shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Return To Abbey Road / The Beatles

2009-11-08 | The Beatles
 世界で一番有名なアルバム・ジャケットといえば「アビー・ロード」だろう。アビー・ロード・スタジオ前の横断歩道を渡る4人の姿を収めたこのジャケットは後に数多くのパロディ・ジャケットを生み出すほどの大きなインパクトがあったし、ポール死亡説の一因となる要素が色々と隠されていたりで謎解きの楽しみも加わって話題性は尽きなかった。
 当初のアルバム・タイトルはスタッフの誰かが吸ってたタバコの銘柄から取って「エベレスト」(←ひょっとすると「マルボロ」とか「キャメル」になってたかも... 笑)、ジャケ写もエベレストへ行って撮るというアイデアだったらしいが、 “そんなんめっちゃ面倒くさいし... もうどっか近所で済まそうや... いっそタイトルを「アビー・ロード」にして、ジャケ写もこのスタジオを出た前の道で撮ったらエエやん!” ということになり、この後世に残る名ジャケットが生まれたらしい。ビートルズにおいてはほんの思いつきや偶然が必然になり、伝説と化すことが日常茶飯事だったが、これなんかその典型といえるだろう。で、結局横断歩道を3往復して6枚の写真が撮られ、その中で4人の歩調が揃っている写真が採用されたのだが、結果的には “アビー・ロード・スタジオに背を向けて去っていく4人” ということで、クレジット上のアルバム・ラスト曲 “ジ・エンド” と共に “これで終わり。ほな、さいなら~” という彼らの心境を表すものになった。いやはや、ホンマにビートルズのエピソードは面白い。
 で、その時に撮影された、4人が逆方向(つまりアビー・ロード・スタジオの方)に向かって歩いていてポールもちゃんとサンダルを履いているレアな写真をジャケットに使ったのがこのアルバムで、4人がアビー・ロード・スタジオへと帰ってくるジャケットに引っかけて「リターン・トゥ・アビー・ロード」というタイトルをつけたセンスが素晴らしい。「アビー・ロード」関係のブートレッグは他にも持っていたのだが、値段が安かった(確か1,500円ぐらい...)こともあって思わずジャケ買いしてしまった。
 中身の方は「アビー・ロード」のスタジオ・アウトテイクを方々からかき集めてきて、それらを半ば強引に正規盤の曲順に並べたもので、アセテート盤のデモ・ヴァージョンとか演奏なしのヴォーカル・トラックのみとか、録音状態も全然違う種々雑多な音源がごった煮風に収められている。まず①「カム・トゥゲザー」、⑨「アイ・ウォント・ユー」、⑩「ヒア・カムズ・ザ・サン」は “モノ・ミックス” ということだが、聴感上は耳に馴染んだ公式テイクとなんら変わらない演奏で、なんか正規のステレオ・ミックスをモノラル・テープに落としただけのような気がする。②「サムシング」は「アンソロジー3」に入ってるのと似たような雰囲気のデモ・テイクで最初は同音源かと思ったが、ジョージのヴォーカルが微妙に違う。ただ、アセテート盤起こしらしく、音質はアンソロとは比較にならないほどプアーだ。③「サムシング~エクストラ・ジャム」はオーヴァーダブを行う前のベーシック・トラック(結局これはボツになったが...)で、曲が終わった3分13秒からいきなりインストのジャム・セッションへと入っていくが、これって一体何なんやろ?全編を通じてポールのベースが唸りまくっている。
 「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」は、④がムーグをオーヴァーダブする前の初期テイク(1分45秒あたりから15秒ほど音が割れるのが残念!)で、⑤はイントロ付きのステレオ・別ミックス。ムーグもオーヴァーダブしてあって、音質は抜群に良い(^o^)丿 「オー・ダーリン」は、⑥がヴォーカル・トラックのみ(めっちゃ音こもってる!)で、⑦は絶叫型の公式テイクとは違うソフトなヴォーカルで、ポールが意図的に様々なヴォーカル・スタイルを試していたことがわかる。これも音質抜群だ。⑧「オクトパス・ガーデン」は例の効果音もバック・コーラスもまだない初期ミックスで、ややスカスカ感はあるが、これはこれで味があってエエと思う。「ビコーズ」は⑪がヴォーカル・トラックのみで、元々アカペラっぽい曲想だったのでほとんど違和感なく聴けてしまう。なんかビージーズみたいなビートルズだ(笑)。⑫も途中まではヴォーカル・トラックのみで、へ?と思っていると1分を過ぎて急にバックのインストが立ち現れる。何か変な感じだ(>_<) 
 ⑬「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」は、まだ例の “one, two, three, four...” コーラスはオーヴァーダブされる前のテイクで、後半のギター・ソロが延々と続き、そのままジャム・セッションへと突入していくところが何と言っても聴き所!このグルーヴは凄いとしか言いようがない(≧▽≦) 私がこのアルバムで一番好きなトラックだ。⑭「ア・ヒュージ・メドレー・パート1」は何と言っても「ハー・マジェスティ」が元あった位置に収められているのがミソだが、これって確かポールがテープを切り取ったはず... ということは切り取られる前のテープをコピーしたものか、あるいはブート業者が編集して作ったものかのどちらかということになる。まぁどっちにしてもキレイに収まってるなぁ...(^.^) 尚、「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」と「サン・キング」のクロスフェードはこの時点では虫の声ではなく「ブルー・ジェイ・ウェイ」みたいなオルガンだ。
 ⑮「ゴールデン・スランバーズ」~「キャリー・ザット・ウェイト」は後半のユニゾン・コーラスをオーヴァーダブする前のベーシック・トラックでポールのヴォーカルが際立っているが、0分35秒から5秒間ほどテープがよれるのが痛い(>_<) ⑯「ア・ヒュージ・メドレー・パート2」は「ゴールデン・スランバーズ」~「キャリー・ザット・ウェイト」~「ジ・エンド」と続くメドレーの初期ミックスで、「ジ・エンド」はまだヴォーカルはおろか例の大ギター・バトル大会も入っていない状態で、ポールのベースがブンブン唸っててビックリ(゜o゜) こういうテイクもたまに聴く分には面白い。そしてご丁寧に18秒間の無音部分の後、ノー・クレジットで「ハー・マジェスティ」が入っており、公式テイクではカットされていたエンディングのコードが聴けるのが嬉しい。
 ということで中身はあまり期待せずに買ったこのアルバムだったが、内容的にも興味をそそられるトラックが多く、今でも時々取り出して聴いている。それにしても「レット・イット・ビー」といい、「アビー・ロード」といい、後期ビートルズは様々な音源が出回っているので、テイク○○とか△△ミックスとかゴチャゴチャになり頭の中が混乱してしまう。いつか暇ができたら一覧表にでも整理して(笑)CD-R に入れていこう。

You Never Give Me Your Money(long 6 min version)-The Beatles
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