジタル配信なんて論ずるにも値しない。私はヴィンテージ・オーディオで聴くアナログ・レコードの音が一番好きなのだ。
 この「McCartney Ⅲ」を初めて聴いた時は “何か地味なアルバムやなぁ...” というのが正直な感想だった。今にして思えば、私にしてはかなり低い音量で聴いていたように思うのだが、2回目にアンプのヴォリュームを上げて聴いてみたところ印象がガラリと変わり、その後何度も大音量で繰り返し聴いてその良さを実感できた次第。そう、このアルバムを小音量で聴いても全然面白くないのだ。出来るだけ大きな音で、良いオーディオ装置で聴くとその素晴らしさが分かる仕掛けになっていると思う。
 アルバムはA①「Long Tailed Winter Bird」というインスト・ナンバーで幕を開ける。今回の「McCartney Ⅲ」は「NEW」や「Egypt Station」のように徹底的に作り込んだ “王道ポップ・ミュージック” とは一味違う素朴な内容のアルバムになるのではないかと予想していたが、いきなりザ・ファイアーマンっぽいインスト曲が来るとは思わなんだ。まぁアルバム全体のオーバーチュアという感じだが、ザクザク刻むアコギのリズム・カッティングが耳に心地よいナンバーだ。
 そして本アルバムのハイライト曲と言えるA②「Find My Way」だ。プロモ・ビデオで様々な楽器を演奏するポールの姿を見てその健在ぶりが確認できたのが何よりも嬉しいし、ドラムを叩いている姿を見るととてもじゃないが78歳には見えない。 ノリの良いキャッチーなメロディー・ラインはポールの十八番だし、ベテランならではの巧みなアレンジにも唸ってしまう。後半部のドラムの響きやギターの音色はどことなく「Mirage」期のフリートウッド・マックを想わせるものがあって気持ち良いことこの上ない。
 そして何よりも素晴らしいのがその歌詞だ。“(I Can) Find My Way”、つまり“自分の道は見つけられる” というタイトルなのだが、“I walk towards the light... Idon’t get lost at night.(僕は光に向かって歩く... 夜でも決して道に迷ったりはしない)” という前向きな歌詞、そして “Now you’re overwhelmed by your anxieties... Let me help you out... Let me be your guide... I can help you reach the love you feel inside.(今はコロナ禍で苦しんでいると思うけど、僕が手を貸して導いてあげるよ... 君の内にある愛に手が届くよう手助けがしたいんだ)” と聴く者を励ましてくれるメッセージに勇気づけられる。この曲でポールは “コロナなんかに負けんなよ... 希望を持って生きようぜ!” と私たちに語りかけてくれているのだ。フランシス・コッポラの息子さんが監督したというオフィシャル・ビデオと歌詞付きのビデオの両方を貼っときましたので、前者は元気なポールの姿を、後者はそのポジティヴな歌詞を十分堪能してください。
Paul McCartney - Find My Way (Official Music Video)

Paul McCartney - Find My Way (Lyric Video)


 いかにもポールらしいアコギ・ナンバー③「Pretty Boys」やシンプルなピアノの重苦しい響きが印象に残るA④「Women And Wives」も良いが、何と言ってもA⑤「Lavatory Lil」が個人的にはめっちゃツボ(^.^)  ちょうどB'zがアルバム「Magic」で聴かせてくれたような歌謡ロックっぽいテイストのリフが脳内リフレインを起こし、今のところA②と並ぶ愛聴曲になっている。ヘヴィーなギターのリフがカッコイイA⑥「Slidin'」でA面をしめるのは「Abbey Road」の「I Want You」みたいなモンか。
Paul McCartney - Lavatory Lil (Lyric Video)


 B①「Deep Deep Feeling」は8分を超える長尺曲だが、やや単調でメロディーが薄いように感じられて私的にはイマイチ。B②「The Kiss Of Venus」は安心安定のポールなアコギ・バラッドなのだが、高音部で声がややキツそうなのがファンとしては聴いてて辛いところ。B③「Seize The Day」はビートリィな雰囲気が横溢で結構気に入っている。やっぱりポールはこういう曲を作らせたら上手いですな。B④「Deep Down」のソウルフルなヴォーカルは “ポール、攻めてるなぁ...” の想いを強くさせてくれるグルーヴィーなナンバーで、聴き込めば聴き込むほど味わいが増すスルメ・チューン。B面ではこの曲と次のB⑤「When Winter Comes」が気に入っている。
 A①のギター・リフをリプリーズっぽくアタマにくっつけた(←ちょうどBラス前に置かれた「Ram On」の、あの感じ)B⑤「When Winter Comes」は何と1992年にジョージ・マーティンとの共同プロデュースでレコーディングした未発表曲をそのまま使っており、28年前の録音ということもあってポールの歌声の艶やかさに惚れ惚れしてしまう。SさんもB-SELSの日記コラムで絶賛されていたが、これはホンマにたまりませんな...(≧▽≦)  ビートルズ・ファンは、仮に歌っているのが「森のくまさん」や「どんぐりころころ」のような童謡であったとしても、ポールのこの “声” を聴いただけでフニャフニャと腰砕け状態になってしまうのである。
Paul McCartney - Winter Bird / When Winter Comes (Lyric Video)


 最後になるが、「McCartney」と「Mccartney Ⅱ」の次に出たアルバムをそれぞれ思い出していただきたい。そう、完全無欠のポップ・アルバム「Ram」と「Tug Of War」である。ポールがソロで好き放題やってガス抜き(?)をした後には必ず音楽史上屈指のスーパーウルトラ大名盤が生まれているのだ。歴史は繰り返すと言うが、コロナ禍終息後にワールド・ツアーに向けてリリースされるであろうポールの次作が今から楽しみになってきた。

ということで、2020年最後のブログはポールの「McCartney Ⅲ」でした。そして来たる2021年にはいよいよピーター・ジャクソンが監督した映画「Get Back」が劇場公開されますね。私が蛇蝎のごとく嫌っているディズニーが絡んでいることに一抹の不安がありましたが、先週YouTubeにアップされた公式の映像を見て、今はウキウキワクワク感がハンパないです。あ~楽しみじゃあ... (≧▽≦)   それでは皆様もどうぞ良いお年をお迎えください。
「ザ・ビートルズ:Get Back」先行特別映像|2021年8月27日(金)世界同時劇場公開!