shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

夢で逢えたら / シリア・ポール

2012-08-02 | Wall Of Sound
 ロンドンオリンピック TV 観戦による睡眠不足に連日の猛暑も相まって仕事中に何度も意識が飛びそうになる今日この頃、みなさん如何お過ごしですか? 五輪といえば開会式で「ヘイ・ジュード」を熱唱するポール・マッカートニーの雄姿とそれに合わせて会場全体が合唱するシーンに大感激!!! “ヘイ! 柔道” で笑わせて下さった shoppgirl 姐さん(←♪Better better~♪ と歌詞に引っ掛けたハイレベルなダジャレで返すところなんか、さすがは安曇野のダジャレ・クイーン!)もご自身のブログに書かれていたが、オリンピック開会式で聴く「ヘイ・ジュード」は格別だった(≧▽≦)
Paul McCartney at Olympics , Hey Jude


 ということで今日はポールつながりでシリア・ポール(←何という強引な展開...)にしよう。前にも書いたように、私と「夢逢え」との出会いはキリンのワインCMソングとしてTVから流れてきた森丘祥子ヴァージョンで、90年代の間はそれしか聴いたことがなく、まさかこんなに多くの歌手にカヴァーされている J-POP のスタンダード曲だなどとは夢にも思わなかった。もちろん大ヒットした(らしい?)ラッツ&スター・ヴァージョンなど全く記憶にない。
 21世紀に入ってネットで CD やレコードを買い始め、かつて毎週行っていた中古盤屋廻りも週一から月一、そして数ヶ月に一度と激減していったのだが、このシリア・ポール盤を手に入れたのはそんな頃だった。日本橋のディスクJJの CD 棚から微笑みかけているジャケットに魅かれて偶然手に取り、 “シリア・ポールって確か「ポップス・ベスト10」の DJ やってたお姉さんやん...めっちゃ美人やなぁ(^.^)” と鼻の下を伸ばしながら曲目を見ると、大好きな「夢逢え」の色んなミックスのヴァージョンが並んでいる。しかもシフォンズの④「ワン・ファイン・デイ」やジャズ・スタンダードの⑦「ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー」、そして大好きなナンシー・シナトラの⑨「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」までカヴァーしているのだ。これで買わねばポップス・ファンではない。
 今ではこの CD は廃盤になっており、その内容の素晴らしさや希少性も相まってアマゾンやヤフオクでは結構なプレミア付き価格で取り引きされているようだが、当時はまだそんなことはなく、私は1,000円台で買うことができた。話は逸れるが、私はこの “すぐに廃盤→プレミア付きボッタクリ価格で中古が流通” という構図に釈然としないものを感じてしまう人間で、時代を超えて愛され続けるこんな名盤は常に音楽ファンが聴けるようにカタログに残しておくのがレコード会社の責務ではないかと思っている。
 このアルバムは1977年に作られたキュートな王道ガール・ポップの傑作で、大瀧詠一によるウォール・オブ・サウンド全開のプロデュースが冴えわたる「夢で逢えたら」を始めとして胸キュン・ポップスが満載だ。1987年の初 CD 化盤(← CDケースを右側へ開く古いタイプのソニー盤ね)は曲順がオリジナルとは全然違うし、ストリングスによるインスト・ヴァージョンもカットされていたが、私が買ったのは1997年に CD 選書としてリリースされた再発盤。'87年盤をオリジナル通りの曲順に戻して全曲最リミックスを施し、更に「夢逢え」の3ヴァージョンを含むボートラが6曲も入り、大瀧氏の詳細なライナーノーツまで付いているという超お徳用盤である。
 ということでこの再発盤には「夢で逢えたら」がインストも含めれば5ヴァージョンも収められていることになる。①の “アルバム・ヴァージョン” がエコー強めなのに対し⑬の “シングル・ヴァージョン” はエコーが少なく感じられるのだが、これは大瀧氏の解説によるとラジオのオンエアーを想定して歌を際立たせるためにエコーを控え目にしたからとのこと。因みに⑭の “モノ・ヴァージョン” と⑮の “モノ・トラックス・オンリー” はこの ⑬“シングル・ヴァージョン” をモノ・ミックスにしたものだ。⑫の「夢で逢えたら、もう一度」は山下達郎のストリングス・アレンジをフィーチャーしたインスト・ヴァージョンで LPではB面ラストに置かれていたが、この “もう一度” というのは「ペパーズ」や「ラム」における “リプリーズ” みたいな位置付けなのだろう。
 まぁステレオであれモノであれ、ミックスは違えどシリア・ポールが歌う「夢逢え」こそがこの曲の最高峰であることは言うまでもない。時系列に従って考えればオリジナルは吉田美奈子ということになるが、世間的な認知は “シリア・ポールの曲” ということになるのではないか? とにかく恋する女性の気持ちをこれ以上ないぐらいストレートに表現した彼女のキュートな歌声がこの曲にピッタリ合っているし、何と言っても2分8秒から挿入される語りの部分 “もしも もしも 逢えたなら その時は力いっぱい 私を抱きしめてね... お願い...” における “お願い” の色っぽさがたまらない(≧▽≦) フニュフニャと腰砕け状態になっているところへ畳み掛けるように爆裂するハル・ブレイン直系ドラム(2分25秒)にもシビレてしまう。まさに日本人が作ったウォール・オブ・サウンドによるガール・ポップの魅力ここに極まれりという瞬間だ。
 「夢逢え」以外の曲では、クリスタルズの「オー・イェー・メイビ・ベイビー」を裏返しにした様な②「恋はメレンゲ」やドリーミーなガール・ポップ⑥「こんな時」といった大瀧氏のオリジナル曲も良いが、何と言ってもナンシー・シナトラの⑨「トゥナイト・ユー・ビロング・トゥ・ミー」(←「イチゴの片想い」という邦題で有名)やフィル・スペクターが在籍していたテディー・ベアーズの⑩「オー・ホワイ」といったカヴァーが最高だ。⑨⑩共に絶妙な音壁処理(?)によってロマンティックなムード満点の胸キュン・ポップスに仕上がっており、アルバムの隅々にまでスペクターな薫りが立ち込めているのが嬉しい。
 フィル・スペクターを意識したサウンド・プロダクションの面だけでなく、メロディー・タイプの曲だけを集めたアルバム作りという面でも4年後に発表されることになる名盤「ロング・バケーション」への伏線となったシリア・ポールのこのアルバム、リリースから35年の時を経た今でもその輝きを失わないエヴァーグリーンな1枚だ。
夢で逢えたら / シリア・ポール (アルバムバージョン)

夢で逢えたら、もう一度.wmv

Tonight You Belong To Me シリア・ポール

Oh Why-シリア・ポール(Celia Paul)
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