shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

メチター / Arahis

2012-08-06 | Cover Songs
 「夢逢え」祭りの最終回は “ロシアのザ・ピーナッツ” といわれる双子姉妹ユニット、アラヒスが日本語とロシア語を織り交ぜて歌う珍しいヴァージョンだ。日本に来るロシアの女性二人組といえばドタキャンやら何やらでお騒がせのタトゥーが真っ先に思い浮かぶが、このアラヒスはあんな話題先行のキワモノ・ユニットとはモノが違う。モスクワの音楽一家で生まれ育ったせいか音感も良く、しっかりした歌唱力を身につけており声もキレイだ。「恋のバカンス」や「恋のフーガ」といった懐かしいザ・ピーナッツの名曲ばかりを現代風アレンジでカヴァーしたデビュー・アルバム「ARAHIS」(2006年)を私は結構気に入り、次はどんな選曲でくるのか大いに楽しみにしていた。
 そんな彼女らのセカンド・アルバムが2007年にリリースされたこの「МЕЧТА(メチター)」で、今度は70年代~80年代初めの日本の女性アーティスト達の名曲をカヴァーしているのだが、その選曲が私の嗜好にピッタリ(^o^)丿  ①「六本木心中」(アン・ルイス)、②「真夏の出来事」(平山三紀)、③「夢で逢えたら」(シリア・ポール)、④「思秋期」(岩崎宏美)、⑤「飛んでイスタンブール」(庄野真代)、⑥「恋人よ」(五輪真弓)という珠玉の6曲が収録されており、昭和歌謡の王道メロディーをその美しいハーモニーで見事に歌い上げているのだ。
 前作同様にこのアルバムでも、歌詞は最初日本語でスタートして途中からロシア語で歌われており、その “日本語からロシア語へと切り替わる瞬間” が一番の聴きどころ。まさに ARAHIS ならではのユニークな世界が展開されており、耳慣れたメロディーと未知の言語との融合によって “懐かしいけど、どことなく新鮮...” という不思議な感覚が楽しめる。
 全6曲の中で一番気に入っているのが③「夢で逢えたら」で、流暢な日本語で歌われる前半部からごく自然な形でロシア語にチェンジ、例の語りの部分もロシア語というのがユニークで面白いし、この曲のお約束とでも言うべきカスタネットのアメアラレ攻撃も嬉しい。
夢で逢えたら


 ③以外では筒美京平先生の②⑤がお気に入り。②はその独特のリズムといいテンポ設定といい、日本人でも歌うのは中々難しいのではないかと思うが、それを20歳そこそこのロシア姉妹が見事に歌いこなしているところが凄い。⑤も同様で、起伏の大きい筒美メロディーをしっかりと捉えて歌っているし、ロシア語のパートなんかもう何の違和感も感じさせないぐらい流麗に歌い切っている。③に続いて在庫一掃セールのようにバックで打ち鳴らされるカスタネットも効果的だ。
真夏の出来事

飛んでイスタンブール


 ①はユーロビートっぽいチープなシンセのイントロが好きになれないが、アン・ルイスが歌謡ロックを極めたこの曲と彼女らとの相性は抜群で、水を得た魚のように日本語とロシア語を駆使してノリノリの歌声を聴かせてくれる。特にたたみ掛けるようなサビの盛り上がりは圧巻だ。これでバリバリのハードロック・アレンジやったら最高やのに...
 スロー・バラッド④⑥は共にかなりの歌唱力を要する楽曲で、所々日本語がぎこちなく響くところはご愛嬌だが、④のユニゾンでハモるパートなんかゾクゾクしてしまうし、情感豊かに歌うロシア語のパートにも耳を奪われる。切々と歌い上げる⑥も心に訴えかけてくるものがあり、言葉は分からなくてもその説得力溢れる歌声には唸ってしまう。
 このアラヒスは今のところ2枚のミニ・アルバムしか出ていないようだが、これだけクオリティーの高い作品を作れるのだから、次はぜひともフル・アルバムを期待したい。「ロシア姉妹、筒美京平を唄う」とか「鈴木邦彦作品集 ~モスクワのハーモニー~」(←パルナスかよ...)みたいなコンポーザー・シリーズなんか面白いと思うねんけど...
思秋期
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