shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Tk 3: Luke is in the Desert

2020-05-19 | Beatles Tribute
【Luke is in the Desert】
Picture yourself on a sand-covered planet    砂に覆われた惑星にいると思ってごらん
The Jawas find droids              ジャワ族がドロイドを見つけ
Your uncle then buys              叔父さんがそれを買う
This R2 unit, a bad motivator          このR2ユニットは不良品で
Its head explodes and then it dies        頭部が爆発して動かなくなってしまった
Old vaporators and protocol droids        古くなった水分凝結機と人型ドロイドを
Fix them like your uncle said          修理するように叔父さんに言われてるんだ
Life on the world with twin suns         空に2つの太陽がある世界での生活なんて
In the sky is a bore               うんざりさ

Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる

Take the droids down to your shop       ドロイドを作業場へ連れて行って
Where you clean them             そこで汚れを落としてやると
A hologram woman,              突然ホログラムの女性が現れた
Now there’s a surprise             これには驚いた
Asking for help from              助けを求めてるんだ
A guy called Kenobi               ケノビという人に
It’s private and not for your eyes        それは極秘の内容らしい
You want to see the whole message played back メッセージを全部見たいと思い
Broadcasting from Artoo’s head         R2の頭部から映写してたんだけど
Take the restraining bolt off           彼の言う通りに行動規制ボルトを外すと
Like he asks and she’s gone           彼女は消えてしまったんだ

Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる

Called in for dinner by your aunt and uncle   叔父さん夫婦に食事に呼ばれ
You bring up Kenobi, and they both lock eyes  ケノビの話をすると 2人は目を見合わせる
Your uncle says he needs you for the harvest  刈り入れ時には居てくれなきゃ困るから
Just one season, then you can fly        もう少しだけ辛抱してくれという
All of your friends left here ages ago      友人たちはずっと前にここを出て行ったのに
Biggs and Tank, so far ahead         ビッグスもタンクも ずっと遠くへね
You’re so upset                あんまり腹が立ったんで
That you leave the blue milk and you’re gone 食事の途中で出て行ったのさ

Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる
Luke is in the desert and whining        ルークは砂漠で愚痴ってる

"Luke is in the Desert" - Track 3 - Princess Leia's Stolen Death Star Plans

Tk 1 & 2: Princess Leia's Stolen Death Star Plans / With Illicit Help From Your Friends

2020-05-18 | Beatles Tribute
【Princess Leia's Stolen Death Star Plans】
It was many years ago today       遠い昔
In a galaxy so far away          遥か彼方の銀河系で
It’s a period of civil war           内乱の嵐が吹き荒れるさなか
They don’t want the Empire any more  銀河帝国の支配を終わらせるために
The Rebels made a daring move     反乱軍は大胆な作戦を決行
They’ve got some data in their hands   彼らはある情報を手に入れた
Princess Leia’s stolen Death Star plans   レイア姫がデス・スターの設計図を盗んだんだ

They’re Princess Leia’s stolen      それはレイア姫が盗んだ
Death Star plans             デス・スターの設計図
She’s got them and it’s time to go     首尾よく手に入れ、あとは逃げるだけ
Princess Leia’s stolen Death Star plans   レイア姫がデス・スターの設計図を盗んだんだ
The Empire doesn’t even know      帝国軍の連中は気付いちゃいない
Princess Leia’s stolen           レイア姫が盗んだ
Princess Leia’s stolen           レイア姫が盗んだ
Princess Leia’s stolen Death Star plans   レイア姫がデス・スターの設計図を盗んだんだ

We’re running from the Empire      私達は帝国軍から逃げている
It’s us they want to kill          奴らが殺したがってるのは私達
A Star Destroyer’s chasing us       スター・デストロイヤーが追ってくる
We’ve got to get away from them     何とか逃げおおせて
We’ve got to make it home        故郷の星へ帰らなきゃいけない

'This is madness!' mutters Threepio    「何てこった」と3POが嘆く
But we’re caught,             私達は捕まってしまった
There’s nowhere else to go        もう逃げ場はない
If I put the plans inside Artoo       R2の中に設計図を隠すしか
Then there’s nothing more that I can do もう他に手はない
He’s gotta go find Obi-Wan        彼にオビワンを見つけてもらおう
He’s carrying the contraband       密輸品みたいにこっそりと持ち出すのさ
Princess Leia’s stolen Death Star plans   レイア姫はデス・スターの設計図を盗んだんだ

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【With Illicit Help From Your Friends】
Vader’s here…                ベイダーがやってきた...

What would you think if I boarded your ship, 俺が乗船したらどう思う?
Would you give those transmissions to me? 転送した設計図を大人しく返してもらおうか
How can this be a real consular ship,     これが外交任務の船だと?
No ambassador that I can see         大使がいないじゃないか
Oh, you’re all spies              お前たちはスパイだな
With illicit help from your friends        仲間たちの違法な助けを借りた
Hey, but nice try                まぁ頑張ったと誉めてやろう
With illicit help from your friends        仲間たちの違法な助けを借りてな
You’re gonna die               だがお前たちは死ぬのだ
Along with all of your friends          その仲間たちと共に

What did you do with those plans you were sent? 手に入れた設計図はどこへ隠した?
I’m a diplomat from Alderaan          私はオルデランの使節よ
You’re not on a merciful mission this time    今回の任務はそんな甘いもんじゃない
But I’m hoping you’ll believe I am        どうか信じてちょうだい
No, ‘cause you lie                いいや、お前は嘘をついている
With illicit help from your friends         仲間たちの違法な助けを借りてな
You’re a spy                   お前はスパイだな
With illicit help from your friends         仲間たちの違法な助けを借りた
You’re gonna die                 お前たちは死ぬのだ
Along with all of your friends           その仲間たちと共に

Do you need something Vader?        必要な物はございますか、ベイダー卿?
I want those plans in my glove         設計図をこの手に取り戻すのだ
Can you see she’s a traitor?           彼女が反逆者だと分かるのですか?
I need those plans in my glove         設計図をこの手に取り戻さねばならん

One pod was jettisoned during the fight     脱出ポッドが1機、戦闘中に発射された
I believe you’ll find the plans inside       あの中に設計図があるはずだ
We’ll bring the passengers, all that we find    乗ってる奴は全員連れてこい
And you know that I want them alive      殺すんじゃないぞ

Oh, you’re a spy                 お前はスパイだ
With illicit help from your friends          仲間たちの違法な助けを借りた
Mmm, and you lie                お前は嘘をつく
With illicit help from your friends         仲間たちの違法な助けを借りてな
Oh, gonna die                  お前たちは死ぬのだ
With illicit help from your friends         仲間たちの違法な助けがあろうと

Do you need something Vader?          必要な物はございますか、ベイダー卿?
I want those plans in my glove          設計図をこの手に取り戻すのだ
Can you see she’s a traitor?           彼女が反逆者だと分かるのですか?
I need those plans in my glove          設計図をこの手に取り戻さねばならん

Oh, you’re a spy                  お前はスパイだ
With illicit help from your friends         仲間たちの違法な助けを借りた
And they lie                    そして嘘をつく
With illicit help from their friends         仲間たちの違法な助けを借りて
Mmm, gonna die                 だが死ぬことになる
With illicit help from your friends          仲間たちの違法な助けがあろうともだ
Gonna die along with all of your friends      その仲間たちと共に死んでもらおう

Yes, they’re all spies             そう、奴らはみんな
With illicit help from their friends,       仲間たちの違法な助けを借りたスパイ...
With illicit help from their friends       仲間たちの違法な助けを借りたスパイなのだ

"Princess Leia's Stolen Death Star Plans/With Illicit Help From Your Friends" - Track 1 & 2

Princess Leia's Stolen Death Star Plans / Palette-Swap Ninja

2020-05-17 | Beatles Tribute
 私はパロディというジャンルが大好きで、これまでもことあるごとにこのブログで取り上げてきたのだが、今回紹介するのはその最高峰を極めたと言っても過言ではない大傑作パロディ・アルバムだ。タイトルは「Princess Leia's Stolen Death Star Plans(レイア姫がデス・スターの設計図を盗んだ)」で、何とビートルズの「サージェント・ペパーズ」のアルバム1枚丸ごと全13曲を替え歌にしてあの「スター・ウォーズ・エピソード4~新たなる希望」のストーリーを再現した壮大なスペース・オペラ作品に仕上げているのである。
 これまでのビートルズ・パロディといえばもちろん曲単位のものしかなかったので、ポピュラー音楽史上最高のトータル・アルバムである「サージェント・ペパーズ」を元ネタとしてスター・ウォーズ・シリーズの原点とでもいうべき「エピソード4」とのパロディ・マッシュアップ・アルバムを作ろうという発想が何よりも凄い。ひょっとすると最初は“ビートルズとスター・ウォーズの組み合わせで何か面白いモンできひんかな... せや、“サ・ァ・ジェ・ン・ト・ペ・パー・ズ” と “プ・リ・ン・セ・ス・レ・イ・ア” で同じ8文字やし “ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド” は “ストールン・デス・スター・プランズ” でバッチリ合うやん...” みたいな軽~いノリだったのではないか。そして最初はタイトル曲1曲だけのつもりだったものが、「サージェント・ペパーズ」の他の曲もあれこれ替え歌にしているうちに “おっ、いけるでコレは...(^.^)” ということになって企画がどんどん膨らんでいったのかなぁと想像をたくましくしてしまった。
 この作品は Palette-Swap Ninja というデュオによるもので、アルバム全体で1つの映画のストーリーを完全再現してみせただけでも前代未聞の快挙だというのに、更に映画の各シーンを上手く組み合わせて全曲のミュージック・ビデオを製作しており、これがもう見事というか、絶妙な神編集で歌詞としっかりリンクしているのだ。
 細かい点に目を向けてみると、例えば随所でビートルズのオリジナルの歌詞としっかり韻を踏んでいたりとか、「Fixing A Hole」の中にさりげなく「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」を組み込んだ楽曲アレンジだったりとか、神秘的なフォースのくだりをジョージのインド曲と組み合わせたりとか、「Reprise」の冒頭のカウントが反乱軍の秘密基地のある “ヤヴィン4” に引っ掛けた “One, two, Yavin, four!” になってたりだとか、至る所にビートルズとスター・ウォーズ両方のマニアをニヤリとさせるような遊び心溢れる仕掛けがしてあるのだからこれはもう凄いという他ない。
 とにかくこれほど完成度の高いパロディ・アルバムはこれまで見たことがない。その高い音楽性と抜群のユーモア・センスで聴く(or 観る)者を飽きさせない、まさに笑撃のケッサクである。ただ、歌詞の内容が分からないとその面白さも半減、いや、それ以下に激減してしまいかねないので、在宅ワークの合い間を縫って全曲の対訳をやってみることにした。ということで明日から自作の対訳を1曲ずつ、そのミュージックビデオと共にアップしていくつもりですので興味のある方は楽しんでくださいな。

Center Stage / Tommy Emmanuel ~超絶アコギで聴くビートルズ・メドレー~

2017-08-12 | Beatles Tribute
 前回取り上げたジプシー・ジャズ・スタイルによるビートルズ・カヴァーをYouTubeで色々と検索していた時に偶然凄い動画を見つけた。アコースティック・ギター1本でビートルズの名曲をメドレー形式でカヴァーしているのだが、とにかくその超絶テクニックが凄すぎてパソコンの画面に目が釘付けになってしまった。それがこの↓映像だ。
Tommy Emmanuel - Beatles Medley - While my guitar gently weeps


 恥ずかしながら私はこのトミー・エマニュエルというギタリストの名前すら知らなかった。ネットで調べてみると、この人はフィンガー・ピッキングを得意とするオーストラリアのギタリストで、2,000年のシドニー・オリンピック開会式でも演奏したとのこと。ジョージ・ハリスンにも多大な影響を与えたチェット・アトキンス御大から “間違いなくこの地球上で最高のギタリストの1人” と絶賛されたというからそのテクニックは折り紙つきだ。
 2013年にニューヨークのBBキング・ブルース・クラブで行われたこのライヴでもキレッキレのパフォーマンスを披露(≧▽≦)  この人が凄いのは信じられないような超絶プレイを実に楽しそうに、しかも楽々とやってのけてしまうところで、ギターを弾くだけでなく擦ったり叩いたりしてメロディー、コード、リズムを同時に鳴らしながらギター1本で演奏しているとは思えないような厚みのあるサウンドを生み出しているのだから観ている方はもう開いた口が塞がらない(゜o゜)
 ライヴ・パフォーマーとしてもピカイチで、その溢れんばかりの歌心と圧倒的な超絶技巧に熱狂するオーディエンスに触発されて更に凄いプレイを繰り出していくという好循環スパイラル。上の動画でも笑顔を絶やすことなくギターをまるで身体の一部であるかのように自在に操りながらほとんど手元も見ずにスーパープレイを連発、「デイ・トリッパー」のリードとベースの同時弾きなんて一体どーなってるねん???とツッコミを入れたくなるような神業だし、7分40秒あたりからギアを上げて一気呵成にたたみ掛けるところなんかもう言葉を失う凄まじさだ。1分08秒あたりでポン!とカポを外すしぐさもめちゃくちゃカッコ良くて、まさに生粋のエンターテイナーなんである。
 動画を見てこの人のアルバムを聴いてみたくなり早速ディスコグラフィーをチェックしたところ何と30枚近くの作品をリリースしていたのだが、CDのトラックリストを見てもほとんど知らない曲ばかり。この人の真骨頂はライヴにありそうなので、とりあえずこの「ビートルズ・メドレー」が入ったライヴ盤に絞って検索してみると「ライヴ・ワン」「センター・ステージ」「ライヴ・アット・ザ・ライマン」の3作品がヒット。ネットで「ビートルズ・メドレー」を比較試聴した結果、「センター・ステージ」のDVDを買うことにした。これは2007年10月にカリフォルニアのシエラ・ネバダ・ブルワリーで行われたライヴを収録したもので、上記2013年ライヴのメドレーに入っていた「シーズ・ア・ウーマン」と「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」が未収録なのがちょっと残念だが、3枚の中では「ヒア・カムズ・ザ・サン」で始まるメドレー・アレンジが一番気に入ったのでコレにした。
Tommy Emmanuel Beatles Medley @ UltraSharpAction com YouTube


 冒頭の“Put on your kneepads, put on your helmet, this is acoustic music in your face...”(ニーパッドとヘルメットのご準備を。それでは攻撃的なアコースティック・ミュージックをどーぞ!) というMCがすべてを物語るように、フィンガーピッキング・スタイルで音色の変化や緩急を自在につけながらアコギをバリバリ弾きまくるトミエマに圧倒される。特にアッパーな疾走系チューンで聴かせるドライヴ感はまさに “神ってる” と言っていいと思う。もちろん超速弾きだけでなくスローな曲も取り上げており、「上を向いて歩こう」や「朝日の当たる家」での魂のこもったプレイには涙ちょちょぎれるモンがある。優れた演奏家は “楽器を通して歌をうたう” とよく言われるが、とにかくギター1本でこれだけの音世界を表現できるのか...と驚倒させられた DVDだ。
TOMMY EMMANUEL : SUKIYAKI


 “ジプシー・ジャズでビートルズ” という思いつき(笑)とYouTubeという動画サイトがなければ多分その存在すら知ることはなかったであろうトミー・エマニュエル... 音楽を聴く醍醐味の一つは今回のようにお気に入りのアーティストを偶然見つける喜びにあるのだなぁとつくづく感じた。

【おまけ】オーストラリア出身だけあって何とあのAC/DCまでアコギで(←後半部はエレキだが...)カヴァーしてしまうトミエマ師匠! 兄のフィルとの共演だが、問答無用の超速弾きであのバリバリのハードロック「リフ・ラフ」を弾き切るトミエマ恐るべし!
Tommy & Phil Emmanuel - ACDC Medley Riff raff Let there be rock

ジプシー・ジャズで聴くビートルズ特集

2017-08-06 | Beatles Tribute
 この1年ほどビートルズの各国盤蒐集で忙しくて他ジャンルの音楽はあまり聴いていなかったが、最近になってそちらの方も一段落したので、この前の休みの日に “オール・マヌーシュ” と題して久しぶりに朝から晩までローゼンバーグ・トリオやビレリ・ラグレーンといったジプシー・ジャズ三昧をやってみた。う~ん... 久々に聴くあのザクザク刻むリズム・ギターの音はめっちゃ気持ちエエなぁ... (≧▽≦)  私が好んで聴くジャズは50年代のものがほとんどで最近の新譜には全く食指が動かないが、ジャンゴ・ラインハルト以来の古き良き伝統を頑なに守り続けるジプシー・ジャズに限っては新譜や新人をこれからもどんどん聴いていきたいと思っている。
 そんな “オール・マヌーシュ” をやった翌日のこと、リズム・ギターのザクザク音が脳内リフレイン状態の私はふと、“ビートルズをジプシー・ジャズ・スタイルでカヴァー、って今まで聴いたことがないけど、やっぱり無いんやろか?” と考えた。そこで仕事が超ヒマなのをこれ幸いと YouTubeで検索してみるといくつかヒットしたのだ。もちろん “何じゃいコレは???” というトホホなカヴァーもあったが、逆に“おぉコレは中々エエやん(^o^)丿” と快哉を叫びたくなるような秀逸カヴァーにもいくつか巡り逢えたのだ。そういうワケで、今回は “ジプシー・ジャズで聴くビートルズ” の特集だ。

①Honey Pie(その1) 
 まず驚かされたのがフレッド・アステアへのオマージュ的なポールの作品「ハニー・パイ」の異常なまでの人気ぶりである。選曲がもっと色んな曲にバラけるのかと思っていたら猫も杓子も「ハニー・パイ」なのだ。私のようなド素人には知る由もないが、この曲の中に潜む何かがマヌーシュ達を惹きつけるのかもしれない。
 そんな“マヌーシュ版”「ハニー・パイ」の中で気に入ったのがスウィング・ドゥ・ジタンというイスラエルのジプシー・ジャズ・トリオによるカヴァーだ。ギリギリと軋むような音を立てるアコベとザッザッと正確にリズムを刻むギターの絶妙な絡みぐあいが私の嗜好のスイートスポットを直撃。最後までこのまま行くのかなぁと思わせておいて2分48秒あたりでテンポを上げるアレンジもマヌーシュならではだ。この曲が入ったCD「Muza」をeBayで$9で見つけた時は嬉しかった。
Honey Pie


②Honey Pie(その2)
 上記のスウィング・ドゥ・ジタンと甲乙付け難い名演がエイドリアン・ホロヴァティの「ハニー・パイ」だ。ジプシー・ジャズが盛んな街、シカゴでブイブイいわしているアメリカン・マヌーシュ・シーン(?)の重鎮ギタリストだけあって、まさに王道を行くマヌーシュ・アレンジでポールの名曲を料理している。凄いのは独り二重奏でこれだけの作品に仕上げていることで、ノリ良し、センス良し、テクニック良しと、三拍子揃った名演になっている。
"Honey Pie" Beatles gypsy jazz guitar


③Girl
 ジプシー・ジャズの魅力の一つに曲の途中で一気にギアを上げるチェンジ・オブ・ペースの妙があるが、まるで絵に描いたようにそれを具現化した演奏がこの「ガール」だ。0分42秒からまるで鎖を解き放たれた犬のように猛然とスイングを開始、2分台に入って更なる緩急をつけ、トドメは2分38秒からの歌心溢れるギター・ソロ... 何の違和感も感じさせずに中期ビートルズ屈指の名曲をマヌーシュ化しているところが凄い。ジプシー・ジャズでは珍しいコーラスワークのアレンジも秀逸だ。
The Beatles - Girl (gypsy jazz version)


④Lady Madonna
 ブラディ・ウインテルステインがビレリ・ラグレーンの右腕として活躍している叔父のホノと組んだクインテットによるビートルズ・カヴァー。名手ホノのリズム・ギターに乗って気持ちよさそうにスイングするブラディの歌心溢れるソロが素晴らしい。マヌーシュ・バンドならではのヴァイオリンをも含めた、色んな楽器の音が混然一体となって大きなグルーヴを生み出しているところがめっちゃエエ感じ。アットホームな雰囲気の中ででワイワイやりながら音楽を楽しんでいる、といった按配の寛ぎに溢れた演奏だ。
Brady & Hono Winterstein Quintet - Lady Madonna (Gypsy Jazz)

Pure McCartney / Tim Christensen

2013-07-25 | Beatles Tribute
 4月にアマゾンで「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」や「ロック・ショウ」をチェックしていた時に、例の “この商品を買った人はこんな商品も買っています” 欄に今まで見たことのない、しかし明らかに「ラム」のデザインをパロッたような色使いのジャケットを見つけた。タイトルは「ピュア・マッカートニー」。早速チェックしてみると、ティム・クリステンセンというミュージシャンが我が最愛の「ラム」をライヴで完全再現したものだという。ティム・クリステンセン? 聞いたことのない名前だ。ル・マンで何度も優勝したレーシング・ドライバーのトム・クリステンセンなら知っているが...(>_<)  YouTube でDVD Official Trailer を試聴(?)してみるとかなり良い雰囲気のライヴだ。コレを見て面白そうだなぁ...と思わなければポール・ファンではない。
Pure McCartney - Official DVD-trailer


 「ラム」の完全再現というアイデアは何もこの「ピュア・マッカートニ―」が初めてというワケではなく、2年前にマイナー・レーベルからリリースされたデイヴ・デッパーの「ラム・プロジェクト」が最初だったと思うが、アレは多重録音を駆使してほとんど一人で作り上げたスタジオ録音盤で、その秀逸な発想には “ホンマによぉやるなぁ...” と感心はしたものの、音そのものはスカスカだったしアルバムとしてはイマイチ吸引力に欠けていたことも事実。カヴァー作品が “コレを聴くなら本物聴くわ” と言われないためには聴き手を魅きつけるサムシング・エルスが必要なのだ。
 このアルバムは元々ティム・クリステンセンが去年の6月18日に彼の地元コペンハーゲンでポールの70歳の誕生日を祝おうと企画したもので、友人のマイク・ヴァイオラやトレイシー・ボーナムといった “ポール大好き” ミュージシャン達の協力を得てオリジナル・アルバムの曲順通りに「ラム」を忠実にステージで再現、演っている本人たちが心底楽しんでいる様子がダイレクトに伝わってくるライヴになっていて、同じポール・ファンとして聴いてて実に幸せな気持ちになれるところが◎。どこを切ってもポールへの、そして「ラム」への並々ならぬ愛情が感じられるのが嬉しい。ポール御大は「ラム」の曲をライヴで取り上げることがほとんどないので、そういう意味でも “ライヴで全曲演奏” したこのアルバムは非常に貴重だと思う。
 まずは①「トゥー・メニー・ピープル」、ピッタリと息の合ったティムとマイクのヴォーカルも、リンダと化して絶妙のタイミングでバック・コーラスを付けるトレイシーも、ギターのオブリガートもドラムスの入り方も、そのすべてがオリジナルの雰囲気を見事に再現しているのにビックリ(゜o゜)  私の予想を遥かに超えた完成度の高い演奏だ。②「3 レッグズ」では例の変声パートを拡声器を使って再現するなど、色々と工夫しているところがめっちゃ楽しい。DVDで見ているとよく分かるが、ステージを含めて会場全体がアットホームな雰囲気に包まれており、まるで “マッカートニー・ファンの集い” 的なノリの、手作り感覚溢れるライヴになっている。③「ラム・オン」のイントロ部分も実にマニアックな再現ぶりで聴き手の頬を緩ませてくれるし、拍子木もジャケット・デザイン風のカラーリングで嬉しくなってしまう。自然発生的に湧き起った手拍子も実に良い雰囲気だ。
Pure McCartney: Too Many People

Pure McCartney: 3 Legs/Ram on


 個人的に前半のハイライトと言えるのが④「ディア・ボーイ」だ。「ユア・マザー・シュッド・ノウ」の流れを汲むこの名曲のヴォーカルを取るマイクはまるでポールが憑依したかのようだ。彼はインタビューでこの曲が一番好きだと答えていたが、歌い終えた後の満足そうな表情がすべてを物語る名演になっている。⑤「アンクル・アルバート~アドミラル・ハルセイ」ではメイン・ヴォーカルのティムに対しマイクが拡声器を駆使して擬音を担当、原曲でポールが声を変えて歌う所はトレイシーが受け持つという見事なチームワークでこの名曲を再現している。それにしてもコレを聴いて改めて本家ポールの変幻自在ヴォーカルの凄さを再認識させられた。オリジナルに忠実に前曲と間を開けずにソリッドなギターのイントロからスタートする⑥「スマイル・アウェイ」ではバンドのギタリストがリード・ヴォーカルを取り、3人はコーラス・ワークに徹しているのだが、コレが又実に素晴らしくてオリジナルが持っていたグルーヴを見事に蘇えらせており、オーディエンスも大喝采だ。ただ、欲を言えば後半盛り上がる所でポールのはっちゃけた雄叫びまで再現してくれたら最高やったのに...
Pure McCartney: Dear Boy

Pure McCartney: Uncle Albert Admiral Halsey

Pure McCartney: Smile Away


 LPならB面1曲目にあたる⑦「ハート・オブ・ザ・カントリー」はポールが高音で歌っていたこともあってトレイシーがリード・ヴォーカルを取っているが、コレがもうピッタリとハマっていて言うことナシ。特にスキャット部分は水を得た魚のように活き活きとした歌声を聴かせてくれる。⑧「モンクベリー・ムーン・デライト」でポールの狂気すら孕んだ超絶ヴォーカルに挑むのはマイク。さすがに高音部は少し苦しそうだが原曲の持つピンと張りつめた様な緊張感をしっかりと再現しており、この人のヴォーカリストとしてのレベルの高さがよく分かるトラックになっている。ノリノリの⑨「イート・アット・ホーム」はティムとステイシーのデュエットで聴かせる。ステイシーの歌が上手すぎてオリジナルで抜群の存在感を誇っていたリンダのヘタウマ感(?)が出せなかったことと、ギター・ソロがオリジナルと違っていて違和感を覚えること以外は文句の付けようがない名演だ。
Pure McCartney: Heart Of The Country

Pure McCartney: Monkberry Moon Delight

Pure McCartney: Eat At Home


 個々の音だけでなく原曲の持つ雄大なグルーヴ感までも見事に再現した⑩「ロング・ヘアード・レディ」も圧倒的に素晴らしい。オーディエンスも手拍子で盛り上がる。自分もこの場に居合わせたかったなぁ... と思わせる雰囲気の良さだ。オリジナルではこのあと短い「ラム・オン」のリプリーズがあるのだが、残念なことにこのライヴではすっ飛ばされている。ここまで完璧に再現してきたのに何で演ってくれないのだろう? あの軽快にして簡潔な「リプリーズ」があってこそ、ラストの⑪「バック・シート・オブ・マイ・カー」が活きるのに... あの鼻歌感覚で歌われる「ビッグ・バーン・ベッド」のフェイド・アウトから一転して力強い⑪のイントロが始まらないと「ラム」は完結しない。画龍点睛を欠くとはこのことだ。
 しかし⑪単体の出来は圧倒的に、芸術的に、超越的に素晴らしい。トレイシーのヴォーカルから入るのには意表を突かれるが、トレイシー→ティム→マイクと3人がそれぞれの持ち味を生かしながらヴォーカルを回していくというアイデアは大正解で、“ポール・マッカートニー・ナイト” 本編(←これ以降の6曲はボートラというか、番外編的位置付けですね...)の最後を飾るに相応しいトラックになっている。特に後半部の “Oh, we believe that we can't be long~♪” の盛り上がりは圧巻だ。第2弾が可能なら是非ともこのメンツで「USAライヴ」の完全再現を!と思わせる素晴らしいパフォーマンスである。
 ポールを、そして「ラム」をこよなく愛するミュージシャンが集まって名作「ラム」を再現したこのアルバム、ライヴ後半で演奏された「ヴィーナス・アンド・マース」や「バンド・オン・ザ・ラン」といった「ラム」以外の名曲の数々も含め、これこそまさにポール・ファンの、ポール・ファンによる、ポール・ファンのための1枚と言えるだろう。買うなら CD と同内容の DVD が付いた初回生産限定盤が超オススメだ。
Pure McCartney: Long Haired Lady

Pure McCartney: The Back Seat Of My Car
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What Is It All About / Bartlebees

2011-02-18 | Beatles Tribute
 つい最近「苦い蜜~消えたレコード~」という DVDをレンタルした。私は音楽と同じく映画も分かりやすいものが大好きで、いつも借りるのはほとんどがヤクザ映画(笑) それ以外は宇宙物かジブリ/ピクサー系と、要するに単純な内容の DVD ばかりなのだが、この「苦い蜜」は何と推理ミステリー物である。普段なら目もくれない難解な分野なのだが、副題の「消えたレコード」にご注目。これは何とビートルズのブッチャー・カヴァー盗難事件を扱った映画なんである。去年の夏頃に 901 さんからこの映画のことを教えていただいて以来ずーっと気になっていたもので、この2月にやっとレンタル解禁となり、私はワクワクしながら借りてきた。
 しかし実際に見てみると単なる窃盗事件の謎解きドラマで、別にビートルズのレコードがどうこうというマニアックな内容ではなかった。最後のオチの付け方もイマイチ納得がいかないし、役者がセリフを言うのにいちいち立ち上がってグルグル歩き回りながら大声を張り上げて話すというまるで舞台芝居みたいな作り方も胡散臭い。まぁブッチャー・カヴァーが話に登場するということで、ビートルズ好きのミステリー・ファンなら楽しめるかもしれない。
 ブッチャー・カヴァーと言えば、以前このブログで取り上げた時に “聴かずに見るだけのレコードがあってもいいではないか” という趣旨のことを書いた。要するにジャケ買い盤である。私が好きなのはセクシーな美女をフィーチャーした、いわゆるひとつの cheesecake cover 盤と、有名なジャケットを面白おかしくパロッたパロジャケ盤で、ジャケット・デザインが気に入れば中身が少々アレでも値段が安ければ買ってしまう。まぁ気に入った絵画を買うのと同じような感覚だ。
 そんな私をますますパロジャケ収集にのめり込ませたのがビートルズのトリビュート盤だった。その筋のアルバムは何かしらビートルズのオリジナルを想起させるジャケット・デザインの物が多く、横断歩道を渡ったり、メンバーを囲むようにしてたくさんの人間を登場させたり、モノクロのハーフ・シャドウでメンバーの顔が写っていたりと、遊び心満載のデザインがビートルマニアの好奇心をビンビン刺激する。そんなある時、私はネットで「レコジャケ・ジャンキー」という本の存在を知り、何となく面白そうだったので試しに買ってみることにした。
 この本はビートルズを中心に、ストーンズ、ピンフロ、ゼッペリン、プレスリーといったロック関係からエヴァンスやロリンズといったジャズ関係まで、様々なパロジャケがドーン!とオール・カラーで紹介されており、私なんかもう見ているだけで楽しくなってしまう。特にビートルズのパロジャケは可能な限り集めるようにしてきたので持っている盤も多かったが、中には初めて見る盤もあり、 “へぇ~こんなんあるんや...(゜o゜)” という感じで興味を引かれた盤をネットで探したりしたものだった。
 そんな中で私が何としても手に入れたかったのが「リヴォルヴァー」をパロッたこのジャケット。 Bartlebees というバンドの「What Is It All About?」というアルバムなのだが、4人の顔の代わりに可愛いクマのイラストというのが面白すぎる(^o^)丿 レーベル名が Little Teddy ということでクマになったらしいが、この手のゆるキャラ(?)が大好きな私はぜひコレを部屋に飾りたいと思い、ネットで捜索を開始した。
 ヤフオクには全然出ておらず、eBay で1件だけヒットしたが、即決$30.00はいくら何でも高すぎる。そこで一計を案じ、google で画像検索してみると九州のレコ屋の通販で900円というのを発見。送料込みでも1,200円なら十分お買い得だ。みずてん買い盤は出来るだけ安く買うに越したことはない。
 実際にLPサイズの現物で見る “リヴォクマー・ジャケット” は本で見るよりも遥かにインパクト大。ポールを始めブライアン・ジョーンズ、ビル・ワイマンといったミュージシャンから、サンダーバードの人形やヴェルヴェット・アンダーグラウンドのバナナに至るまで、摩訶不思議なコラージュも面白い。
 中身の音楽はいわゆるひとつのネオアコ系ギター・ポップなのだが、ヴォーカリストの声質がどうしても好きになれないのでパス(笑) 去勢されたボブ・ゲルドフみたいな声で凡庸な曲をブツブツ歌われても面白くも何ともない。ということで、このレコードは中身を抜いてジャケットだけを部屋に飾っている。それにしてもこのゆる~いクマさんのイラスト、ホンマに気持ちが和むなぁ...(^.^)

※今日は推薦曲はありません...
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1976 ダコタ・ハウスにて・・・

2011-01-05 | Beatles Tribute
 私は暑さ寒さにメチャクチャ弱い。だからこの年末から正月にかけては家に籠って大好きなヤクザ映画からジブリまで(←何ちゅー落差や!) DVD 三昧で過ごしていたのだが、そんな中でダントツに良かったのがこの「1976 ダコタ・ハウスにて・・・」だった。
 コレは VH1 という音楽専門のケーブルテレビ局が制作したTV映画で、ポールがアメリカツアー中にお忍びでジョンに会いに行った1日を克明に描いたドラマなのだが、監督が映画「レット・イット・ビー」のマイケル・リンゼイ・ホッグでしかもストーリーの根幹が実話に基づいているとなれば、ビートルズ・ファンとしては見逃がすワケにはいかない。残念なことに日本盤 DVD は出ておらず、字幕付き VHS はレンタル落ち中古でも 16,000円というプレミア価格なので、仕方なくアメリカ盤の DVD を980円で購入。字幕が無いのはしんどいしリージョン変更するのも面倒くさいが、15,000円の差はあまりにも大きい。
 基本的にはジョンとポールのソックリさんが演じる室内劇的な二人芝居なので映画の出来は役者さんの演技次第という側面があるのだが、ジョン役のジャレッド・ハリスもポール役のエイダン・クインも仕草や喋り方が本物にソックリ!特にポールのリヴァプール訛りなんかめちゃくちゃ似ていて(←モノマネ選手権に出たら優勝できそうなレベル!)、その役作りの巧さに感心してしまった。ビートルズ・ファンならニヤリとさせられるネタが随所に散りばめられているのも嬉しい。
 ストーリーは1976年にウイングスでブイブイいわしてたポールが主夫業に専念していたジョンのアパートを不意に訪れるところからスタート、ヨーコはカリフォルニアまで牛を買いに(!)行って留守ということで部屋には2人きり。最初は微妙な緊張感が漂いお互いぎこちなかった2人が口論しながらも徐々にかつての友情を取り戻していき、マリファナですっかりハイになって変装してセントラルパークを散歩したり、イタリアン・カフェでお茶したり。上機嫌でダコタに戻り屋上へと向かうが、そこでジョンが両親へのトラウマを激白、わだかまりを捨て、分かり合えた2人が部屋へ戻るとTVでビートルズ再結成話をやっている。面白そうだから2人でスタジオに乱入しようぜという流れになったところへヨーコから電話が入り、ポールが空気を読んでその場を立ち去る、というもの。事実は小説より奇なりというが、どこまでが実話でどこからが脚色なのか実に興味深いところだ。
 映画の前半では、再結成を話題を持ち出すポールにジョンが “君がいつまでも「ハード・デイズ・ナイト」を歌っていたいならそうしろよ!” とブチ切れるシーン(19:40)、2人でピアノを弾きながら楽しそうに歌うシーン(30:55~)なんかがグッときたが、中でもビートルズ解散時の確執について2人が口論するシーン(38:40~)は正に迫真の演技で、ビートルズ・ファンの私にとってインパクト特大。 “「ジョンとヨーコ」がすべてで、「ジョン」は捨てたのか!” となじるポールに “君は自分の思い通りにゲームを続けたかっただけじゃないか!” と言い返すジョン。 “僕は必死になって解散を食い止めようとしてたのに、君はヨーコにベッタリだった。僕は親友を失ったような感じだったんだ。” “親友って誰だい?” “君だよ。” “親友なんかじゃなかった...” めっちゃリアルやわ、この辺のやり取り。 “傲慢で嘘つきの愚か者め。僕がどんな気持ちでここへ来たと思ってるんだ!”と涙目で言うポールに対して “もうリヴァプール時代とは違うんだぞ!” と切って捨てるジョン。この後ポールが部屋を飛び出していくところも迫真モンやけど、思い直して戻ってきたらジョンも靴を履いてポールを追いかけようとしてたところにジョンらしさが出ていて何かホロリとさせられた。
 2人が変装してセントラル・パークを散歩するシーンでは、マリファナがバレそうになってイカれたドイツ人のふりをして騎馬警官をやりすごすところが笑えたし、カフェでマッタリお茶するシーンは何だか離婚した夫婦が久しぶりに再会したかのような(?)雰囲気だ。「心のラヴ・ソング」をバカにしていたジョンが、「バンド・オン・ザ・ラン」を “great album だ” と褒めた時のポールの “Excuse me?” にはワロタ。寄ってきたファンをジョンがからかうシーンも可笑しかったし、 “イエスタディを歌って下さいませんか” とジョンに頼みに来た老夫婦に向かって “奥さんのカツラをかぶってひざまずいて俺のナニをくわえたらやってやるよ” と毒ずくところなんかジョンらしさが出ていて面白かった。カフェを出た後の2人、お互いに友情を再確認出来たような感じでめっちゃエエ雰囲気だ。
 ダコタの屋上へ上がるエレベーターの中でジョンがふざけてポールにキスするシーンでポールが言った“Is my name Brian?” には大爆笑。こーゆーウィットに富んだセリフをさりげなく入れるあたり、さすがはリンゼイ・ホッグと唸ってしまう。屋上でジョンがポールに腹の内をさらけ出して泣くシーンはかなりへヴィーだが、人間臭いジョン・レノンを見事に描き切っていると思うし、そんなジョンにかけるポールの言葉の一言一言に溢れる優しさにジーンとさせられる(1:18:00~)。エエなぁ、このシーン...
 部屋に戻り一緒にソファーに寝転がって「サタデー・ナイト・ライヴ」を見ているとキャスターが “ビートルズがスタジオに来て3曲歌ってくれたら$3,000出します” (←安っ!!!)というギャグをかまして観客に大ウケしてるのを見て “今から2人で行って世界中をビックリさせてやろうぜ!” と盛り上がるジョンに “本気かい?” と返すポールのやり取り、見ていて思わず頬が緩んでしまう。ポールが車に置いてあるギターを取りに行ったところへ何とヨーコから電話が...(>_<) もちろんドラマだと分かってはいるが、ヨーコってやることなすことビートルズ・ファンにとっては天敵のような存在だと思わざるを得ない。何も知らないポールが意気揚々と戻ってくるとそこには背中を丸めて電話でヨーコと話すジョンの姿、それを見た時のポールの何ともいえない表情(1:26:05)がめちゃくちゃやるせない。夢のような時間から一瞬にして現実に引き戻されたようなこの感じはとても言葉では言い表せない。邪魔しないように小さな声で “じゃあ帰るわ” と言うポールに対してヨーコと電話しながら軽く手を振るジョン...この別れ方、何かめっちゃ切ない。
 ドラマのエンディングは車の中からリンダに電話するポール。淋しい時って愛する人の声が聞きたくなるんよね。この時のポール気持ち、痛いほど分かるわぁ。 “Linda, I love you.” と言って電話を切った時のポールの表情がたまらない(1:27:45)。ポール役のエイダン、ホンマに名演技やわ(≧▽≦)
 ポールは心底ジョンが好きやったんやなぁ...と実感させてくれるこのドラマ、原題の「Two Of Us」は簡潔にしてこれ以上ないと思える絶妙なタイトルだ。緻密に練り上げられた脚本、きめ細やかな演出、そして何と言っても役者さんの演技が圧倒的に素晴らしいこのドラマ、ビートルズを深く知ってれば知ってるほど楽しめると思うし、自分がこれまで見たビートルズ関係の映画の中では間違いなく最上位に位置する大傑作だ。日本盤 DVD 出してくれへんかな~

Two of Us 5 (2人が口論するシーン)


Two of Us 7 (カフェでマッタリするシーン)


Two of Us 8 (カフェ~屋上のシーン)


Two of Us 9 (屋上~ソファーでリラックスのシーン)


Two of Us 10 (切ないエンディングのシーン)
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ノルウェーの森 / 1966 カルテット

2011-01-03 | Beatles Tribute
 1ヶ月ほど前のこと、私はパソコン好きの友人の付き添いで日本橋まで出かけて行った。パソコンのパーツ専門店というのはマニアにとってはパラダイスらしいが、何の関心もないド素人にとっては退屈極まりない所。友人は怪しげなパーツを手に熟考中だ。私は30分ぐらい我慢していたのだが、手持ち無沙汰で待っているのについに耐えきれなくなり、近くにある CDショップのジョーシン・ディスクピアで待つことにした。このお店は在庫数膨大で売り場面積も広いので時間つぶしには最適なのだ。
 2Fのロック・ポップス売り場は人が多くて鬱陶しいのでパス。客数が少なくていつも閑散としている3Fのジャズ・クラシック売り場へ行く。予想通りガラガラである。嬉しくなった私はジャズの CD を片っ端から見ていくが、どれもこれも過去の名盤のリマスター盤や廉価盤ばかりで何の新鮮味もない。しょーもないなぁ...と思いながら店内をぶらついていると、いきなり目に飛び込んできたのがこのモノクロ・ハーフシャドウのジャケット。言わずと知れた「ウィズ・ザ・ビートルズ」のパロジャケである。そこはジャズではなく私が足を踏み入れたことのないクラシックのコーナーだった。
 興味を引かれた私が CD を手に取ってみると写っていたのはうら若き女性4人。左上にはパーロフォンの代わりに日本コロムビアのデンオン・マーク、右上にはご丁寧に stereo の文字が踊っている。これで面白そうだと思わなければビートルズ・ファンではない。タイトルは「ノルウェーの森 ~ザ・ビートルズ・クラシックス」となっており、1966カルテットという、ヴァイオリン2台にチェロ、ピアノの女性4人組クラシカル・ユニットによる演奏だ。曲目を見ると、いかにもクラシック・ファンが好みそうなバラッドの定番曲に混じって③「抱きしめたい」や⑫「ア・ハード・デイズ・ナイト」、そして④「ラヴ・ミー・ドゥ」~⑤「プリーズ・プリーズ・ミー」~⑥「フロム・ミー・トゥ・ユー」~⑦「シー・ラヴズ・ユー」(←メドレーになってます)といった初期のシングル曲なんかも演っている。
 私は元来この手の “ビートルズをクラシックで” みたいな盤は苦手なのだが、このアルバムはジャケットの拘りようといい(←裏ジャケの4人のシルエットはビートルズというよりラモーンズっぽいけど...笑)、一味も二味も違う選曲といい、 “ちょっと違う感” が濃厚に漂う。 “欲しいなぁ...” と思ったが、いくら何でも CD1枚に3,000円も出す気にはなれない。日本の CD の値段はどう考えても高すぎる。結局、帰ってネットで探して運良く中古盤を発見、11月に出たばかりの新譜で1,800円ならラッキーラララである。
 実際に聴いてみての感想だが、クラシックにありがちな長尺の組曲風ではなくて1曲1曲が3~4分で完結しているのでロック/ポップス・ファンの私でも違和感なく楽しめる。何よりも感心したのは、あくまでもオリジナルに忠実に、それでいてヴァイオリンやチェロ、ピアノといったクラシック楽器の良さを巧く活かしたアレンジがなされているところで、そういった楽器の音色が珠玉のビートルズ・ナンバーの魅力を見事に引き出しているように思う。アレンジャーは加藤真一郎という国際的に活躍している新進気鋭のピアニストの方らしいが、マニアックな視点から言わせてもらえば、ジョージ・マーティン以外の人物がストリングス・アレンジをした「シーズ・リーヴィング・ホーム」を彼がどう料理するか聴いてみたかったところだ。
 とにかくどのトラックもハズレ無しの出来なのだが、特に気に入ってるのは変幻自在な器楽アレンジに耳が吸い付く⑪「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」と⑰「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」。コレをクラシック・ファンだけに独占させておくのは勿体ない。アップテンポでノリの良い演奏が楽しめる③④⑤⑥⑦⑫のような初期ビートルズ・ナンバーのクラシック・ヴァージョンも中々エエ感じだし(←特に⑤「プリーズ・プリーズ・ミー」のチェロがカッコイイ!)、聴く前から音が聞こえてきそうな②「イエスタデイ」や⑯「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、⑲「グッド・ナイト」なんかもオリジナルへのリスペクトと歌心に溢れた演奏で、私のようにクラシックが苦手なビートルズ・ファンでも十分楽しめる内容だ。
 日本におけるビートルズ初代担当ディレクター、高嶋弘之氏がプロデュースしたこのアルバムは、オシャレな喫茶店の BGM なんかに使うとぴったりハマりそうな気もするが、単なる BGM として終わらせるにはもったいないクオリティーの高さを誇っている。やはり高嶋氏を始めとする制作者サイドのビートルズ愛の賜物か、クラシック畑のアーティストが “ちょっとビートルズ演ってみました” というような有象無象の “似非トリビュートもの” とは激しく一線を画す、清々しさ溢れる1枚だ。

ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー


ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス


初期ビートルズ・シングル・メドレー
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琴・ビートルズ

2011-01-01 | Beatles Tribute
 新年あけましておめでとうございます♪ 何やかんやでこのブログも3回目のお正月を迎えることができました。今年もこれまでと同様ノリノリのロックンロール、萌え萌えの女性ヴォーカル、古き良き昭和歌謡、ノスタルジックなスタンダード・ソング中心の、独断に満ちた極私的音楽ブログでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

 私は音楽を聴くのは三度の飯よりも好きだが自分で歌うのは大の苦手なので、この十何年かカラオケに行っていない。たとえ行ったとしても大好きな B'z はキーが高すぎて歌えないし、ワケのわからん J-Pops を延々聞かされて作り笑顔で耐えるのも鬱陶しいだけだからだ。ところが先月、我が朋友のサムから “カレシトカラオケイクンダケド、イッショニイカナイ?” とお誘いを受けた。 “カラオケに行くって... 英語の歌あるんか?” と訊くと “タクサン アリマス。ラモーンズもアルヨ!イコウヨ!” と言われ、話のネタに面白そうなので行ってみることにした。
 当日は土曜の夕方ということもあって大渋滞を避けるためにバスと電車で行こうとしたのだが、待てど暮らせど肝心ののバスが来ず、結局待ち合わせの時間に20分以上遅れるハメに(>_<) 心優しい二人は笑顔で迎えてくれたのだが、奈良交通への怒りで頭が一杯で “ジョー・ペシ憑依状態” だった私は思わず “So sorry to have kept you waitin'. The fuckin' bus came 20 minutes late!” と口走ってしまったのだ。後でサムから聞いた話だと、彼氏のデイヴィッド(←偶然やけどこのカップル、“サム&デイヴ” なんよね...)はめっちゃシャイな性格で私と会うのにかなり緊張していたらしいが、初対面の日本人がいきなり fuckin' を連発するのを聞いて一気に緊張感が吹き飛んだらしい。おかげですっかりリラックスして音楽の話で盛り上がったのだが、聞くところによると彼は今、琴を猛練習中だという。彼の人柄が気に入った私は、自分のコレクション中唯一の琴CDを焼いて彼に進呈することにした。それがこの「琴・ビートルズ」である。
 この盤を買ったのはCD1枚がまだ3,500円もしていた1984年頃だったと思うが、当時からビートルズと名の付く盤には何でもかんでも見境なく手を出していたようだ(笑) 内容は読んで字の如く、ビートルズの名曲の数々を琴で演奏したもので、いかにもユピテル・レコードらしい企画である。当時は興味本位で買って聴いていたのだが、すぐに飽きてそれ以来ずっと CD 棚の奥深く眠っていたものだ。
 で、今回約25年ぶりに聴いたのだが、今の耳で聴くとコレが結構面白い。演奏はすべて琴4面(4台とは言わないらしい...)で構成された “琴アンサンブル” で、リードギターならぬリード琴(?)は白根きぬ子という人。この名前どっかで聞いたことあるなぁとネットで調べてみたら、何とあの和ジャズ名盤「祭りの幻想」(白木秀雄)のタイトル曲のアタマで琴ソロを弾いていた人ではないか!音楽の世界はジャンルの垣根を越えて意外なところで繋がっているところが面白い。
 アルバムは全16曲収録で、すべてのトラックが3分前後の演奏だ。取り上げられている曲も⑨「イエスタデイ」や⑩「ミッシェル」、⑭「サムシング」といったビートルズ・バラッドの定番から⑤「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」や⑦「ノー・リプライ」、⑪「デイ・トリッパー」のような “一体コレをどーやって琴で演奏するねん!” と言いたくなるような意外なナンバーまで、ヴァラエティーに富んだ選曲になっている。しかもどのトラックもこの手の盤にありがちなやっつけ仕事的な演奏ではなく、曲に合わせて演奏パターンやアレンジに工夫が凝らされており、単なる色物盤として片付けてしまうには惜しい内容だ。
 特に印象に残ったのは①「ヒア・カムズ・ザ・サン」のギター・アルペジオや②「イン・マイ・ライフ」の間奏のバロック風ピアノ、⑧「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のオーケストレーション・パートを見事に琴で表現しているところ。⑯「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」における繊細な琴アレンジも素晴らしい。まぁこの盤は個々の演奏についてどうこう言うよりも、日本の古典楽器である琴独特の音色でビートルズの名曲の旋律を楽しむ、ということで良いのかもしれない。お正月に琴で聴くビートルズっていうのも中々味があってよろしいで(^o^)丿

ヒア・カムズ・ザ・サン


イン・マイ・ライフ


【おまけ】ジョー・ペシをご存じない方はコレ↓をご覧下さい。映画「カジノ」のワンシーンですが、新年早々 fxxk ネタですんません...
Joe Pesci Owns Robert De Niro in Casino 22 Fucks in 2:22
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Empty Garden / Elton John

2010-12-08 | Beatles Tribute
 少し前にネットでマーク・チャップマンの仮釈申請却下のニュースを読んだ。仮釈やと?ナメとんのか!心神喪失だか何だか知らないが、あのクサレ外道がまだ塀の中で、しかも三食付きでのうのうと生きていること自体許し難いのに、仮釈で出して自由にシャバの空気を吸わせるなんて絶対にあってはならない。私的にはゴルゴ13 にでも依頼して即刻射殺してほしいくらいのレベルだ。あの忌まわしい事件から30年経った今でも、12月8日になるとジョンを失った悲しみと共に奴に対する怒りが沸々と込み上げてくるのを抑えられない。怒りなどという言葉では生ぬるいこの気持ちはこの30年間変わっていないのだが、ブログで恨みつらみを延々と並べ立てるワケにもいかないので、今日は彼への追悼ソングの中で最も心に沁みたエルトン・ジョンの「エンプティ・ガーデン」を聴いて心を鎮めることにしよう。
 私が初めてエルトン・ジョンという名前を耳にしたのは洋楽を聴き始めてすぐの頃で、彼のアルバム「キャプテン・ファンタスティック・アンド・ザ・ブラウン・ダート・カウボーイ」が全米アルバムチャートで初登場1位を記録したと音楽誌で大ニュースになっていた。アルバムチャート初登場1位なんて今では珍しくも何ともないが、当時としては前人未到の快挙だったようで、 “そんなに凄いアルバムやったら聴いてみよう” とLPを買ってきて聴いてみたのだが、毒にも薬にもならんような退屈な内容で、私にはどこがエエのかサッパリ分からなかった。その後エルトンの参加で話題になった「心の壁、愛の橋」やMSGでのジョンとの共演ライヴ・シングルも聴いたが、結局エルトン・ジョンの良さは分からずじまいだった。
 そんな私が彼に瞠目したのは1982年、いつものように「ベスト・ヒット・USA」を見ていた時のこと、この「エンプティ・ガーデン」がチャート急上昇曲ということで紹介されたのだ。ビデオ・クリップに付けられた字幕の日本語訳を見ながらエルトンの歌声を聴いていた私は、不覚にも感動で目頭が熱くなってしまった。エルトンと公私共に仲の良かったジョンを “a gardener(庭師)” に例えたバーニー・トーピンの歌詞が圧倒的に、超越的に、芸術的に素晴らしい;

  ここで何が起きたんだろう?
  夕暮れ時のニューヨーク
  僕は何も生えてない庭を見つけた
  ここには誰が住んでたんだろう?
  その人は立派な庭師だったに違いない
  涙を刈り取り、良い作物を育てた
  でも今はそうじゃない
  一匹の虫が庭を食い散らかしてしまったんだ
  
  何のためにあるんだろう?
  赤褐色のドアに面した
  この荒れ果てた小さな庭は
  歩道の割れ目からはもう何も生えてこない
  ここには誰が住んでたんだろう?
  その人は立派な庭師だったに違いない
  涙を刈り取り、良い作物を育てたんだ
  僕らは驚き、愕然とした
  彼の代わりになる人なんて誰もいない
  
  ドアをノックしてるのに 誰も出てくれない
  一日中ずっとドアをノックしてるのに 
  呼び続けてるんだ
  ヘイ、ジョニー 一緒に遊ぼうぜ、ってね
  
  涙にくれながら
  こう言う人々もいる 若い頃の彼は最高の仕事をしたと
  でももし彼がそれを聞いたら
  人は年齢を重ねて成長していくものだと言っただろう
  その人は立派な庭師だったに違いない
  涙を刈り取り、良い作物を育てた
  僕らは今 雨を願う そして雨粒一つ一つの音が
  君の名前に聞こえるんだ
  
  ジョニー もう一緒に遊べないのかい? この空っぽの君の庭で...

特にサビの I’ve been knocking but no one answers... の部分はビートルズ・ファンなら涙なしには聴けないだろう。バーニー・トーピンの天才ここに極まれり、と言いたくなる大傑作だ。
 そしてこのジョンへの哀悼の想いに満ち溢れた歌詞を切々と歌い上げるエルトンのヴォーカルがこれまた素晴らしい。彼のまるで慟哭のように響く歌声が、その歌詞の一言一言が私の心をビンビン震わせるのだ。そこには私を失望させた「キャプテン・ファンタスティック」で聞かれた虚構のかけらもなく、ただただ深いバラッド性があった。私はこの曲を聴いて初めてエルトン・ジョンの良さを理解できた気がした。
 その後の私は初期の大名曲「ユア・ソング」やダイアナ妃に捧げられた「キャンドル・イン・ザ・ウインド」(←元々はマリリン・モンローの事を歌った曲やけど...)を聴くに至って “エルトンの神髄はバラッドにあり” を確信したのだが、そのきっかけとなったのが数あるジョンの追悼曲の中で一番好きなこの「エンプティ・ガーデン」なのだ。

Elton John- Empty Garden (with lyrics and The Beatles pics)
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Punkles For Sale

2010-09-20 | Beatles Tribute
 9月に入って少年ナイフにラモーンズと、このブログもすっかりガレージ・ロック月間と化した感がある。特にこの1週間はラモーンズ三昧で、愛車の中でもガンガン鳴らしながらヘイホー・レッツゴー状態だ。ラモーンズというと十把一からげにして “パンク・ロック” に分類され、もうそれだけでネガティヴ・イメージを持たれて敬遠されてしまうかもしれないが、彼らは逆立てた髪に安全ピンというアホバカ・ファッションで客に唾を吐きかけたりするイメージ先行型の有象無象UKパンク・バンドとは激しく一線を画す正統派のロックンロール・バンドなのだ。確かに彼らのロンドン公演をきっかけにしてUKパンク・ムーヴメントが爆発したのは歴史的事実だが、当のラモーンズはあくまでも純粋に、贅肉を削ぎ落としたシンプルなロックンロールを追及していただけで、「エンド・オブ・ザ・センチュリー」という彼らのドキュメンタリー・フィルムによると、アナーキズムの象徴みたいなUKパンク・バンドと一緒くたにされてかなり迷惑していたらしい。
 彼らの音楽を聴き込めば聴き込むほど、2分前後で完結するその荒々しいロックンロール・サウンドの中に、かつて私を魅了した初期ビートルズと同質のものを感じる。 “N.Y.パンクの旗手” ラモーンズとビートルズって一見何の接点も無さそうだが実は大アリで、そもそもラモーンズというバンド名自体、ポール・マッカートニーがハンブルグ時代に使っていた “ポール・ラモーン” という芸名に因んで全員が“ラモーン”姓を名乗ったことから来ているし、リード・ヴォーカルのジョーイはジョン・レノンから多大な影響を受けたと公言している。お揃いのファッションにマッシュルーム・カットというのも初期ビートルズを意識しているのは一目瞭然だ。
 そんなラモーンズ・スタイルで珠玉のビートルズ・ナンバーを次々と高速化して楽しませてくれるのがドイツの “おバカ” バンド、ご存じパンクルズである。私は彼らの大ファンでこれまでも「パンク!」と「ピストル」という2枚のアルバムを取り上げてきたが、今日は後期のナンバーを中心に選曲された「パンクルズ・フォー・セール」でいってみたい。
 このバンドに関してはアレコレ分析するのではなく、 “ビートルズのあの曲をパンク・スタイルで演奏するとこんな風になるんか... めっちゃオモロイやん(^o^)丿” といった感じで何も考えずにその血湧き肉躍るロックンロールを楽しむというのが正しい聴き方なのだろう。パロディというのは基本的に “笑ってもらってナンボ” の世界なので、そういう意味でもこのアルバムは笑撃の傑作だと思う。
 まず目を引くのが「アビー・ロード」を模したジャケット。メンバーはもちろん、背後には何故か高くそびえるタワーを合成し、ご丁寧にLPの皺やリング・ウェアーまで再現、CDの裏ジャケの上下には何と Garrod & Lofthouse 社製のフリップバック仕様のラインまで印刷するという徹底したマニアックさに脱帽だ。
 このアルバムの一番の目玉は “アビー・ロードB面メドレー” をパンクロック・スタイルで再現した⑫~⑲だろう。コレって常識的には考えられない無謀な発想で、一歩間違うとムチャクチャな演奏になってしまうのがオチだが、いざ聴いてみるとコレが実に見事なパンク・パロディになっている。表面的にはおバカを装っているが、彼らがずば抜けた音楽センスと高度なテクニックを持っている何よりの証だろう。又、コレを聴くと改めてビートルズ・ナンバーの素晴らしさが再認識できるという効用もあるのではないだろうか。 「アビー・ロード」からの選曲では②「カム・トゥゲザー」や③「ヒア・カムズ・ザ・サン」、⑨「オクトパス・ガーデン」もノリノリだ。後期ビートルズのナンバーを初期ビートルズのシンプル&ストレートなロックンロール・スタイルで楽しめるのだからファンとしては堪えられない。
 正調ロックンロールであるオリジナル・ヴァージョンを更に高速回転させた①「バック・イン・ザ・USSR」や⑦「グラス・オニオン」なんか実に痛快だし、⑤「コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロウ・ビル」のドライヴ感溢れる演奏もめっちゃ斬新でカッコ良い。チップマンクスみたいな⑩「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」にはもう笑うしかないし、ゴスペル調の原曲をあろうことかレゲエのリズムを巧く使って換骨堕胎した⑪「レット・イット・ビー」も、心の広いビートルズ・ファンなら(笑)きっと楽しめると思う。やっぱりビートルズはロックンロールと相性抜群だし、何よりも彼らの “ビートルズ楽しいです感” がダイレクトに伝わってくるところが最高だ。
 とまぁこのように私は彼らの大ファンなのだが、2006年にこのアルバムをリリースして以降、彼らの動静が全く伝わってこないのが少々心配だ。まさか「アビー・ロード」をパロッたジャケットで⑲「ジ・エンド」でシメてるのは “これで最後” っていう意味とちゃうやろな(>_<) ビートルズの公式録音曲213にソロ・ワークスも含めれば、まだまだネタはあるだろうから、これからもラモーンズ・スタイルでビートルズの名曲の数々をどんどんパンク化していってほしいものだ。私はそんな彼らのニュー・アルバムを楽しみに待ちたいと思う。

The Punkles "The Punkles For Sale!" - Promo Video 2006


バンガロウ・ビル

Ticket To Ride / The Swingle Singers

2010-06-23 | Beatles Tribute
 私は基本的に疾走系のロックンロールやスインギーなジャズが大好きなので、コーラス・グループも聴くというと意外な顔をされることが多い。しかしアンドリュース・シスターズやクラーク・シスターズ、べヴァリー・シスターズといったいわゆるひとつの “シスターズ系” はもちろんのこと、パイド・パイパーズやハニードリーマーズのような正統派コーラスも聴くし、ジャズ・コーラスの王道を行くマンハッタン・トランスファーは大好きなグループだ。
 スイングル・シンガーズは1963年にパリで結成された混声コーラス・グループで、バッハを始めとするクラシック音楽をダバダバ・スキャットでジャズ・コーラス化したことで知られるが、クラシックを聴かない私には全く縁の無いグループだった。唯一聴いたことがあるのは同じクラシックかぶれの MJQ との共演盤「ヴァンドーム」ぐらいで、ただでさえ眠たい MJQ の音楽に気持ち良いコーラスが加わって昼寝の BGM には最適な音楽に思えたが、身銭を切って買うような盤ではなかった。
 そんな彼らの名前を久々に見つけたのが様々なビートルズ・ナンバーをアマゾンで検索していた時で、早速この「ティケット・トゥ・ライド ~ア・ビートルズ・トリビュート~」を試聴、私の記憶にあるクラシックかぶれのコーラス・グループというイメージとはかけ離れたカッコ良いコーラス・ワークがいっぺんに気に入ってしまい、即オーダーした。後で知ったことだが、中心人物であるウォード・スイングルは70年代にフランス人主体だったグループをイギリス人主体へと再編成し、クラシックだけでなくポップスからクリスマス・ソングまで幅広く取り上げるようになったらしい。
 1999年にレコーディングされたこのアルバムは全16曲入りで、中期以降の楽曲を中心にセレクトされている。ギター・リフを幾重にも絡み合うコーラス・ハーモニーで見事に表現した①「ティケット・トゥ・ライド」や④「デイ・トリッパー」、洗練の極致とでも言うべき②「ペニー・レイン」や⑪「ブラックバード / アイ・ウィル」、アカペラでこの曲をやるという発想自体が凄い③「レヴォリューション」や⑥「バースデー」、変幻自在のコーラス・ワークでヴォーカリーズの面白さを教えてくれる⑨「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」や⑫「ホエン・アイム・64」あたりが私は気に入った。
 ⑧「イエスタデイ」はリード・ヴォーカルは暑苦しくて鬱陶しいが、例の弦楽四重奏をアカペラで再現している所は面白い。⑮「アイ・アム・ザ・ウォルラス」もデリカシーに欠けるリード・ヴォーカには興ざめだが、例のイントロを含むサイケなサウンド・プロダクションを絶妙なコーラス・ワークで表現しているところは聞き物だ。逆に⑤「ノーウェジアン・ウッド」、⑦「レディ・マドンナ」、⑩「ドライヴ・マイ・カー」、⑬「フール・オン・ザ・ヒル」、⑭「オール・マイ・ラヴィング」あたりはアレンジが私的にはイマイチ。まぁコレは好みの問題なので、人それぞれだろう。⑯「グッドナイト」は普通すぎて可もなし不可もなしといったところか。
 ビートルズの名曲をアカペラで、という企画のアルバムとしては他にキングス・シンガーズの「ビートルズ・コレクション」やアカペラ・トリビュート・コンピ「カム・トゥゲザー」などがあるが、そんな中で一番 CD プレイヤーに収まる機会が多いのがこの盤だ。ただし全曲聴くとさすがに胃にもたれるので、その時の気分で2~3曲選んで聴くのが極意だと思う。

ペニーレイン


ホエン・アイム 64


ブラックバード~アイ・ウィル
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ザ・ビートサウンド・クラブ 【青盤】 鉄腕アトム

2010-06-20 | Beatles Tribute
 昨日のタンゴに続くおバカ企画シリーズ第2弾(?)はアニソンとビートルズの融合という、普通ではあり得ない発想から生まれた珍盤「ザ・ビートサウンド・クラブ【青盤】/ 鉄腕アトム」である。これは以前このブログで取り上げた「【赤盤】/ さっちゃん」と対をなす姉妹盤で、要するにビートルズの楽曲に乗せて強引にアニソンを歌ってしまうという、神をも恐れぬ暴挙(笑)に近いアルバムなのだ。
 「【赤盤】/ さっちゃん」の方は童謡編ということでほとんどの曲を知っていたが、アニソンの方は知らない曲も結構多い。⑤「青い空はポケットさ」、⑧「アンパンマンのマーチ」、⑪「ワイワイワールド」、⑫「キャンディ・キャンディ」は恥ずかしながらこのアルバムで初めて聴いた。パロディーというのは元歌を知らないとどこが面白いのかサッパリ分からないもので、この辺に関してはコメントしようがない(>_<) 又、③「おどるポンポコリン」は多分「プリーズ・ミスター・ポストマン」を下敷きにしているのだろうが非常に分かりづらく、全然パロディーになっていない。この③は無い方がよかったな...(>_<)
 アルバム冒頭を飾る①「ゲゲゲの鬼太郎」は「ミッシェル」そのまんまのイントロに続いていきなり「ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲ~♪」ときた時点であまりのアホらしさにイスから転げ落ちる。しかしこの盤のエライ所は子供向けCDであるにも関わらず、細部にまで徹底的にこだわっているところ。バック・コーラスのアレンジはビートルズそのまんまだし、間奏やエンディングの処理も原曲に忠実にしてあって、それがかえってゲゲゲな歌詞とのミスマッチな面白さを際立たせているように思う。
 「ノーウェジアン・ウッド」と見事に融合した②「ひみつのアッコちゃん」も面白い。一体誰があの幻想的なシタールの響きにアニソンをくっつけようなどと考えるだろうか?ご丁寧なことにラバー・ソウルなタンバリンまで登場、この摩訶不思議なビートルズ風アニソンの絶妙なアクセントになっている。プロデューサーやらアレンジャーやら、みんな本気になって遊んどるなぁ...(^.^)
 「涙の乗車券」のギター・リフに乗って歌われる④「ウルトラマンのうた」というのもオツなものだが、個人的にツボに入ったのが⑥「ひょっこりひょうたん島」だ。これが何と「カム・トゥゲザー」とコワイぐらいに一体化していてもう凄いとしか言いようがない。目からウロコとはまさにこのことで、このアルバム中の私的ベスト・トラックだ。
 「レヴォリューション」のイントロだけ取って付けたような⑦「行け行け飛雄馬」や「アイ・フィール・ファイン」なギター・リフだけが空しく響く⑨「魔法使いサリー」は木に竹を接いだような不自然さは否めないし、「バック・イン・ザ・USSR」のジェット音に乗って飛んでくる⑩「鉄腕アトム」も面白いのはジェット機の効果音だけで、例えば “バーキン ユゥエス~♪” の3回転トリプル・アクセルをパロってみるとか、アレンジに何かもう一工夫ほしかったところ。
 しかし「エリナー・リグビー」風の⑬「レッツゴー・ライダーキック」には笑ってしまった。例のストリングスのイントロ(もちろんチープさ全開の打ち込みサウンドだが...)からいきなり “迫る~ショッカー♪” である。それにしても仮面ライダーにあのストリングス・アレンジがこれほどぴったりハマるとは驚きだ。アレンジャーさん、エエ仕事してまんな。ぴったりハマるといえば、⑭「ねぇムーミン」もこれに勝るとも劣らない面白さ。「ラヴ・ミー・ドゥ」のハーモニカのイントロに続いて “ねぇムーミン、こっち向いて~♪” 、コレが意外なほどしっくりくるのだ。この恐ろしいほどの脱力感は一聴の価値アリだと思う。しかしこんな盤ばっかり取り上げとったらホンマにアホになってしまいそうでコワイわ(>_<)

カム・瓢箪島・トゥゲザー
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Tango & Beatles / Tango & Liverpool Project

2010-06-19 | Beatles Tribute
 ビートルズ・カヴァーにはラトルズやユートピアのような正統派(?)が存在する一方で、何やらワケのわからん企画物も多い。私は生来いちびりな性格なので、由緒正しいビートルズ・ファンなら見向きもしないような盤でも面白そうならとりあえず試聴し、1つでも気に入ったトラックが入っていれば買ってしまう。
 この「タンゴ & ビートルズ」を買ったのは3年ほど前のこと、ビートルズ・ナンバーをラモーンズ風にパンク化したパンクルズ、クリスマス・ソングをマージービートでロックさせたビートマス、ロックンロールであろうがバラッドであろうがおかまいなしにビートルズを片っ端からルンバ化するという前代未聞の暴挙(?)に出たロス・ローリンなどのおバカな傑作カヴァー・アルバムに出会ってすっかりその筋系の音楽にハマった私は、面白ビートルズ・トリビュート盤を求めてネット検索に明け暮れていた。そんな中で偶然見つけたのがこのアルバムで、タイトルを見た私は “タンゴとビートルズ” っていくら何でもそれは遊びすぎちゃうの、と思ったものだ。
 そもそも“タンゴ”というジャンル自体、私はほとんど知らない。 “タンゴ” と聞いて頭に浮かぶのは小学生の時にシングル盤を買った「黒猫のタンゴ」くらいだ。そういえばジリオラ・チンクエッティのタンゴ・アルバム「スタセラ・バロ・リスシオ」も持っているが、スタッカートを多用して音をブツ切りにするようなタンゴ独特のサウンドにイマイチ馴染めず、買って一度聴いただけで CD 棚の “多分二度と聞かないかもしれないコーナー” へと直行した。別にタンゴが嫌いというワケじゃないが、ロックやジャズのような “生涯の音楽” としての魅力は感じない。
 そんなタンゴのリズムで、あろうことか珠玉のビートルズ・ナンバーをザックザックと切り刻んでいったのがこのアルバムなんである。私は eBay でアルゼンチンのセラーから$8.50で入手したが、送料込みでも1,000円ちょい... 試聴できるサイトを見つけられなかったのでミズテン買いになってしまうリスクはあるがが、タンゴがハズレでもビートルズなら曲で聴けるだろうという皮算用だった。
 届いたCDを見るとアーティスト名が “タンゴ & リヴァプール・プロジェクト” となっている。いかにもその場でテキトーにデッチ上げたような名前だが、この怪しさがたまらんのよね(^o^)丿 こういう珍盤・奇盤・怪盤の類はハイ・リスク・ハイ・リターンというのがコレクターの基本だが、今回は私的には見事に “当たり” だった。
 リード・ヴォーカルはサワ・コバヤシという日系らしき女性で、微妙に「アビー・ロード」をパロッたジャケット・デザインも担当している。ヴォーカルはこれまで何度も取り上げてきた「ボッサン・○○」シリーズや「ジャズ・アンド・○○'s」シリーズにぴったりハマりそうな “雰囲気一発” タイプ。アルゼンチンはこの手の癒し系ヴォーカルが多いなぁ...(^.^)
 短いつなぎの効果音トラック⑥⑪を除けば全11曲、⑫⑬はそれぞれ④⑨のダンス・リミックス・ヴァージョンになっているので実際には全9曲だ。タンゴのリズムが哀愁舞い散る原曲のメロディーと抜群のマッチングを見せる②「ミッシェル」や③「アンド・アイ・ラヴ・ハー」、疾走感溢れる原曲を換骨堕胎して見事にタンゴ化したセンスに唸らされる⑤「ヘルプ」、絶妙なテンポ設定とアレンジで完全な社交ダンス・ミュージックと化した⑨「ティケット・トゥ・ライド」あたりが特に好きだ。
 頭の固いビートルズ・ファンの中には “ナメとんのか!” と怒り出す人もいるかもしれないが、私は逆にこんなおバカな企画でタンゴ化されても相変わらず輝きを放ち続けるビートルズ・ナンバーの “楽曲としての力強さ” に、グループ解散後40年を過ぎても今なお人々に愛され続ける彼らの凄さの一端を垣間見たような気がした。

ミッシェル


ティケット・トゥ・ライド