shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

うた ~by 60 sixty 歌謡曲編 / サエラ

2011-01-07 | 昭和歌謡
 曲コレクションの醍醐味の一つは未知のアーティストとの出会いである。特にそのアーティストがまだ無名のマイナーな存在で、曲の解釈やアルバムの選曲が自分の嗜好にピッタリ合っていたりするともう嬉しくって仕方がない。音楽ファン冥利に尽きるとは正にこのことだ。
 昨年末の「さすらいのギター」祭りに向けてネットで色々調べていた時、偶然見つけたのがこのサエラの「うた ~by 60 sixty 歌謡曲編」というアルバムだった。「さすらいのギター」探しも大事だが、私は敢えて “歌謡曲編” と謳っているところに興味を引かれ、アルバムの詳細を調べてみることにした。
 曲目を見ると、お目当ての「さすギタ」以外にも竹内まりや、沢田研二、西田佐知子、山口百恵、ユーミン、そしてマージョリー・ノエルなんかもカヴァーしており、何とあの伝説の名曲「ヨイトマケの唄」までやっている。もう北斗百烈拳の如く私の経絡秘孔突きまくりの選曲だ。私はこの時点で買いを決めたのだが、サエラというユニットのことをもっと知りたくなって YouTube で検索してみた。すると驚いたことに、ジュリーの「時の過ぎゆくままに」から久保田早紀の「異邦人」まで、懐かしい歌謡曲の名曲の数々が出るわ出るわのワンコソバ状態だ。
 中でも気に入ったのが “「歌謡曲メドレー」サエラ、富士・ケルンコンサート” というライヴ映像で、オーディエンスも手拍子全開、アップされた方の解説にあるように、そのノリはまるで宴会である。メドレーは「五番街のマリーへ」~「恋のしずく」~「涙のかわくまで」~「虹色の湖」~「あなたの心に」~「人形の家」~「北国行きで」~「恋の季節」という実にニクイ選曲で、 “自分もこの場に居たかったなぁ...” と思わせるアット・ホームなコンサートだ。何よりも自分たちが大好きな歌を心の底から楽しみながら歌っているというのがダイレクトに伝わってくるところが良い。サエラの YouTube 映像はすべて見たが、彼女らには大ホールのステージよりもこういう小さなジャズ・クラブでの、オーディエンスとの距離が近いインティメットな雰囲気のライヴが合っているように思う。
 そんなこんなですっかりサエラのファンになった私は早速上記の CD をネットで最安値チェック、まだそれほど売れていないのか、内容が良すぎて誰も手放さないのか、ヤフオクにもアマゾンにも中古盤が出ていなかったので、貯まりに貯まったジョーシンのポイント1,300円分を使って新品を1,200円で購入、何かちょっと得した気分だ(^o^)丿
 サエラは1993年にママさんコーラスで知り合った女性2人が結成したヴォーカルとピアノのデュオで、17年間地元青森で活動していたが、去年ついにメジャー・デビューとなったらしい。グループ名の ca et la はフランス語であちらこちらという意味で、文字通り歌謡曲から民謡までジャンルを超えて “古くて良い歌” を現代に蘇らせてくれる伝承者的な存在なのだ。
 アルバムは全15曲で、⑤と⑪以外は全部知っている懐かしい歌ばかりである。アルバム冒頭を飾るのは竹内まりやの①「人生の扉」... 決して万人が知っている類の大ヒット曲ではないが、五十路を迎えたまりや姐さん入魂の隠れ名曲だ。特に英語詞部分で “I say it's fun to be 20, you say it's great to be 30, and they say it's lovely to be 40...” とたたみかけ、ラストを “But I feel it's nice to be 50.” と逆接でビシッとシメる構成力はもう見事という他ない。やはりこの曲にはまりや姐さんの唯一無比な歌声がベスト・マッチングだが、コレを1曲目に持ってくるあたり、50代の2人にとって思い入れの強い歌なのだろう。
 アルバムを一気通聴してみて思ったのは⑨「そよ風にのって」や⑭「さすらいのギター」のようなアップテンポのトラックももちろん素晴らしいのだが、ヴォーカルの菊池さんの透明感あふれる伸びやかな歌声はミディアムからややスローな曲でより威力を発揮するのではないかということ。そういう意味で西田佐知子の、いや昭和歌謡の大名曲③「涙のかわくまで」なんかもうコワいくらいハマッているし、岩崎宏美の⑮「思秋期」もオリジナルに迫る名唱だと思う。
 そんな中で私的ベスト・トラックは⑩「ヨイトマケの唄」。美輪明宏1966年のヒット曲だが、歌詞中の “土方” が差別用語ということで言葉狩りにあい、その後長い間放送禁止扱いになっていたという曰くつきのナンバーだ。私にはどこをどう聴いても母親の息子への限りなき愛情とそんな母への深い感謝の気持ちを綴った “親子愛の歌” にしか聞こえないのだが、この歌詞の一体どこが差別を助長するというのだろう?頭の硬直した民放連のバカさ加減には開いた口が塞がらない。桑田師匠の「音楽寅さん」で初めてこの歌を聴いた時の魂が震えるような感動は今でも忘れられない。サエラの菊池さんもその抜群の歌唱力で説得力溢れるヴァージョンに仕上げているが、何と言っても楽曲への感情移入が圧倒的に素晴らしい!ハートで歌うというのはこういうのを言うのだろう。
 ということでこの CD には大満足だったのだが、 YouTube の映像を見た後ではどうしても本物のライヴを体験したくなってくる。あの宴会のような手拍子が無いと何となく物足りなく感じてしまうのだ。古き良き昭和に思いを馳せながらサエラの歌声に酔う... コレって歌謡曲ファンにとって至福のひとときではないだろうか?

「歌謡曲メドレー」サエラ、富士・ケルンコンサート


人生の扉


ヨイトマケの唄


【おまけ】桑田師匠屈指の名唱...究極のブルースです
桑田佳祐 ヨイトマケの唄(美輪明宏のカバー)
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