shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Ska Flavor loves ジブリ Songs / 美吉田月

2011-01-29 | TV, 映画, サントラ etc
 “ジブリ・カヴァー祭り” 第3弾は何とスカである。スカと言っても別に “スカを食わされた” という意味の、ネガティヴ・ワードのスカではなく、音楽の1ジャンルとしての “スカ” のことだ。
 私が初めてスカと出会ったのは1979~80年頃だった。降って湧いたように突如出現したこの音楽を当時の音楽雑誌が軒並み大絶賛し始め、素直で影響されやすい性格だった私は流行に乗り遅れまいとして、世評の高かったスペシャルズというバンドのデビュー・アルバムをエアチェックして多大なる期待を持って聴いてみた。ところがビートルズとハードロックばかり聴いていた当時の私(←今でも同じようなモンだが...)にとって、スペシャルズのアルバムはただリズム・パターンが変わっているだけの単調な音楽にしか聞こえず、 “スカ、スカって大騒ぎしてるけど、こんなモンか...” とそれ以降しばらくはスカを敬遠していた。
 そんな私がスカに瞠目したのはその2~3年後のこと、それもヒット曲やアルバムではなくテレビの CM からだった。ホンダ・シティの CM にマッドネスというスカ・バンドが起用され、“ホンダ・ホンダ・ホンダ・ホンダ....♪”という脳内リフレイン確実のキャッチフレーズや楽しさ溢れるムカデダンスでお茶の間に大ブームを起こしたのだ。そこで使われていた彼らのヒット曲「シティ・イン・シティ」を聴いて私のスカに対する偏見は木端微塵に吹き飛んだ。今にして思えば、スカのあのユニークなリズムというのは、分かりやすいメロディーを持った楽しい曲と一体となって初めて活きるのだろう。私は早速マッドネスのアルバムを買ってきて愛聴したが、やがて80年代初めの “ツートーン・スカ” のブームが去ると、私もスカを耳にすることはなくなっていた。
 それから約30年が経ち、今年に入って “ジブリ・カヴァーの名演” を色々漁っている時に偶然出会ったのがこの「Ska Flavor loves ジブリ Songs」というアルバムだ。最初アルバム・タイトルを目にした時は “ジブリをスカで演るんか? いくら何でもそれは悪ふざけが過ぎるやろ...” と眉に唾をつけて疑いの目で見たものだし、現にスカの親戚筋(?)にあたるレゲエでジブリをカヴァーした「ジブリ・レゲエ」がイマイチだったこともあって、あまり期待せずにとりあえず試聴してみたのだが、コレが結構面白い。こういう突飛な企画は大当たりか大外れかのどちらかなのだが、コレは最高に “当たった” のである。試聴を終えた私は迷うことなく買いを決めた。
 届いた CD をプレーヤーにセットしてプレイボタンを押すと、スピーカーから弾けんばかりの勢いで飛び出してきたのは例のスカ・ビートによって換骨堕胎され生き生きと躍動するジブリの名曲の数々だった。アップテンポで2・4拍目を強調した裏打ちを特徴とするスカ・ビートが珠玉のジブリ・メロディーと見事に融合しているのである。しかも女性ヴォーカルは変なクセがなく耳に心地良い癒し系ときたモンだ。コレ、めっちゃエエわ!
 とにかく全11曲、捨てトラックなしの素晴らしさなのだが、中でもスカの楽しさ全開で迫る⑤「ナウシカ・レクイエム」は目からウロコの面白さ。 “ウパ、ウパ、ウパ” という具合にリズムに裏から乗っていくことによって生み出されるたたみかけるようなスリルとスピード感が気持ちいい(^.^) 間奏のオルガンもめっちゃグルーヴィーで、オームの群れも怒りを忘れてみんなでムカデダンスしそうな(←するかそんなもん!)ノリノリのヴァージョンになっている。⑨「人生のメリーゴーランド」も⑤と同じインスト・ヴァージョンで、静謐な原曲のイメージからは想像もつかないような粘着質のビートに腰も砕ける。とにかくこの2曲は聴いてて思わず身体が揺れてしまうような強烈なグルーヴが圧巻だ。
 ②「となりのトトロ」や⑪「崖の上のポニョ」といった楽しさ溢れるジブリの定番曲は更に楽しく、心に沁みるメロディーがたまらない①「いつも何度でも」や③「君をのせて」、⑩「アリエッティズ・ソング」はアップテンポのスカにアレンジされてまったく別の表情を見せているが、これがもう実に斬新と言うか新鮮な感覚で、いつも何度でもリピートしたくなるようなカッコ良いヴァージョンに仕上がっている。
 ベット・ミドラーの「ザ・ローズ」やオリビア・ニュートン・ジョンの「カントリー・ロード」をスカ・アレンジ・ヴァージョンで聴けるのもこのアルバムの楽しみのひとつ。絵に描いたようなスロー・バラッドの大名曲「ザ・ローズ」が原曲の④「愛は花、君はその種子」は大胆不敵なアレンジでアップテンポなスカ・ヴァージョンになっているが、ホンワカ・ムードの女性ヴォーカルが絶妙にマッチしていて違和感は微塵も感じられない。⑧「カントリー・ロード」も出だしの透明感溢れる “カントリ~ロ~♪” と歌い上げるパートはごくフツーの雰囲気なのだが、ヤクザなギターが切り込んできて弾むようなスカ・ビートが炸裂すると、そこはもうコテコテのツートーンな別世界。コレ、めっちゃ好きやわ(^o^)丿 
 ユーミンの⑥「やさしさに包まれたなら」と細野晴臣の⑦「風の谷のナウシカ」は共にミディアム・スロー・テンポで料理されており、スカというよりはレゲエっぽい印象なのだが、このゆったりまったり感が何とも言えず耳に心地良く、ここでも美吉田月の癒し系ヴォーカルが実に良い味を出している。このシンガーのことは何も知らないが、 “日本のジャネット・サイデル” と呼びたいくらい良い雰囲気の歌声の持ち主だ。
 ジブリの名曲をスカ・ビートに乗せてその新たな魅力を引き出したこの「Ska Flavor loves ジブリ Songs」は聴く者をスカッとした気分にしてくれる痛快無比なアルバムで、ドライヴの BGM としても最高だ。私の知る限りイケイケ・オラオラ系のジブリ・カヴァーでは 6% is MINE の「ジブリティック・パンク・カヴァーズ」と並ぶ大傑作だと思う。みなさんも騙されたと思って一度聴いてみられたらどうでスカ?

Ska Flavor loves ジブリ Songs


ナウスカ・レクイエム


カントリー・ロード


【おまけ】めっちゃ懐かしいわぁ~ (^o^)丿
HONDA CITY CF(Japan)
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