shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

LOVE (Pt. 2) / The Beatles

2009-11-15 | The Beatles
 この「ラヴ」で私が最もよく聴くのは複数の曲のパーツ群を変幻自在に組み合わせた、いわゆる “マッシュ・アップ曲” で、昨日取り上げた②③の連続パンチに完膚無きまでに打ちのめされ、何とかカウント8ぐらいで起き上がって更に聴き進んで行くと、そこにドッカとやってきたのが⑦「ドライヴ・マイ・カー / ザ・ワード / ホワット・ユーアー・ドゥーイング」だった。ポールのソウルフルなヴォーカルがたまらない「ドライヴ・マイ・カー」で始まり、 “ピピッ ピピッ イェ~♪” に続く間奏でいきなり「タックスマン」の過激なギター・ソロが爆裂、こーゆーの、大好きやわぁ(^o^)丿 ギター・ソロに耳を奪われているうちに気がつけばいつの間にか曲は「ホワット・ユー・アー・ドゥーイング」に変わっている。ここんとこの繋ぎ方がめっちゃスムーズでビックリ、何でもキーが同じらしいのだが、それにしてもこれはお見事!の一言。あの地味なアルバムの中の地味な曲がまるで生まれ変わったかのように主役を張っている。「ラヴ」はこの曲の素晴らしさを教えてくれたかけがえのないアルバムなのだ。生まれ変わった(笑)「ホワッチャ・ドゥーイン」をひとしきり聴いた後、リンゴのドラムの連打を合図にするかのように「ザ・ワード」を経て再び “ピピッ ピピッ イェ~♪” というコーラスが滑り込んできて曲は「ドライヴ・マイ・カー」へと戻っていく。わずか1分54秒の間にジャイルズ・マーティンの感性の煌きが凝縮された素晴らしいトラックだ。
 ⑧「グニク・ナス」... 具肉茄子...??? 何じゃそりゃ?と思ったが、これは「サン・キング」のテープを逆回転させたこのトラックに引っかけて、タイトルの「Sun King」を逆に綴ったもの。その遊び心は買うが、肝心の音の方は全然面白くない。まぁ次の⑨「サムシング / ブルー・ジェイ・ウェイ」のイントロとして入れたのだろうが、私にはこの55秒は長すぎるのでいつもCDのスキップ・ボタンで飛ばしている(>_<) で、その「サムシング」、オーケストラの広がり感、ベースの躍動感、ドラムの力強さと、当時出ていた旧規格CDよりも遥かにダイナミックなサウンドで、このアルバムのもう一つの宝は音そのものにあると確信させられた。「サムシング」が終わるとクロスフェードしてくる「ブルー・ジェイ・ウェイ」、右チャンネルにミックスされた「ノーウェア・マン」は全然合ってなくて不自然そのもの!ジャイルズさん、上手の手から水漏れですぜ...(>_<)
 ⑩「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト / アイ・ウォント・ユー / ヘルター・スケルター」では、まずベースになる「ミスター・カイト」に元々サーカスのSEがふんだんに使われていたことからもこの音楽の使途(サーカス・ミュージカルのサントラ)にピッタリで、音の定位をいじったり馬のいななきを加えたりしながらよりリアルで生々しいサウンドに仕上げてあるのがミソ。そしてジョンのヴォーカルが終わると同時に乱入してくる「アイ・ウォント・ユー」のへヴィーなリフがこれまた実にスリリングで、その音の奔流に思わず “おぉ!” とのけぞりそうになったところへ更にサウンド・コラージュ的に散りばめられた「ヘルター・スケルター」のポールのシャウトが炸裂するのだ。これにはもう参りましたと平伏すしかない。
 ⑪「ヘルプ」はステレオ・ヴァージョンの公式テイクだが、スカスカな ’65オリジナル・ミックスや中途半端な ’87旧規格CDミックスに対するジョージ・マーティンの忸怩たる思いを吹き飛ばすようなウェル・バランスで力強さに溢れたミックスだと思う。これでやっと御大も何も思い残すことなく引退できるというものだ。続く⑫「ブラックバード / イエスタデイ」は「ブラックバード」のインスト部分をイントロにして「イエスタデイ」が始まるという作りで、発想としては安直すぎて決して感心するようなものではないが、「ヘルプ」と同じくバランスが大きく改善されており、ポールのヴォーカルが中央よりに寄せられて聴きやすくなっている。
 ⑬「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」は初期のリハーサル・テイクに公式テイクを巧くつなげたものだが、2分40秒を過ぎてからの後半部の盛り上がりは凄まじい。「イチゴ畑」のリズムにまず「ペパーズ」が絡み、続いて「イン・マイ・ライフ」のバロック風ピアノや「ペニー・レイン」のピッコロ・トランペットが断片的に添い寝、トドメは「ピッギーズ」のハープシコードと「ハロー・グッバイ」の “ヘッロー、ヘッロヘッロォ~♪” と “クッチャッ クッチャッ!” 、それに「イチゴ畑」のリンゴのドラミングという三位一体攻撃が生み出す息をもつかせぬドラマチックな展開に言葉を失う。中期ビートルズの大きな魅力であるカラフルで煌びやかなポップさの大量投下が生み出す万華鏡のようなサウンド... ビートルズの楽曲という最高の素材を使った名シェフ、ジャイルズ・マーティン入魂の逸品だと思う。(つづく)

The Beatles 'Love' - Drive My Car/The Word/What You're Doing