shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Difficult To Cure / Rainbow (Pt. 2)

2012-11-26 | Hard Rock
 このアルバムを語る時に避けて通れないのがポップ路線への賛否だが、アメリカン・マーケットを意識したバンドのコマーシャル化路線に対する “魂を売り渡した” といった類の批判に対してリッチーは “俺たちはいつの間にかへヴィでアンダーグラウンドなバンドになりすぎていた。 当時はアバが俺の大のお気に入りで、ああいう風な曲を書きたいと常々思っていた。メロディアスで堂々としたポップ・ソングを演奏したい。一般受けするような曲が欲しかった。みんなが感情移入できるような曲を書かないとダメだと思った。郵便配達人が自転車に乗りながら口笛で吹くような曲をね。” と反論している。言いたいことは分かるけど、ファンとしてはリッチーにはどうしてもパープル~70'sレインボーのハイテンションなブリティッシュ・ハードロックを期待してしまう。
 そんなこちらの気持ちを知ってか知らずか、このアルバムにはめちゃくちゃカッコイイ疾走系ハードロック曲が入っている。それが⑥「キャント・ハプン・ヒア」で、「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」で一時は絶縁を考えた私に “やっぱりリッチーはエエなぁ...(^.^)” と思い直させてくれた、レインボーならではのハイスピード・チューンだ。取って付けた様なユル~いイントロはイマイチだが、「オール・ナイト・ロング」を高速回転させたようなキャッチーなメロディーとディープ・パープルを想わせるようなノリノリの演奏がたまらんたまらん(≧▽≦) レインボーはやっぱりこういうスピード感溢れるリフ・ロックに限るわ! 出来ることならコージーが叩いてやっさんが歌うヴァージョンを聴いてみたかった、というのは欲張り過ぎか...
RAINBOW - Can't Happen Here {THE FINAL CUT 1985}


 軽快なギターのイントロから一気に疾走し始める②「スポットライト・キッド」はリッチー節炸裂のギター・ソロがインパクト絶大で、腹一杯リッチーを聴いた!という満足感を味わえる至福のナンバーだ。これで間奏部の軽薄極まりない音色のキーボード・ソロさえなければ80年代の「キル・キン」になったかもかもしれない。 “いた、便所虫~♪”(1分25秒)の空耳もお忘れなく(^.^)
Rainbow -Spotlight Kid


 ③「ノー・リリース」はちょっと変わった感じの曲で、前半部分は武骨でメタリックな演奏なのだが、3分を過ぎたあたりから手拍子が入り、まるでクイーンの「アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト」みたいなファンキーな展開に突入、リッチーってこういうファンキーなノリは嫌いやったはずやのに... と訝しく思っていると、後半部でハッと我に返ったかのように疾走し始めるところが何とも可笑しい。決して名曲名演といえる代物ではないが、それでもついつい聴いてしまうんよね...(^.^)
Rainbow - No Release


 ⑨「ディフィカルト・トゥ・キュア」はベートーベンの「第九」をレインボー流ロックンロールにアレンジしたもので、重厚なイントロから一転して軽快な「歓喜の歌」のメロディーが響き渡る。クラシックに疎い私でも知っているキャッチーなテーマを皮切りに次から次へとオリジナルなメロディーを紡ぎ出すリッチーのインプロヴィゼイションは痛快そのものだ(≧▽≦) 更に3分40秒あたりからドン・エイリーにキース・エマーソンが憑依し ELP チックなキーボード・ソロを展開、このままプログレ・ワンダーランドに突入するのかと思っていると再びリッチーが登場し、「第九」のメロディーを奏でてメデタシメデタシ(^o^)丿 エンディングの笑い袋は意味不明だが、これもリッチー流の遊び心か? 因みに邦題は「治療不可」になっているが「Difficult To Cure」なら「治療困難」ですな。
 この後、レインボーは「ストレイト・ビトゥイーン・ジ・アイズ」と「ベント・アウト・オブ・シェイプ」というアルバムを出すのだが、そのどちらでもリッチーはあまり目立っておらず、「デス・アレイ・ドライバー」と「ドリンキング・ウィズ・ザ・デビル」の2曲以外はほとんど印象に残らない平凡な内容だ。そういう意味でもこの「ディフィカルト・トゥ・キュア」でレインボーは終わった、と感じるのは私だけだろうか?
Rainbow - Difficult To Cure (1981)