shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Tokyo Jukebox / Marty Friedman

2011-01-10 | Cover Songs
 私は昭和歌謡は大好きだが、ここ10年ぐらいの J-POP には何の魅力も感じない。 B'z 、桑田師匠、まりや姐さんを別格として、それ以外は聴くに値しないとすら思っている。ツタヤでレンタルする DVD を物色しているといつも “ヒットシングル・トップ10” みたいなのが否応なしに耳に飛び込んでくるのだが、どれもこれもツマラン曲ばかりでメロディーも希薄、リズムも似たり寄ったりで私には皆同じに聞こえてしまう。要するに、今の無味乾燥な J-POP は私の嗜好には合わないのだ。
 しかしそんな J-POP を “いーじゃん!” と絶賛し、ついには活動の拠点をアメリカから日本に移してしまった世界的アーティストがいる。元メガデスのスーパー・ギタリストで最近では空耳アワー・スペシャルのゲストとしてもお馴染みのマーティ・フリードマンだ。そこで彼が2009年にリリースした J-POP のギター・インスト・カヴァー・アルバム「Tokyo Jukebox」で、メタル魂溢れるマーティがヘタレな J-POP を一体どう料理しているのか聴いてみることにした。
 収録曲は①「爪爪爪」(マキシマム・ザ・ホルモン)、②「Gift」(Mr.Children)、③「天城越え」(石川さゆり)、④「Story」(AI)、⑤「ポリリズム」(Perfume)、⑥「帰りたくなったよ」(いきものがかり)、⑦「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)、⑧「雪の華」(中島美嘉)、⑨「駅」(竹内まりや)、⑩「世界に一つだけの花」(SMAP)、⑪「ロマンスの神様」(広瀬香美)、⑫「明日への賛歌」(alan) の全12曲で、原曲をよく知っているのは③⑦⑨⑩⑪のみ。私の中では石川さゆりは演歌だし、サザンと竹内まりやはそれ自体が独立したジャンルみたいなモンで有象無象の J-POP とは別モノだと思っているが、アメリカ人のマーティにとっては邦楽はすべて J-POP なのだろう。
 そもそも①マキシマム・ザ・ホルモンなんて焼肉みたいな名前初めて聞いたし、②ミスチルはロック魂に溢れていた90年代の曲しか知らない。④AIはその読み方すら分からないし(←アイ?エーアイ?)、⑤Perfume は辛うじて名前だけは知っているが曲は知らない。⑥は確かポッキーの CM ソングが良いって plinco さんが褒めてたグループだと思うが、それ以外の事は何も知らない。⑧中島といえば “みゆき” だし、⑫アランとくれば “プロスト” だ。要するに半分以上はオリジナルを知らずに聴くカヴァー・アルバムなんである。
 で、アルバムを聴き終えての第一印象は “めちゃくちゃいーじゃん!”(笑) 一番気に入ったのは③で、やっぱり演歌とメタルは相性抜群だ。以前「演歌メタル」を取り上げた時に一緒に貼り付けた “石川さゆり本人の歌唱 vs マーティのロックギター vs 異彩を放つ琵琶” というスリリングな三つ巴バトルの映像は圧巻だったが、このヴァージョンもマーティの “「天城越え」と Zep の「ブラック・ドッグ」は似てるんだよ!” 発言が強い説得力を持って迫ってくるようなカッコイイ演奏で、ロックギターで演歌の “コブシ” を見事に表現しきったエモーショナルなプレイがめっちゃスリリング。 “戻れなくても もういいの~♪” のラインなんかもう鳥肌モノだ。楽器を通して “うた” を歌うというのはこういうプレイを言うのだろう。マーティには是非とも “オール演歌” のメタル化カヴァー・アルバムを作って欲しいものだ。
 ゴリゴリのメタル・リフに度肝を抜かれるイントロから一気に畳み掛ける展開に圧倒される⑩もめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 演奏が凄いのはもちろんだが、SMAPが歌った草食系 J-POP をイケイケのメタル・チューンにまで昇華させたマーティのアレンジ能力の高さにはもう唸るしかない。まさに “メタル魂注入” のお手本のようなキラー・チューンだ。
 サザン最大のヒット曲⑦は、99年鈴鹿のF1日本グランプリで B'z の松本さんが弾いた「君が代」を想わせる壮大な展開を見せる前半部(波の音は余計やと思うけど...)から遊び心溢れる軽快なフレーズが楽しい中間部を経て大団円に持っていくスケールのデカい曲想が凄い。これもマーティの音楽家としての懐の深さというか、抜群のセンスを如実に示す名アレンジだと思う。
 まりや姐さんの⑨、意表を突いたゴリゴリにメタリックなイントロに続いて聞きなれたあのマイナー・メロディーが出てきた時の何とも言えない心地良さをどう表現しよう?私のようなロック好きのまりやファンにとってこれ以上のカヴァーは考えられない。オリジナルに対する深い理解と愛情が伝わってくるヴァージョンだ。
 意表を突く大胆な解釈にビックリしたのが広瀬香美の⑪で、オリジナルが元気印全開のポップ・ソングだっただけに聴く前はイケイケの疾走系ハードロックを予想していたのだが、いざふたを開けてみると静謐なピアノのイントロから始まる美しいスロー・バラッドとして料理されており、マーティの歌心溢れるアコギ・プレイに涙ちょちょぎれる。これはもう参りましたと平伏すしかない。
 未知の曲の中では、爽やかにに疾走する感じがたまらない②、ノリノリのパワーロックなアレンジにウキウキワクワクさせられる⑥、マイナー・メロディを泣きのギターで哀愁舞い散る歌謡メタルに仕上げた⑧あたりが特に好き。どれもマーティの変幻自在なプレイにロックな衝動がこみ上げてくるトラックで、血湧き肉躍るとはまさにこのことだ。(因みにこの後 YouTube でオリジナルを聴いてみたのだが、どれもこれもみんなかったるい歌と演奏ばかり。やっぱり今時の J-POP は自分には合わんわ...)
 J-POP にメタル魂を注入してバリバリのロック・ナンバーに生まれ変わらせた “歌の錬金術師” マーティ・フリードマン、神田川俊郎風に言えば “J-POP ちょっとの工夫で このウマさ” である。次はどんな魔法を見せてくれるのか大いに楽しみだ。

マーティ・フリードマン 「天城越え~雪の華」2009-Sep ←マーティの「激辛」ギターに注目!


Marty Friedman - Kaeritakunattayo


Marty Friedman - Sekai Ni Hitotsu Dake No Hana


【おまけ】仲良しのポール・ギルバートと共に弾きまくるマーティ。この2人、凄すぎる...
Paul Gilbert with Marty Friedman GIG part 2