shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Love Songs Ⅰ ~また君に恋してる~ / 坂本冬美

2012-08-26 | J-Rock/Pop
 今日もまたまた冬ミンだ(^.^) 前回取り上げたのは「Love Songs Ⅱ ~ずっとあなたが好きでした~」というアルバムだが、Ⅱがあるということは当然Ⅰが存在するはず。ということで調べてみて見つけたのがこの「Love Songs Ⅰ ~また君に恋してる~」という盤だ。収録曲は、①「また君に恋してる」(ビリー・バンバン)、②「恋しくて(BEGIN)、③「あの日にかえりたい」(荒井由実)、④「会いたい」(沢田知可子)、⑤「言葉にできない」(オフコース)、⑥「恋」(松山千春)、⑦「夏をあきらめて」(サザンオールスターズ)、⑧「シルエット・ロマンス」(大橋純子)、⑨「片想い」(浜田省吾)、⑩「なごり雪」(イルカ)、⑪「時の過ぎゆくままに」(沢田研二)、⑫「大阪で生まれた女」(BORO)、⑬「また君に恋してる」(ビリー・バンバンとのデュエット・ヴァージョン)で、Ⅱと同様70~80年代の邦楽から選曲されているが、Ⅱのように “冬” を意識したコンセプトではない。
 曲目を見てまず思ったのは、Ⅱに比べて知ってる曲が少ないなぁ、ということ。原曲を知っていたのは③⑦⑧⑩⑪⑫の6曲のみというお寒い状況で、実際、①のビリー・バンバンや⑨の浜田省吾は名前だけは知っていても曲は聴いたことがなかったし(←邦楽は結構このパターンが多いな...)、②のBEGIN や④の沢田知可子に至っては名前すら知らない。しかも嫌いなオフコースや松山千春の曲まで入っているということでⅡほど親近感が湧かず、私はこの CD を買うかどうか迷っていた。
 しかし、しかしである。③の「あの日にかえりたい」を試聴してそんな迷いは木端微塵に吹き飛んだ。ユーミンが “ニュー・ミュージック(←懐かしいなぁこの言葉!)の旗手” として大ブレイクするきっかけとなった名曲を、何とクール&ライトなジャズ・アレンジで、演歌出身の冬ミンが歌っているのだ! まさに大胆不敵としか言いようがない発想だが、コブシを完全に封印し、大仰に感情を込めるのではなく一見サラッと軽く流して歌っているように思わせながらそのコトバの響きの中に儚さを滲ませていくという冬ミン唱法がジャジーなアレンジと絶妙にマッチ、あらゆる要素が音楽的かつ有機的に結びついてオリジナルとはまた違った世界観を作り上げているところが凄い。歌伴のお手本のような粋なピアノ、ボッサなギター、そしてムード満点のサックスをバックにユーミンを歌う冬ミン... ハッキリ言ってこの1曲のためだけにアルバムを買ってもいいぐらいカッコ良いカヴァーだ。
坂本冬美 あの日にかえりたい


 ユーミン以外で興味を引かれたのが⑦のサザンや⑪のジュリーのカヴァーだったが、どちらもアレンジがイマイチ好きになれない。⑦はゴテゴテ飾りすぎていてせっかくの彼女の歌声を邪魔しているように感じるし、⑪はウェットな色合いがちょっと濃すぎるように思える。この2曲はあれこれ策を弄さずにもっと原曲に近いシンプル&ストレートなアレンジで聴いてみたかった。
 そんなこんなで私が③に次いで気に入ったのが⑧の「シルエット・ロマンス」だ。圧倒的な歌唱力で歌い上げたこの冬ミン・ヴァージョンは原曲である大橋純子ヴァージョンや作者の来生たかおヴァージョンを遥かに凌駕する素晴らしさで、彼女の歌唱は曲の髄まで引き出す表現レベルにまで達しているように思う。その官能的と言ってもいいぐらい艶やかな歌声は実に瑞々しい響きで、サビの “もっと ロマンス 私に仕掛けてきて~♪”のラインなんかもうゾクゾクするぐらいのリアリティーを感じさせる。坂本冬美の魅力ここに極まれり!と言いたくなる絶品カヴァーだ。
シルエット・ロマンスー坂本冬美


 アルバム・タイトル曲の①「また君に恋してる」も素晴らしい。この曲のオリジナルはビリー・バンバンで “いいちこ” という焼酎のテレビCMソングとして使われていたが、旋律はキング・クリムゾンの「ムーンチャイルド」そのまんまやし脆弱なヴォーカルも自分の好みとはかけ離れているしでいまいちピンとこなかった。しかしこの冬ミン・ヴァージョンは凄い、いや凄すぎる!!! 彼女の力強い歌声が持つ凄まじいまでの吸引力によってロバート・フリップもビックリの出藍の誉れ高き「ムーン...」じゃなかった、「また君」へと昇華されており、初めて聴いた時は大袈裟ではなく魂を揺さぶられるような感じがした。
 この曲はシングルカットされてアルバムと共にヒットチャートのトップ3入りを果たすなど、演歌系歌手としては異例の大ヒットを記録したのだが、それを受けて彼女は「すべて清志郎さんのおかげです。20年前、駆け出しの私に “一緒に歌おう” と声をかけて下さった。おかげで歌手としての幅が広がり、今の私があるんです。」とインタビューで語っている。 SMI や HIS での経験が見事に実を結んだこの「Love Songs」シリーズ、これからもどんどん続編を出してもらって彼女の歌声で数々の名曲たちに新たな生命を吹き込んでほしいものだ。
2010/10/30 23:31 「 また君に恋してる」【HD】PV


【おまけ】J-POP にメタル魂を注入して新解釈で聴かせてくれるのがこの人、マーティ・フリードマン。「また君」は12分を過ぎたあたりからで、エモーショナルの一言に尽きるプレイが圧巻です!
MARTY FRIEDMAN ライヴ(天城越え~また君に恋してる)
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