shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Yellow Submarine Songtrack / The Beatles

2009-11-05 | The Beatles
 思い起こせば今年4月の “ビートルズ、ついに全アルバムがリマスター!!!” という大ニュース以来、半年間ひたすら09.09.09. を待ち続け、実際に聴いてみてモノ・ステレオ共にその音の素晴らしさに改めて感動し、人生で何十回目かのビートルズ祭り継続中の今日この頃なのだが、長い間 “聖域” とされてきたビートルズの “音” に初めて大胆に手を入れ、後に続く「レット・イット・ビー・ネイキッド」や「ラヴ」といった “新世紀リミックス” の露払い的な役割を果たしたのが1999年にリリースされたこの「イエロー・サブマリン・ソングトラック」だった。
 「アンソロジー」以降の “ビートルズ・ミレニアム・プロジェクト” CD 群について触れる時に避けて通れないのが、 “そもそもリマスターって何なん?” 、“リミックスとどうちゃうの?” という素朴な疑問である。私の考えでは、レコーディングしたマルチ・トラックの音を、楽器間のバランスやヴォーカルの定位などを考えながら混ぜ合わせ(まさにミックスするんやね...)、エコー処理なんかも施しながら2トラック(普通はステレオやから2トラね...)のテープに仕上げるのがミキシング、それをベースにして音質・音圧の微調整を行い、最適な音に仕上げるのがマスタリングなのだと区別している。ということは、リミックスというのは再び(リサイクルの “リ” ですね)ミックスをやり直すわけだから、かなり初期段階にまで立ち返って個々の楽器のバランスを変えたり、エコーをもっと深くかけたりして新たなミックス、つまり “新ヴァージョンを作ること” なのだ。だから様々なテイクを繋ぎ合わせ、エコーをかけたり取り除いたりとやりたい放題にいじりまくった「レット・イット・ビー・ネイキッド」なんてリミックスの極めつけと言えるだろうし、この「イエロー・サブマリン・ソングトラック」も筋金入りのリミックスだ。それとは対照的に、60年代のオリジナル・ミックスの音を最新のテクノロジーを使って磨きあげ(音像がクッキリ!)、音圧を上げることによって迫力もアップさせて(87年の旧CDは入力レベルが低く力感に乏しかった...)、デジタル臭さを出来るだけ抑えてよりアナログに近い自然な音に仕上げた “リマスタリングの鏡” が09.09.09. のモノ / ステレオ・ボックスなのだ。
 このCDが出た時、思いっ切り賛否両論の嵐が吹き荒れた。私の記憶が正しければ、デジタル・サウンドで育った若い世代には “音がクリアになった” 、“迫力が出た” と概ね好評だったのに対し、アナログでオリジナル・ミックスを長年聴いてきた世代には “オリジナルに対する冒涜だ” 、“こんなの俺らが聴いてきたビートルズじゃない!” と否定的な意見が多かったように思う。私はと言うと、宗教じゃあるまいし冒涜もクソもあるかと思ったし、これも立派なビートルズやん、と肯定的に受け止めていた。実際、初めて聴いた時は①「イエロー・サブマリン」のコーラス・パートの音の広がり方に度肝を抜かれたし、続く②「ヘイ・ブルドッグ」のド迫力サウンドも圧巻だった。当時の私はちょうどルディ・ヴァン・ゲルダーによるブルーノート音源のリマスター盤(←ジャズの話です...)にハマッていたこともあって、87年版旧CDに比べて音圧が格段にアップしたことも大歓迎だった。しかし、好事魔多しとはこのことで、逆に音がスッキリした分③「エリナー・リグビー」のストリングスのザクザク感や⑪「オンリー・ア・ノーザン・ソング」の混沌としたサイケな感じが削がれてしまっているように聞こえるなど、リミックスの欠点も見えてきた。⑮「イッツ・オール・トゥー・マッチ」も⑪同様にオリジナルの持っていたごった煮風のサイケな味わいが後退してしまっているが、その代わりと言っちゃなんだが、ビートがかなり強調されたおかげで特に手拍子のアタック音なんかめっちゃスリリング(≧▽≦)、得る物があれば失う物もあるということで、リミックスというのは実に難しい。
 結局このCDは “面白い音” として飛びついた(←①のSEのリアリティーなんてめっちゃ凄いし...)のだが飽きるのも早かった。まぁ突きつめれば人それぞれの好みの問題だと思うが、やはり私には長年慣れ親しんだオリジナル・ミックスの音が一番合っているようだ。逆説的な物言いになってしまうが、これを聴いた後に新リマスター盤を聴くと、大きな変更を施すことなしにオリジナル音源を現代的な音で楽しめるように蘇生させた今回のリマスタリング作業の素晴らしさが改めて実感できると思う。

The beatles soundtrack yellow submarine