shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ノルウェーの森 / 1966 カルテット

2011-01-03 | Beatles Tribute
 1ヶ月ほど前のこと、私はパソコン好きの友人の付き添いで日本橋まで出かけて行った。パソコンのパーツ専門店というのはマニアにとってはパラダイスらしいが、何の関心もないド素人にとっては退屈極まりない所。友人は怪しげなパーツを手に熟考中だ。私は30分ぐらい我慢していたのだが、手持ち無沙汰で待っているのについに耐えきれなくなり、近くにある CDショップのジョーシン・ディスクピアで待つことにした。このお店は在庫数膨大で売り場面積も広いので時間つぶしには最適なのだ。
 2Fのロック・ポップス売り場は人が多くて鬱陶しいのでパス。客数が少なくていつも閑散としている3Fのジャズ・クラシック売り場へ行く。予想通りガラガラである。嬉しくなった私はジャズの CD を片っ端から見ていくが、どれもこれも過去の名盤のリマスター盤や廉価盤ばかりで何の新鮮味もない。しょーもないなぁ...と思いながら店内をぶらついていると、いきなり目に飛び込んできたのがこのモノクロ・ハーフシャドウのジャケット。言わずと知れた「ウィズ・ザ・ビートルズ」のパロジャケである。そこはジャズではなく私が足を踏み入れたことのないクラシックのコーナーだった。
 興味を引かれた私が CD を手に取ってみると写っていたのはうら若き女性4人。左上にはパーロフォンの代わりに日本コロムビアのデンオン・マーク、右上にはご丁寧に stereo の文字が踊っている。これで面白そうだと思わなければビートルズ・ファンではない。タイトルは「ノルウェーの森 ~ザ・ビートルズ・クラシックス」となっており、1966カルテットという、ヴァイオリン2台にチェロ、ピアノの女性4人組クラシカル・ユニットによる演奏だ。曲目を見ると、いかにもクラシック・ファンが好みそうなバラッドの定番曲に混じって③「抱きしめたい」や⑫「ア・ハード・デイズ・ナイト」、そして④「ラヴ・ミー・ドゥ」~⑤「プリーズ・プリーズ・ミー」~⑥「フロム・ミー・トゥ・ユー」~⑦「シー・ラヴズ・ユー」(←メドレーになってます)といった初期のシングル曲なんかも演っている。
 私は元来この手の “ビートルズをクラシックで” みたいな盤は苦手なのだが、このアルバムはジャケットの拘りようといい(←裏ジャケの4人のシルエットはビートルズというよりラモーンズっぽいけど...笑)、一味も二味も違う選曲といい、 “ちょっと違う感” が濃厚に漂う。 “欲しいなぁ...” と思ったが、いくら何でも CD1枚に3,000円も出す気にはなれない。日本の CD の値段はどう考えても高すぎる。結局、帰ってネットで探して運良く中古盤を発見、11月に出たばかりの新譜で1,800円ならラッキーラララである。
 実際に聴いてみての感想だが、クラシックにありがちな長尺の組曲風ではなくて1曲1曲が3~4分で完結しているのでロック/ポップス・ファンの私でも違和感なく楽しめる。何よりも感心したのは、あくまでもオリジナルに忠実に、それでいてヴァイオリンやチェロ、ピアノといったクラシック楽器の良さを巧く活かしたアレンジがなされているところで、そういった楽器の音色が珠玉のビートルズ・ナンバーの魅力を見事に引き出しているように思う。アレンジャーは加藤真一郎という国際的に活躍している新進気鋭のピアニストの方らしいが、マニアックな視点から言わせてもらえば、ジョージ・マーティン以外の人物がストリングス・アレンジをした「シーズ・リーヴィング・ホーム」を彼がどう料理するか聴いてみたかったところだ。
 とにかくどのトラックもハズレ無しの出来なのだが、特に気に入ってるのは変幻自在な器楽アレンジに耳が吸い付く⑪「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」と⑰「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」。コレをクラシック・ファンだけに独占させておくのは勿体ない。アップテンポでノリの良い演奏が楽しめる③④⑤⑥⑦⑫のような初期ビートルズ・ナンバーのクラシック・ヴァージョンも中々エエ感じだし(←特に⑤「プリーズ・プリーズ・ミー」のチェロがカッコイイ!)、聴く前から音が聞こえてきそうな②「イエスタデイ」や⑯「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、⑲「グッド・ナイト」なんかもオリジナルへのリスペクトと歌心に溢れた演奏で、私のようにクラシックが苦手なビートルズ・ファンでも十分楽しめる内容だ。
 日本におけるビートルズ初代担当ディレクター、高嶋弘之氏がプロデュースしたこのアルバムは、オシャレな喫茶店の BGM なんかに使うとぴったりハマりそうな気もするが、単なる BGM として終わらせるにはもったいないクオリティーの高さを誇っている。やはり高嶋氏を始めとする制作者サイドのビートルズ愛の賜物か、クラシック畑のアーティストが “ちょっとビートルズ演ってみました” というような有象無象の “似非トリビュートもの” とは激しく一線を画す、清々しさ溢れる1枚だ。

ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー


ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス


初期ビートルズ・シングル・メドレー
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